夢乃うつつ

詩のような散文のようなものをつらつらと書いています。 誰かの心のなかに少しでも何かが残ったらいいなと思います。 よろしくお願いします。

夢乃うつつ

詩のような散文のようなものをつらつらと書いています。 誰かの心のなかに少しでも何かが残ったらいいなと思います。 よろしくお願いします。

最近の記事

死生観について │ エッセイ

9月に祖母が亡くなった。 近親者で誰かが亡くなったのは、小学生の頃の祖父以来だった。 その時は、「死」というものに触れたことがなく、祖父の遺体を見たとき、悲しいという感情より、怖いという感覚の方が強くて、大泣きしたことを覚えている。 祖母が亡くなる前、わたしは入院していた病院へ一度お見舞いに行った。 祖母は呼吸も落ち着いていて、ぐっすり眠っていた。 看護婦さんから、起きていたとしても、目は見えておらず、声掛けをしても返事は帰ってこない、ただ、声は聞こえてはいる、とのことだっ

    • 痛み │ 詩

      ひとりで生きる方法を忘れてしまった いつも隣で笑っていたきみ たまに怒って たまに拗ねて そんなことも愛おしかった日常 長く一緒にいると、変わってしまう感情 それは、どうしようもないのかもしれない 人は所詮、他人で 分かり合えるのは、ごく一部 ずっとなんてないのかもしれない そんな当たり前なことさえ、不条理に思えて わたしは、ひとりで生きる方法を忘れてしまった ひとりで歩む歩き方を忘れてしまった 人の心は思いの外、簡単に変わってしまうもの わたしは、当たり前のことを

      • 唯一の │ 詩

        世界がきっと美しく見えるのは それは、わたしの理想 世界がきっと残酷に見えるのも それも、わたしの希望 緩やかな歪みのなか 曖昧な生に対して わたしはきっと絶望している 救いというものは訪れない わたしには、何もないのだから わたしは、ただ憧れていたんだ 変わらないものが、ただ一つあることを 交わした愛が、変わらないってことを そして、失ったことで、不思議と涙は流れなかった ううん、泣かないと決めていたのかもしれない 精一杯、我慢しているのかもしれない それが、わ

        • 孤独を愛すること │ 詩

          世界の平和とか 永久の愛とか 命の尊さとか それらは何処かわたしには他人事で 結局、愛せたのは孤独だった 人の気持ちも曖昧で 世界とわたしの距離も曖昧で わたしと生命の境界も曖昧で そこには何ひとつ確信がないものばかり 死後の世界なんて信じられない 死んでしまったら、無になる 宇宙の暗やみのように 空気のように わたしは、きっと確信が欲しかった 誰かといると傷つけて悲しませてしまうこと 誰かといると傷ついて悲しくなること 他者と繋がることで受けられる幸福と 他者と

          希望 │ 詩

          空が晴れますように 明日が訪れますように きみが笑っていますように わたしは祈る 雨が降りますように 今日を過ごせますように きみが生きていますように わたしは祈る 雨が止みますように 昨日が大切なものになりますように きみがわたしを忘れてくれますように わたしは祈る ただ、祈るばかり 泣いても叶わない祈りばかり 遠い知らない誰かに 嘘でもいいから この祈りを捧げる夜明け前 わたしの、罪と嘘を正してくれる 見知らぬあなたへ託して 今日も 明日も 祈り続ける ただ、希

          希望 │ 詩

          今際の夜に │ 詩

          泣きたい夜に限って泣けない 泣ける映画なんか観たくなくて 明日のこともどうでもよくて ただ、この夜のためだけに 深く深く、夜に沈んでいく 加速して、悲しみが広がって 血は赤いのに、涙は透明で 流れていくものに変わりはないのに 痛みと悲しみの違いも分からないから 好きと嫌いも分からなかったんだ 泣きたい夜に限って泣けなくて ただ、今夜のためだけに 涙が落ちる前に 透明なまま 赤に染まる前に 純粋なまま 綺麗な朝を迎えられるように 溢れる悲しみは夜にそっと置いてい

          今際の夜に │ 詩

          いつか │ 詩

          いつか人は死んでしまうんだってこと この世界から居なくなってしまうということ それは平等にあるもので 死があるから生命が尊いと思うのだと分かっていても、繰り返される死に慣れることはなくて 慣れることも怖くて 死は毎日、必ず何処かで振りかざされているのにも関わらず、わたしたちのすぐ傍に在るのにも関わらず 愛とかと同等に在るはずなのに わたしたちは、いつも見失ってしまうね そんなことを忘れてしまう 大切なことを忘れてしまう 大事なものほど見失ってしまう 最期に残

          いつか │ 詩

          なんてね。 │ 詩

          このままがずっと続けばいいな、なんて あの時は本当に思っていたんだよ、なんて あのままがずっと続けばいいな、なんて この夜に本当に思っているんだよ、なんて 全部、全部、今さらなんだけど この夜がずっと続けばいいな、なんて あの日、本当に思っていたんだよ、なんて あの夜がずっと続けばいいな、なんて 眠れない日は本当に思っていたんだよ、なんて 全部、全部、今さらなんだけど 本当、全部、今さらなんだけど やっぱりきみが好きだった、なんて やっぱりきみじゃなきゃ、なんて 本当、全

