タイパもコスパも激悪な「写ルンです」が愛おしすぎた話
「久しぶりに”写ルンです”で写真を撮っちゃおうかな~」。そんなちょっとした思いつきが、想像以上に平安貴族だった記録です。
「写ルンです」とは?
もしかしたら知らない方もいるかもしれないから、最初に「写ルンです」について説明します。「写ルンです」は富士フイルムから発売されている、いわゆる使い捨てカメラ。フイルムにレンズとかフラッシュがついていて、誰でも簡単に写真が撮れます。撮れる枚数は27枚。スマホとデジカメしか知らない世代は、撮る枚数に制限があるなんてビックリでしょ?
ちなみに「写ルンです」の初登場は1986年。おっと、1988年生まれの私のちょっと先輩だぁ!
全部撮ったら「現像(げんぞう)」っていうのに出すんです。現像が何かって、それは説明が面倒だから調べてください。
「写ルンです」撮影までの道のり
仲良しメンバーとの飲み会で、「写ルンです」を使うことに!!
写真撮るのにお金すごいかかるじゃん?
スマホでは、何枚でも写真を撮ったり撮り直したりできますよね。しかし「写ルンです」はぶっつけ本番。しかも27枚しか撮れません。それでいくらだと思う? なんと1個2,000円くらいでした。
2,000円÷27枚=74.07….. 1枚シャッターをきるごとに74円かかるんだ。デジタルに慣れていると不思議な感じ。大事に撮ろう。
全然売ってないじゃん?
そもそも「写ルンです」を売っているお店がない。Amazonで買おうと思ったら、prime会員特典翌日配送に対応しているのは、10個セットとか。そんなにいらない。結局友人に探していただくなどご迷惑をおかけしつつ、新宿のヨドバシカメラで無事ゲット。
探すだけでちょっと疲れた私の脳裏に、AppleのCMっぽいフレーズがよぎった。「いつでもどこでも写真が撮れる、そう、iPhoneならね」。iPhoneってすごい。いや別にiPhoneじゃなくても撮れる。「写ルンです」が、いつでもどこでも手に入らなすぎるだけなんだ!!
20年のブランク、いざ撮影へ!
最後に使い捨てカメラで撮影した記憶は、中学生の時。およそ20年のブランクだ。しかし使い方は体が覚えていた。
曇天なのでフラッシュを焚く
つまみをギリギリとまわす
ファインダーを覗き、シャッターをきる
「ペチッ」とチープなシャッター音が鳴った。記念すべき1枚目はこちら!!
キャー!!! エモい!!! なんかGLAYのCDジャケットの写真みたい!!!
そして本日の飲み会メンバー集合!!
一気に平成にタイムスリップ!!! 平成を生き抜いた我々にしか醸し出せない平成感!! ALTAの一階がオシャレ100円ショップになっていて衝撃だったぞ! ちなみに新宿アルタは、2025年2月28日(金)に閉業します(涙)。
ファインダーを覗く時片目をつぶるんだけど、慣れてない動作すぎて顔が痛かったです。
失敗だって愛おしい
「写ルンです」の罠、それはフラッシュ。スマホやデジカメと違って、明るさ自動調整なんてしてくれない。屋内ではフラッシュを焚き忘れたが最後、74円払って暗闇を映すこととなるのです。
失敗が許されない(と思いこんでいる)現代で「あ、フラッシュ忘れてた~w」って笑えるのが心地よい。人間誰だって忘れたり間違えたりするじゃん。ついでにあれもこれも許してください。
現像がハードモード。失った合計金額は…
まずは現像しにいく
このエモエモな写真を手に入れるために、私は「現像」へ出しに行った。デジタルが当たり前の時代、そもそも現像してくれる店が近くにない。自転車で20分くらいの距離に取扱店があったので、花見がてらママチャリで行くことに。(この時点でタイパは最悪だ!)
お店で「現像&データ&印刷」のセットを注文する。現代は撮った写真をデータ化してくれるから便利だ。昔は何枚も写真がほしければ「焼き増し」をしなければならなかった。ちなみに現像&データ&印刷でかかった費用は、約3,500円。「写ルンです」本体と合わせて5,500円の出費だ。意外とたけぇ~~~。
待つ時間が、いとあはれ
「写ルンです」をお店の方に渡すと、「4時間後に取りにきてください」とのこと。随分かかるように思うけれど、昔に比べると超早い。だんだんタイパという概念がぼやけていく。
「ちゃんと撮れてるかなぁ」「どんな写真撮ったっけなぁ」
なんて思いながら待つ時間が、想像以上に愛おしい。今放送中の大河ドラマ『光る君へ』で、藤原道綱母の「歎きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る」という、夫の来訪を待つ和歌が出てきたことを思い出す。
そうか、待つって、こんなにドキドキすることだったんだ……。いとあはれ……。
【自業自得編】バッグが逝く
20分も自転車こいで疲れた私は、カフェでカフェモカを購入。そして何を思ったか中身が入った状態(紙コップ・蓋ナシ)でバッグに入れ、自転車の前かごへイン!!
帰宅したら、当然中で盛大にこぼれていた。これ、3万円くらいだったかな。ここで被害額3万円を計上。慣れないことして疲れてたんだと思う。
※翌日全身筋肉痛になりました。
お写真、ゲットだぜ!!!
ついに約束の時間を迎える。店頭で写真とネガが入った袋を受け取る。家まで待ちきれなくて、近くのベンチに座って中身を確認!!
あぁ~~~~~~~~!!! この感じ、懐かしい!!!
みんなで歌舞伎町に飲みに行った、楽しい思い出が27枚に。もう全部の写真が愛おしい。この写真を手に入れるまでの苦労や、幼少期の使い捨てカメラの思い出もレイヤーになって、1枚に奥行をもたせている。
写真は和歌や俳句に例えられることもあるけれど、日常のなんでもない風景を切り取ってのこすことって、そんなに簡単なことじゃない。でも意図してのこさないと、私たちはいつか忘れてしまう。
たくさんの思いをひっさげたこの写真は、私が死ぬまでのこるだろう。平安貴族も「あの時のこと、忘れたくない」って気持ちで、日記や和歌をしたためたのかな。それが夫と逢えない苦しみでも、落ちぶれた主人との思い出でも。大好きな平安時代との距離もちょっと近くなった。
かくして「タイパ」「コスパ」という概念は私から消えたのであった。特別な2DAYSをありがとう!
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