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日記30

大好きな、タバコが吸える上諏訪の喫茶店へ行って、コーヒーを飲む。ポケットの中のアイコスを確認すると、残数が3本しか無かった。だからこの3本を吸い終わるまで、目一杯楽しもうと思った。

「金は払う、冒険は愉快だ」という本を、前のめりになって読んでいた。この本の帯に「溢れ出す悪態、自分流儀の厳守、ときに逡巡なき暴力、そして猫。こんなクールな『業務日誌』がかつてあっただろうか。books 電線の鳥 原山聡矢さん」とある。実はこの本、帯の著者に直接薦められて買ったものだった。

books 電線の鳥。松本の込み入った小路。その一画に、何の前触れもなく現れる古民家然とした本屋だ。本屋というか、本当に普通の古民家。髭もじゃの店主が居間に案内してくれる。カレーとコーヒーを注文した。優しい味わいのチキンカレーだった。

居間を見渡すと、本棚がいくつか設置されている。決してひしめき合ってはいない。生活をしていればこれくらいの本棚があるよね、という程度の数だ。そこに並べられている本、それらがこの店の商品である。手にとって見ると、それぞれ値段がついている。基本的に古本なので、定価よりは安い。そんな中で、1冊だけ平積みされている本があった。それが件の「金は払う、冒険は愉快だ」だ。手に取っていると、店主が奥から出てきて「実はその本の帯、私が書いているんですよ」と教えてくれた。

おかげさまで、久しぶりに純粋に楽しい読書ができた。長く本を読んでいると…本を読むことの目的、それがこんがらがってくる。高尚(だと言われている)なものを読まなければならない強迫観念であるとか、そういう余計なことにグルグル悩まされた挙句、読書自体から離れてしまう。そんな状態にあった僕は目が覚めた。これでいいんだよ、と思える良書だった。また読みたい。

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