エレーヌ・グリモーのブラームスの録音を聴いて(4月の日記より)
ブラームス:後期ピアノ小品集 (1995)
1995年録音、おそらく7thアルバム。discogsを見ると、キャリアの初期におけるDENONレーベルにおいても、ラフマニノフやシューマンといった人気のレパートリーに加えて、ブラームスを多く取り上げていることがわかる。
この作品はERATOにおける二作目。その明晰なタッチと自然なアゴーギクからは、曲に対する心からの共感が伝わってくる。
中でもOp.116/7やOp.118/3といった躍動的な曲に心惹かれた。可愛らしい小品や緩やかな曲は、若干マジメ過ぎの感もある、がそれも彼女のブラームスに対する想いあってのことなのだろう。
加えてOp.118/6やOp.119/4(ラプソディー)など、劇的な曲におけるその構成力も素晴らしい。特にラプソディーは私の好きな曲なので、優れた演奏を聴けて嬉しかった。(アファナシエフをずっと聴いてた。)
(2024.4.11)
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 (1997)
1997年ライヴ録音。伴奏を務めるのはクルト・ザンデルリンクの指揮によるシュターツカペレ・ドレスデン(SKD)。同コンビにはブラームスの交響曲全集の優れた録音もある。
技術的/音楽的に非常に難しいこの曲を、グリモーは分厚い和音を適度な重量感と進行感で奏でる。彼女の硬質で誠実な音楽が、ザンデルリンク&SKDの謹厳実直なサウンドと見事に調和している。名演だ。
この曲、私にはまだハッキリと掴みきれてないのだが、第2,3楽章は普通に良い音楽だなと思った。第1楽章を把握するまで付き合ってみたい。
(2024.4.14)
ブラームス:ピアノ協奏曲集
2012年録音。第1番は十五年を経た再録音、そして第2番は初録音。伴奏は第1がバイエルン放送交響楽団、第2がウィーン・フィルで、指揮はどちらもアンドリス・ネルソンス。
第1番はライヴ録音であり、バイエルン放送響の迫力がすごい。グリモーのピアノは1997年よりもタッチに余裕が感じられ、伸びやかで表現の幅が広く、それでいて瑞々しさが増している。
この大陸のような音楽を、彼女が生き生きと、深い呼吸と確固たる考えでもって、オケと一体になりながら進めている様が素晴らしい。
ライブ感を出すためか、ピアニストの息の音まで漏らさず収録しているドイツ・グラモフォンのプロダクションは、若干やり過ぎな気もするが、嫌いではない。旧録音と新録音、それぞれ良さがあるが、どちらかと言われれば、私は新盤の方をとる。
第2番はスタジオ録音。この曲は昔から大好きで、よくバックハウス/ベームの演奏を聴いていた。同演奏の昔を懐かしむような第1楽章に、長く心を惹かれていた。
第1楽章、グリモーの演奏はとてもエネルギッシュかつポジティブであり、同時期に作曲された交響曲第2番を思い起こさせる。
第4楽章も軽やかで若々しい光に満ちているが、目の覚めるような素晴らしさは第1楽章以外では感じられなかった。むしろ、最後に入っている2分足らずのワルツの方に充実を覚えた。また録音してほしいです。
(2024.4.14)
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