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エレーヌ・グリモーのブラームスの録音を聴いて(4月の日記より)

エレーヌ・グリモー(Hélène-Rose-Paule Grimaud)は、フランスのピアニスト。
1969年11月7日、フランス南部のエクサンプロヴァンスにユダヤ系の言語学者の家庭に生まれる。7歳でピアノをはじめ、9歳でエクサンプロヴァンスの音楽院に入学、J・クルティエに師事。その後、マルセイユでピエール・バルビゼに師事。1982年、13歳でパリ国立高等音楽院に入学。ピアノをジャック・ルヴィエ、室内音楽をジェヌヴィエーブ・ジョワに学ぶ。
1984年録音デビュー。1985年ラフマニノフの《ピアノソナタ第2番》の録音により、モントルーのディスク大賞を受賞。同年、パリ音楽院研究科に進みジェルジ・シャーンドル、レオン・フライシャーに学ぶ。1986年エクサン・プロヴァンス音楽祭に出演。1987年よりプロのソリストとしてパリで活動に着手し、ダニエル・バレンボイム指揮のパリ管弦楽団と共演。以後、欧米著名管弦楽団に連続的に客演し世界各国で演奏活動。1990年クリーヴランド管弦楽団の招きで北米デビュー、翌年21歳でアメリカ合衆国に移住。
フランス人であるが、フランス近代音楽にさして興味がないこと(例外的にラヴェルのピアノ協奏曲ト長調は2度の録音がある)、ドイツ・ロマン派音楽にとりわけ魅了されることを明言している。ラフマニノフ以外のレパートリーは、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスのピアノ協奏曲のほか、リヒャルト・シュトラウスの《ブルレスケ》と、ブラームスの後期小品集がある。

Wikipedia「エレーヌ・グリモー」より

ブラームス:後期ピアノ小品集 (1995)

1995年録音、おそらく7thアルバム。discogsを見ると、キャリアの初期におけるDENONレーベルにおいても、ラフマニノフやシューマンといった人気のレパートリーに加えて、ブラームスを多く取り上げていることがわかる。

この作品はERATOにおける二作目。その明晰なタッチと自然なアゴーギクからは、曲に対する心からの共感が伝わってくる。
中でもOp.116/7やOp.118/3といった躍動的な曲に心惹かれた。可愛らしい小品や緩やかな曲は、若干マジメ過ぎの感もある、がそれも彼女のブラームスに対する想いあってのことなのだろう。

加えてOp.118/6やOp.119/4(ラプソディー)など、劇的な曲におけるその構成力も素晴らしい。特にラプソディーは私の好きな曲なので、優れた演奏を聴けて嬉しかった。(アファナシエフをずっと聴いてた。)
(2024.4.11)

オリジナル・ジャケット

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 (1997)

1997年ライヴ録音。伴奏を務めるのはクルト・ザンデルリンクの指揮によるシュターツカペレ・ドレスデン(SKD)。同コンビにはブラームスの交響曲全集の優れた録音もある。

技術的/音楽的に非常に難しいこの曲を、グリモーは分厚い和音を適度な重量感と進行感で奏でる。彼女の硬質で誠実な音楽が、ザンデルリンク&SKDの謹厳実直なサウンドと見事に調和している。名演だ。

この曲、私にはまだハッキリと掴みきれてないのだが、第2,3楽章は普通に良い音楽だなと思った。第1楽章を把握するまで付き合ってみたい。
(2024.4.14)

オリジナル・ジャケット

ブラームス:ピアノ協奏曲集

2012年録音。第1番は十五年を経た再録音、そして第2番は初録音。伴奏は第1がバイエルン放送交響楽団、第2がウィーン・フィルで、指揮はどちらもアンドリス・ネルソンス。

第1番はライヴ録音であり、バイエルン放送響の迫力がすごい。グリモーのピアノは1997年よりもタッチに余裕が感じられ、伸びやかで表現の幅が広く、それでいて瑞々しさが増している。
この大陸のような音楽を、彼女が生き生きと、深い呼吸と確固たる考えでもって、オケと一体になりながら進めている様が素晴らしい。
ライブ感を出すためか、ピアニストの息の音まで漏らさず収録しているドイツ・グラモフォンのプロダクションは、若干やり過ぎな気もするが、嫌いではない。旧録音と新録音、それぞれ良さがあるが、どちらかと言われれば、私は新盤の方をとる。

第2番はスタジオ録音。この曲は昔から大好きで、よくバックハウス/ベームの演奏を聴いていた。同演奏の昔を懐かしむような第1楽章に、長く心を惹かれていた。
第1楽章、グリモーの演奏はとてもエネルギッシュかつポジティブであり、同時期に作曲された交響曲第2番を思い起こさせる。
第4楽章も軽やかで若々しい光に満ちているが、目の覚めるような素晴らしさは第1楽章以外では感じられなかった。むしろ、最後に入っている2分足らずのワルツの方に充実を覚えた。また録音してほしいです。
(2024.4.14)

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