読書感想文:「365日 #Tシャツ起業家「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘」秋元 里奈 著
1. きっかけ
「食べチョク」の秋元里奈さんに関しては、Twitterでフォローしている家入一真さんが「食べチョク」に言及しているツイートを見て、気になって「食べチョク」のサイトをのぞいたのがきっかけ。
元々、産地直送みたいなものが好きで、このご時世、こんなことを言ったら問題なのかもしれないが、社長が女性だったこと、そして、その女性を一度何かの映像(ネット?)で見たことがあったことから、Twitterをフォローした。
その「一度見た」映像は、確かホリエモンこと堀江貴文さん等が審査員になって、ビジネス・コンペティション的にビジネスを評価していく番組。その番組内で、「食べチョク」は、かなりホリエモンに酷評されていたような気がする。
その「食べチョク」が家入さんにツイートされていて、「あれ、何か新しいサービスでも始めたのかな?」と思ったのが、正直な感想だった。
その時のぞいたサイトは、野菜等の食材がとても美味しそうに見えたのを覚えている。ただ、サービスそのものは、過去観た番組でプレゼンされていたものとコンセプトに変わりはなく、あまり心が動かなかったのを覚えている。
それが、2020年、新型コロナの影響で人々の行動が制限され、経済活動も縮小、世の中に暗い空気が漂っている中、生産者を必死に応援、そして、事業を拡大していく秋元さんをTwitterを通じてタイムリーに見ることができ、これは何かすごいことをしているな、と思い、「食べチョク」を奥さんに教えた。
本の中でも言及されているが、「食べチョク」のような産地直送ECサービスは、今までも数多くあった。だから、「食べチョク」を紹介した時の奥さんの反応もイマイチ。でも、一所懸命この新型コロナの影響でも生産者を応援、そして、事業を必死に拡大している秋元さんの話をすると、奥さんもやっと興味を持ち始める。
それからというもの、我が家は「食べチョク」のヘビー・ユーザーになった。笑
そんな秋元さんが本を書くというのだから、読むしかない。
そして、読み終わった。
いや、ギリギリだったよね、涙をこぼすのを耐えるの…。
2. 大まかなあらすじ
秋元さんの半生、Q&A、「食べチョク」を利用している生産者さんへのインタビュー、そして、社員さんへのインタビューという構成。
もうちょっとDeNA時代の話のボリュームが多いのかな、と勝手に思っていたが、よくある自伝的なものだけではなく、Q&Aやインタビューを通して、秋元さんの伝えたいこと、やりたいこと、想いが本当に伝わってきた。
3. 感想
既に大好きな「食べチョク」という贔屓目を差し引いても、秋元さんという人の人柄がよく分かるものだった。そして、この本は、この歳になっても「本当に自分は何をやりたいのか?」という問いに対する絶対的な答えを持っていないことを恥ずかしいと思っていた自分にも、本当に救いになったような気がする。
たくさんのパンチ・ライン、そして、ストーリーはあったのだが、やっぱり「努力する人は夢中な人に勝てない」という彼女が体現している言葉が一番だった。
きっかけにも書いたが、たくさんの産地直送ECサービスがある中で、なぜ「食べチョク」が新型コロナ禍の中で伸びたのか?それは、秋元さんの以下のツイートに全て表れていると思う。(このツイートを探すのに1時間かかった…)
このツイートみて、2つのことを知った。
1つは、「顧客」のニーズを捉えることがマーケティングの基本だと思っていたが、秋元さんは「生産者」を中心にしている。そして、その本気度。
全てのサービスはこれに集約されており、その本気度は一体どこからくるのか?その答えは、この本の全体を通して貫かれている「夢中」。
そんな「夢中」について、今「夢中」になるものがない人たちに向けて、秋元さんは本の中で優しく、そして、前向きに言及している。
「今やりたいことがない人は、まずは目の前のことに夢中になってみる、「夢中力」を鍛える訓練してみてください。」
こんなに優しく、でも、前向きな答えはあるのだろうか?そして、この答えに、たくさんの人が救われると思う。自分も含めて…。
そして、そんな秋元さんに対する社員さんへのインタビューにこんなものがあった。
「秋元を見ていると、〜中略〜 きっと、「無理をしないで」と言っても、彼女は無理をするのだとも思います(笑)。だったら、無理をしてもしすぎないくらいに、わたしたち周囲も成長し、サポートしなければいけない。」
こう答えた取締役の山下麻亜子さんの話を読んだ時、本当に涙を流しそうだった。
もちろん、山下さんの秋元さんを思いやる優しさ、そして、覚悟に感動した。
そして、秋元さんの生産者の人々に対する「夢中」が周りの人たちをこうやって動かしていく、秋元さんは本当に一流の経営者・リーダーだと思った。
この本に書かれているのは、まだまだスタート・アップと呼ばれる企業の、でも、絶対に世界を良く変えていく企業のまだ始まったばかりの物語、そして、その物語の主人公の優しさと揺るがない覚悟だった。