見出し画像

未来の話 │ 詩

人のいのちが軽くなって
わたし達は「びょうき」でしぬ、ということがなくなった
昔は、がんとか、のうこうそく、しんきんこうそくとか、そういった「びょうき」で人は死んだらしい
今では、そんな「びょうき」にかかることも
そんな「びょうき」になることもない
せんそう、もなくなった
きが、もなくなった
かぜ、なんてものもかからない
でも、えいえんに生きられるわけじゃない
何かにぜつぼうして、長くいきることに対して、
疲れて、自ら「しぬ」ことを選ぶひとが多くなった
今では、じぶんで「しぬ」ことを選べる、自由に
それは、しんでも、そこにいなくなるだけ、ということがこの世界で立証されたからだった
天国とか、あの世とか、おとぎ話のような、言い伝えが嘘だったと証明されたからだ
結局、そういうのって、ロマンティシズムから生まれた理想っていうのかな?
魂はいつまでも、この世界にある、なんて信じ込んでいた人たちが作った空想論だったのだ
それを悲しむ人も当時は多かったけれど、あっという間に受け入れられた
だって、ぜんぶ人が作り出した空想だったんだもの
科学的じゃないよね、このご時世
わたしは、まだ生きている
「しぬ」こと、が怖いんじゃない
居なくなることが、怖いんじゃない
いつか、きみに変わらぬ愛を伝えるためだけに、生きている
それが何百年、何千年かかるか、分からないけれど、
いつか、出会えたときに、花束を持って、きみを探しにいく
たくさんある惑星のどこにいるのか、分からないけれど、いつか、きっと、まだにんげん、だった頃のこの想いを伝えずには、しねなかった
ただ、それだけ
ただ、それだけのために、わたしは今日も明日も生きている

いいなと思ったら応援しよう!