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まぼろしのそば屋のあと片付け

 ゴールデーンウィークが始まった。序盤の週末、4月27日、28日に里山ステーション俵山でそば屋をオープンしたのだが、初日からトラブル。手打ち蕎麦は1分茹で上げて、清流で締めるものなんだけど、その水、井戸の水が土曜の昼頃から止まってしまった。井戸が枯れたわけではなく、給水ポンプの不調なのかどうなのか、とにかく水が止まった。
 
 初日はやむなく12時過ぎに営業終了。わざわざお越しいただいたお客様に大変失礼なことをしてしまった。俵山の水道屋さんは当法人理事の中原電機さん。「エレショップ中原」は水道屋さんでもある。とても忙しい。それはそうだ、地区の住居の電気と水道の守りをしている。これにガスと燃料までやってしまったら、肉体的に取り返しのつかないことになる。

 余談ですけど俵山にガソリンスタンドはない。ないとゆうか、昨年秋に唯一のスタンドが閉鎖したから、山を10キロ降りてガソリンや軽油を注ぎに行く。もうね、田植えが始まるから、農家さんはガソリンや軽油の携行缶を仰山持っている。一番近くのスタンドは夜7時に閉店してしまうので、燃料を切らさないよう周到に準備する。

 その「エレショップ」さんは土曜に出張。帰宅は深夜。日曜のまぼろしのそば屋はどうなるのだ。文字通り「まぼろし」の日曜になるのか。そば屋のお手伝いに来てくれている俵山公民館の関係者が「日曜は公民館の厨房でやってみては」の発案。それもいい考えである。ともかく水が無いとそば屋は出来ない。

 翌朝早く、中原さんが動いていた。井戸のポンプの点検、施設の給水設計図の確認。どこにも問題はなかった。そば屋営業で短時間に大量の水を使う。そのため、古いポンプの給水容量が追い付かないだけだった。どうしてなのだろ。10時の開店にあわせて有難いほど多くの蕎麦好きがいらした為なのだ。ざる蕎麦も温そばもじゃかじゃか水を流して麺を仕上げる。

 日曜の営業2日目、つまり今年のまぼろしそば屋最終日も1回表から、ノーアウトで打者一巡するくらいの攻撃が始まった。守備につく当法人は常にダイヤモンドを埋め尽くすランナーに翻弄される。水道屋さんのアドバイスで洗い物の水は別の井戸から供給。これがはまった。なんとか14時の閉店まで水が止まることはなかった。12時過ぎにお客が玄関ポーチまであふれ、水じゃなくて手打ちそばが追い付かない事態となる。そば師匠でもある電気&水道屋さんと大工さんとがそばを丸めて伸ばして、伸ばして、畳んで切るを繰り返した。この時だけ、ご注文から30分以上お待たせしてしまった。

 午後4時、厨房、ホールの片付けがおわり、調理員がぽつぽつと家路につく。法人の職員だけでは足りず、近隣のお母さん、高校生、中学生、さらに俵山ビレッジの移住者の手も借りた。そば屋としての規模は大きくしていないけど、コロナ明け2年目のGWはコロナの活字が躍らない時代に戻っている。そば師匠は二人とも還暦を超える。もはや10年前の営業スタイルを継続することは難しくなってきたが、5回裏で10点差をつけられても俵山にコールドゲームは無いのである。