自由律俳句 002
耳のかさぶた無限にできるから剥く
ながらポッドキャストほぼ聴いてない
さきいかを一日ふた袋食べる生活
ペットボトルがかいた汗ていねいに拭く
人混みの中で独りを感じた
思考のばけもの頭の中から体を飲み込む
アイスを取っておくと「いらないのか」の声
冷凍庫開けて降りる冷気が肌を撫でる
万年筆で書いた字インク溜まりが愛おしく
小説の中の小説はだれの作品か
苦し紛れにニヤついた
風呂が空いたと呼ばれない切なさ
色付きのまつ毛こんなにかわいい
早起きしたのに乱れるリズム
空気の湿り気で息ができない
執筆から目を背けごみ拾う
本棚空いたよう見えるのは気のせい
美しい本の表紙触れない見れない
憎しみが指先で流れる液晶
使い始め紙を引っ掻く万年筆
明日があると思って近づく締め切り
心に刃向けるのは自分
欲望のまま惰性で止まらぬ消費
苦しんで苦しんで苦しんで先にある世界
青が見えてもすぐに青と言わないこと
手のひら血が流れる実感などない
走って走って転んだら起きて、震えながら
透き通った緑にも近い青春の幻覚
床に溶けてるわたし地平線を見つめる
換気扇うるさく呼吸する埃っぽい口で
硬い床から跳ね返る鼓動と体温
本が落ちた、鈍い痒みが喉に張り付く
憂う暇有れば言葉を紡ぐのだ
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