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徳川家康からの学び

安部龍太郎の「家康」(幻冬舎文庫)を読みました。スタートは家康19歳からで、小牧長久手の戦いまでが「信長期」6冊。その後「秀吉期」、「天下統一期」と続編が予定されているそうです。まさに大河小説ですね。山岡荘八の名作「徳川家康」は全26巻ですが、こちらはビビッて手を出していません。

家康というと、関ケ原の合戦、大阪の陣あたりが記憶にあると思いますが、大御所として指揮命令しているイメージが強いのではないでしょうか。しかし若いころから描かれたこの本を読むと、前半の命を懸けた波乱万丈の生きざまがよくわかります。「狸おやじ」の印象からは程遠く、弱く、悩み、苦戦苦闘する姿がリアルに描かれている。人間味に溢れた成長譚となっています(2巻まで)。一方で破天荒で天才肌の織田信長が対照的で、家康が「この人にはとてもかなわない」と思う心理がよくわかります。その分家康がさらに身近に感じる。下剋上の戦国時代、自分だったら一体どうするだろうと考えます。裏切り、はかりごとが横行するため、「果たして信用できるのか?」と常に思ってしまう。しかし慎重すぎると優柔不断になり、家臣はついてこない。要所で勝負をかける。いやー、命がいくつあっても足りません。

ここであらためて、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人を比較してみましょう。「鳴かぬなら・・・」で例えられますが、もう少し深めます。家康は、「凡人→使命感→悪戦苦闘→大物→天下の狸おやじ→組織づくり」。秀吉は、「底辺→野心→命がけで勝負→傑物→堕落→豊臣家死守」。こんな感じでしょうか。これに対し、信長は、「俺流→俺流→俺流」。ん? 発展がよくわからないのです。天下布武→さらに世界へ。この大きなビジョンはわかります。しかし個人としての心の発展がよくわかりません。とにかくブレない。でも周りから見るとブレブレ? その判断基準が本人しかわからない。慣例や決まり事などは壊す。気分が変わりやすく、ピリピリ感が半端ない。

現代の世の中では、一つの失策ですぐに命を失うことはまずありません。従って戦国時代のようなギリギリの成長譚というのはないかもしれない。しかし実力主義なのは同じ。むしろ家柄要素がない分明快かもしれません。「えー! あの人がそんなに出世したの?」なんてこと、よくあります。でもそこには、その人なりの価値観や努力が必ずあるんだと思います。3人の中では家康が一番「身近」な気がするな。彼の成長には、信長というカリスマ、頼りになる家臣の三河武士、多くの協力者たち、そして時代の流れが大きく影響しました。でも軸は本人自身の「前向きさ」なんだな、そう強く思います。

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