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nanaman
54字の物語(7)『本心』(ショートストーリー付き)
☆『本心』/Roco☆
「ご自愛下さい。」と遠回りの言葉。
こんな季節の便りなど何の意味も無い。
本心は「君に会いたい。」ただそれだけ。
季節の挨拶は、毎年、決まった数人に送るようにしていた。定型文に近況を書き添える、よくある文章。そして最後は、「ご自愛ください。」と締めくくる。そんなやり取りを、数人と交わして何年になるだろうか?お互い、相変わらずな様子がわかるものばかりだ。だが、その中で嘘を書いているものが1通だけあった。遠回りの言葉が、もどかしかった。僕にとって、季節の便りなどは何の意味も無かった。つまり、言いたいことは、ただ1つ。本心は、「君に会いたい。」ただそれだけだった。