地場伝統産業の灯火をつぐこと
最近、地元のある伝統産業を引き継がれるお家から、経営に関するご相談をうけました。
小さな灯火として残っている、地場技術を基礎にした染産業。その伝統と技術を信じ、守っておられるのですが、どうも営業や企画がうまくいかない、と。
昨今いろんな地域で、伝統産業の価値が見直されているように感じていたのですが、まだまだローカルな技術や伝統は風前の灯火であることを知らしめられました。
技術へのこだわりがあり
営業できない焦りがつのり
後継者の不在にないておられる
事業としても産業としても、競争の激化と存続の危機。
この製品市場もご多分にもれず、安価な海外製品が世に出回っています。
どんなに魅力的な技術や商品でも、効率と価格第一で真っ向勝負すれば、そりゃにたような商品はこの世に存在しちゃってます。きっと多くの消費者さんは、なぜこの伝統産業から商品を買わなきゃならないのか、という理由がどうしても不足しちゃってるのでしょうね。そもそも、この伝統産業が存在することすら知らない人も多いんじゃないかな。
じゃぁどうやって生き残るのか。
そんなことを考えていた先日、偶然というか必然というか、こういうタイミングで神戸の真珠産業をぐぐっと成長させられた内海さんのお話を伺う機会がありました。
効率じゃない、価格だけではみえない魅力。使い手買い手の気持ちを理解したメッセージ。ルーツや歴史をたぐった、人の心にのこる物語をイメージづけるブランディングが大切なんだ、ってことを深く感じさせられました。
ところで最近の私、お香にはまっております。
京都で買ったそのお香は、伝統と歴史の薫りが詰まっており、たとえ鼻が詰まっててもそんじょそこらのお線香とはわけが違う、って感じちゃいます。
実際の薫りが素晴らしかったりするのはもちろんなのですが、そのイメージはまずブランディングによってつたえられた側面が大きいはず。
丁寧な手仕事の多くは、できあがる製品にみえるほのかな違いに、味わいと受け手の感触を変えてくれますから、ちゃんと価値や魅力が伝われば高価でも買ってくれる方々はきっといるはず。私にとってのお香のように、「高いけど買ってくれる」ためにはイメージングが大切なんだぁ。
そんなことを内海さんが関わられた事例からも実感もって感じさせられました。
今回ご相談いただいた職人さんはもう御年70が近いそう。ここまで大切にされたコトの中に、本当に継ぐべき魂が何なのかを見いだしていくお手伝いができればうれしい限りです。
とはいえ熟練の大職人さんが、私のような若造にどの程度の気合いで向き合ってくれるのか。尊敬するビジネスの先輩からは、一度ぶつかってけんかする激論かわすぐらいの覚悟がないと、本気になれるかどうかの判断はできないよ、ともアドバイスを頂いた。
そうなのだ。否定される可能性と受け止める覚悟を持てるかどうか。もちろんそこは私自身の覚悟も問われます。
そして本当に大切な魂とでもいうべきものがはっきりされたなら、製品が目に見えて変化することも多いにありえます。例えば姫路でかたちを変えながら生き残ってこられた伝統産業のお手本として、明珍火箸があられます。
戦国の時代に武具甲冑の技師として名をはせるも、武具が不要になり、火箸へ。さらに戦中までは当然のようにあった火鉢が家から消えると共に火箸を風鈴に変え、今は音を追求した風鈴づくりを究めておられます。変えてはならぬものを守り、変えるべきは変える。そうすることによってしか灯火は保てないように感じます。
本当に消したくない灯火は何か。
これって、伝統や歴史と向き合うとき、必ず出てくる問い。
そこにみえるコトこそが「継承」の本質かもしれません。