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小僧ヶ淵
梼原町のお話
梼原町の四万川には、かつて小僧ヶ淵と呼ばれる昼間行くにも恐ろしい淵があったが、何度かの洪水を経て現在は浅瀬となっている。
ある時、仲の川に住む者がこの淵へと釣りに訪れたが先客が居た。
小僧が一人、岩の上から釣り糸を垂らし、淵を
凝視している。
この小僧に言い知れぬ気味の悪さを感じた釣り人は、
「小僧や」
と声を掛けたが、返事がないし、全くこちらを見向きもしない。
いよいよ怪しんだ釣り人は、さらに強い口調で
「小僧‼︎」
と怒鳴りつけるや否や、小僧はたちまち淵へと身を躍らせ消えていった。
小僧が消えた途端に淵は波が逆巻き、周囲の山々は揺れ動いた。
あまりの恐ろしさに釣り人は一目散に逃げ帰ったが、その日の夜、高い熱が出て死んでしまった。
以来、この地へは誰も近づくものは無くなったという。
これは川の神の祟りだという。
四万川龍王大権現堂