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雨が降るから思う事をだらっと書いた

 どしゃ降りの海の日の月曜日。九州、山口県に線状降水帯発生の予報がでておって、JRは山陰線をはじめ県内ほぼすべてで運行が見送られた。夏の高校野球、県予選大会も日曜日から中止。誰もいないスタジアムの屋根を強い雨がたたきつける。野球を見に行ったわけじゃないけど。下関オービジョンスタジアムのしょんぼりした佇まいがキーボードの上に浮かんだ。
 雨は土曜日から降り続いていた。下関の菊川などは酷雨だったがここ長門は警報級の降水量に至ることはなさそうだ。3連休の最終日、7月15日は俵山湯町で複数のイベントが折り重なっていたけど、互いに連携したもんじゃない。そのうちのひとつはスタッフが流行の感染症に罹り中止されたようだ。

 正午を回ってスクールバスの送迎業務が終わるころ、里山ステーションに車が集まり始める。4台、5台、いや、まだ入ってくる。14時から始まる蕎麦打ち体験の前のりstaffだった。インバウンドのモニターツアーの流れらしい。湯町で旅館女将による着付け体験のあとで、3名のビジターが蕎麦を打ちに来る。イギリス、カナダ、もうひとりはどこの出身だったかな(表紙写真は蕎麦打ち体験のワンシーン、麺切り)。
 加えて市の観光政策課やモニターツアーの企画担当、カメラマン、地元テレビ局。取り巻きが多い。随分早い来館者にホールと調理室を占拠されたから、そこにある電子レンジでお昼のチンがお預けとなる。デスクワークをぱしぱしっと片付けて湯町に向かった。加密列さんが月イチのベーカリーを開いている。事前に頼んでおいたものを受け取り、しばし店内で立ちトーク。

喫茶と巡業(仮)-慈- vol.5

 この場所note、うちの媒体紙「ゆうゆう便り」ほか、SNSで加密列さんを紹介する機会がある。美千子さんのほかにもキッチンカーで営業するトミーや南ちゃん、ジビエフードトラックの武内さんを含めて、彼、彼女らを紹介する時、何と呼んだらいいか、表現というかワード選びに困っている。
 例を挙げると、同級生が市内で店を構えて焼き鳥を焼いているんだが、彼女は「焼き鳥屋さん」と呼ぶか、「ちくぜんさん」で事が足りる。ママが友達のさわちゃんだと屋号の「さわやどり。」でだいたい分かってくれる。
 では、加密列さんは「パン屋さん」なのかというと全然違う。長門出身で全国的にも著名な伝説の家政婦タサン志麻さんだと、やはり「家政婦さん」と呼ぶひとはもういない。じゃあ何なのかというと「タサン志麻さん」以外に呼べるものが見当たらん。
 店をもつ人は屋号で通用する。キッチンカーの南ちゃんは「うふふごはん」、武内さんならば「sora」。「うふふ」の南ちゃんはパティシエと紹介することもできる。旦那のトミーは理学療法士なのだが、その風貌からcurryが腑に落ちて作る様から胃袋にすっと流れ込む。武内さんは昔あった漫画の「クッキングパパ」。荒岩さんは博多、武内さんは八王子のサラリーマンだった。30歳を過ぎてから一念発起、料理の修業に励み、いまでは俵山のジビエを愛する多国籍料理人と胸を張って紹介できる。

 だけど個人で活動している美千子さんは「加密列」さんが差し障りのないところなんやけど、何かね、違うのですよ。食だけにとどまらず、それを含めた生き方を緩やかに求めて、それを他人に押し付けるのではなく、それについて来いとえばる女性ではない。スローフード、スローライフを声高に拡散する人でもない。それでいて、彼女の手から産まれる料理を口にしたひとはまた会いに行く。タサン志麻さんのように、そのうち名前が屋号になるんだろうな。

 みんなひっくるめて「料理家」でいいのかな。

 なんか違うんだよね。

 まったく知らない方に紹介する時は「料理家」で良い。つきあいが深くなると、彼と彼女らが料理を作るイメージはその周辺にいるキャラクターに押し込まれて目立たなくなる。だから「料理家」は彼女たちの一部を表現するに過ぎない。

ワード選びに悶絶した海の日の午後がおわる。