          なんてね。 │ 詩

          造花 │ 詩

          ゆっくり手から離れていく 愛した日々 残り香だけを遺して 透過する、きみの形 きみの中の傷が乱反射する光に 眩暈がした 造花のような愛が美しいと思ったの 溢れていく、言葉たち いつも届かなくて、流されていく 何かが足りない、わたしたち 欠けたものは、きっと似ていたね 錯覚していたのかも するりと手から落ちていく 愛おしい日々 余韻だけを遺して 遮断する、正しさ きみの中の傷に反射する痛みが 苦しかった、悲しかった 埋没するほど愛した日々 造花のような愛が美しいと思って

          造花 │ 詩

          朝がくる前に │ 詩

          きみを救いだすから、あの夜から だから手を伸ばしてよ 不器用に指を絡めてよ 行き着くところは、どんな場所でも大丈夫さ 光は届くよ 声が届くよ 言いかけた言葉が聞こえた 前髪に隠れてた目が見えた あの日の夜が映ってた 潤んだ目が水槽みたいだった 朝がくる前にきみを連れだすから 何処までも 朝がくる前に 消えてしまう前に 逃げ切って あと一歩、あと一言 千切れてしまいそうな日々 空が高くて薄れていって沈む ねえ、神様 きみを連れだすから、あの街から だから手を差し出してよ

          朝がくる前に │ 詩

          明けていく、日々のこと │ 詩

          終わりない日々 折り合いのつかない日々 曖昧な日々 薄れていく、きみのこと 過ぎていく日々 透き通っていく日々 散漫な日々 忘れていく、きみのこと 眠るたびに、忘れてしまいそうだから寝不足で、言葉にしないと、消えてしまいそうだから独り言が増えて、空を見ていないと、涙が溢れてしまいそうだから何かに躓いて そんな風に生きてる、わたしをきみは笑うかな 不器用なわたしは、こんな風にしか生きられないよ 分かり合えない日々 割に合わない日々 日々の罅 消えていく、きみのこと 生

          明けていく、日々のこと │ 詩

          航海 │ 詩

          この海の果てには何があるんだろうね そう呟いた、今年の夏の或る日 わたしたちには分からないことばかり 明日のことも、来年のことも 当たり前なんてないんだなって それは絶対がないってこと なんだか悲しいな、でも、それは当たり前で 矛盾ばかりだな、でも、それも当たり前で あの海の底には何があったんだろうね そう、頷いた、今年の夏の在った日々 わたしたちの知らないことばかり あなたのことも、わたしのことも 分かり合えるなんてないんだなって それは完璧がないってこと なんだか寂しい

          航海 │ 詩

          おわりの。 │ 詩

          季節のおわり、生命のおわり 温度が冷めていくね 記憶が薄れていくよ 何処へも行かないでと願ってたんだ でも、きみは遠くへ行ってしまった あの夏の入道雲がきみへの墓標 あの海の白波がきみへの道標 孤独を愛するなんて到底無理だったよ きみがこの世界にいたから きみの孤独を知った日から きみとのおわり、愛のおわり 言葉が覚めていくね 追憶に埋もれていくよ 何処にも行かないと誓っていたんだ でも、きみを突き放してしまった もう、さよならなんだ もう、さよならなんだ きみを嫌いになる

          おわりの。 │ 詩

          残雨 │ 詩

          静かに、静かに、落ちていく 雨の線 空を反射、きらきらと ゆっくり、ゆっくり、落ちていく 光の円 空を反射、ゆらゆらと 確かに、僅かに、落ちていく 音の淵 空の反響、くらくらと わたしたちは、いつも何かを欲して、何かを埋めたくて、何かを探して、諦めないのは、残雨がもたらしてくれるから そして、世界は満ちていく

          呼吸 │ 詩

          息を吸って、吐いて 呼吸をすること 吸い込んだ、夜の深い紺碧 吐き出した、届かない言葉 散乱する感情の収束点 撹乱する意識の着地点 脈動する感覚の点と点 息を深く吸って、深く吐いて 呼吸をすること 舞い落ちる乱雑な言葉の中に ただひとつ求めているものを探して 鼓動を静めて 確かなるものを求めて 静かなるものを願って 星の瞬きに 清らかな月明かりに ゆっくり呼吸をして 囁やかな祈りを 夜が明ける前に

          わたしたちは、さよならを言うために生きている │ 詩

          わたしたちは、さよならを言うために生きている ちゃんと笑って ちゃんと泣いて さよならを言えるように きっと、大切なときに、ちゃんと言えるように、わたしたちは毎日、小さな、さよならを言葉にしている ちゃんと笑って ちゃんと泣いて しっかりと言えるように いつか、さよならと、送り出した言葉と、人、ものたちが、どうか笑えるように、どうか、進めますように さよなら

          わたしたちは、さよならを言うために生きている │ 詩