日本の学校をゼロから見直すきっかけにしたい!“みんなで創る学校”に込めた、うつほの杜学園設立への想いとは【うつほのわVol.1:仙石 恭子さん】
みなさん、こんにちは!
うつほの杜学園設立準備会は、2025年4月の開校を目指している、和歌山の世界遺産・熊野古道の自然の中で、教科横断型の探究型教育を軸としながら、バイリンガル 教育に取り組む私立小中一貫校です。
新設校ともあり「どんな学校になるのか?」興味を持っていただいている方へ、魅力を知っていただくために、学校創りに関わっている人のインタビューを公開していきます。
第一回目は、発起人・代表理事の仙石恭子さんにインタビューです。学校作りへの想いや、和歌山の魅力について語ってもらいました。
■「学校を創りたい」と決意した当時と変わったこと、変わらないことはなんですか?
教育に今まで全く関わったことのない私が、突然「学校を創るんだ!」と、降ってきたように目覚め、決意したのが、ちょうどコロナが流行した2020年の夏でした。そこから4年が経ちますが、実は、熱量や大きくイメージしていたことは、ほとんど変わっていないんです。
変わった部分と言いますか、むしろ、ある意味、想像をはるかに超えた方が大きくて...! 当初、一番不安だったのは「どれくらいの人が共感してくれるだろう?」「反対の声も多いかもしれない」ということだったのですが、今は、同じ熱量で「いい学校を和歌山のこの地に創りたい!」と関わってくださる方々がたくさんいて、その規模に驚いています。
寄附金は、クラウドファウンディング含め、4億円近く集まったのですが、そのほとんどが地元の企業の方。東京・大阪などの都市をベースとした企業様からの寄附金のお願いも検討していたのですが、最終的には地元の企業様からの創造以上の応援をいただくことができ、教育への期待を感じています。
■“なぜ和歌山なのか?”の想いを聞かせてください。
ー私自身、和歌山市で育っていて、生まれ育った地だからというのが一番の理由です。でも、それって、めちゃくちゃ大事な理由だと思っています。生まれ育った地域を大事にすると、日本はもっと変わると思うのです。これは、うつほの杜学園の学びにも通じるのですが、社会と繋がっていくためには、まず自己理解や自分の取り巻く環境を大切にすることが、大事な土台だと考えているんです。だからこそ、「自分自身の場所を、自分たちで愛さないと、誰が愛するの?」「自分たちの文化は、自分たちの手で紡いでいきたい。」そういう想いが根底にはありますね。
そして、自分の故郷だからという理由だけでなく、和歌山には、日本の地理的にも、海外から見ても、様々な価値がたくさん詰まった地域であることも理由です。
例えば、熊野古道や高野山が挙げられるように、日本の歴史と文化、そして哲学が息づいている地域。古くから伝わる日本ならではの心の学びにも、ヒントが散りばめられているはずです。
また、食においては、穏やかな気候の中で、みかん、梅などの農業も盛んですよね。また、林業や漁業も受け継がれているのもすっごく魅力!そうそう、学校の更に奥にある川においても、世界的に見ても素晴らしい水中環境が残っていると言われているんですよ。こんなに第一産業が盛んな地域も珍しいんじゃないかな…。和歌山は、とにかく学びの宝庫なのです!
■うつほの杜学園らしい教育とは何でしょうか?
ー一言でお伝えすると、“日本産(メイドインジャパン)の国際教育”です。世界や地球軸を持ちながら、日本ならではの教育に挑戦している日本の小学校は、正直、例が少ないと思います。
私たちは、《グローカル》と言っているのですが、グローバル(地球規模の視座)とローカル(身近な地域社会の視座)の両視点を持ち、地球や平和に貢献していくリーダーを育てていきたいと思っています。
私自身、元々ワイン輸入事業に携わっていて、仕事上、イタリアを中心に、ヨーロッパに行く機会が多くあります。ヨーロッパの国を見てきている中で、日本ならではの考え方って、今すごく注目されているんですよね。分かりやすい言葉で言うと、ZENや和を尊ぶ心、日本食だったり…。
本来、日本人としてのアイデンティティや日本が培ってきていた考え方や強みを、“リラックス”した環境の中で、子どもたちが実際に体験しながら学んだり、生活したりしてほしいなと考えています。
日本は戦後、文化や社会がアメリカナイズし、教育は中央集権型になり、いろんな西洋の概念を取り入れようとしてきました。もちろん海外から学ぶべきところもたくさんありますが、日本の田舎に今なお存在する自然や僅かに残る文化や営みを通じて、五感で学ぶことはとっても大事だと思っています。
うつほの杜学園を取り巻く環境は、まさに、従来の学校という枠組みを超え、ローカル(地域)ともつながりながら学ぶところなんです!
■それでは、“グローバル教育”の面についてはどう考えていますか?
ーグローバルは、地球規模の視座という位置付けで、言語学習としての“英語”はもちろん取り入れていきますが、英語教育だけがグローバル教育ではありません。
いろいろなグローバル教育のアプローチをリサーチしてきましたが、“国際バカロレア(IB) ”のスローガンに共感し、私自身も、東京の玉川大学へ通い、IBの教員資格を取得しました。IBのプログラムの特徴である教科横断型の探究プログラムは、うつほの杜学園でも取り入れIB認定校を目指していこうと計画しています。
*国際バカロレア(IB)とは…多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とした教育プログラム
東洋⼤学国際学部教授でもある市川 顕氏をうつほの杜学園の校長(予定)として迎え、まさに、最近、小学校〜中学校の9年間の教科横断型テーマが決定したところなんですよ。
生命、水、山、道、といった学校の周辺環境を取り入れた大きなテーマに、私もワクワクしています!海外と日本は切り離されているのではなく、つながっています。地球規模の視点をもって、知識を探究できるところが、まさに、ここならではのグローバルプログラムだと思っています。
その他、イタリアのNGOであるFuture Food Instituteとの提携も決まっており、世界との繋がりを感じていただけるプログラムも進めています。
■学校プロジェクト初期から、“みんなで創る学校”にこだわりたいとおっしゃっていた理由はなんですか?
ー“みんなで創る”は、言い換えれば、“学校コミュニティ”を創ることを目指しています。コミュニティが生まれると、そこでの出会いの中で、たくさんの化学反応が起きるんです。その化学反応で、より良い学校にしていきたいという想いがあり、こだわってきました。
そもそも私自身、元々、教育者ではないので、私は問いかけ、みんなに呼びかける役。そこで議論が生まれ、みんながアイデアを出して、教育に関わる当事者になってほしいと考えているんです。
江戸時代の小学校のような場所であった寺子屋では、先に生れた大人たちが、子ども達の未来を想い学びの場や学びの内容を考えて本に認めてきたそうです。もう一度ゼロに立ち返り、これからの社会を生きる子ども達へ贈る学校を、大人たちみんなで創りたいという想いがあります。実際、声を上げたことで想定以上の賛同者と、関わりたいという人が集まりました。
うつほの杜学園だけでなく、日本の教育そのものを、より良くしたいんです。
今回は、それが“学校”だったわけですが、日本人が変わった方がいいと思っているのに変えることができないと諦めている社会システムを変える起爆剤になればと思っています。これは、最初から願いとして持っていたことです。
■“みんなで創る”学校だからこそ、実現したことはありますか?
ーこれもホットな話なのですが、最近、田辺市長からご紹介いただいて、空き田んぼが使えるように決まりました。数年前の大水害で、水が引き込めない状態なので、まず水をどこから引くかを考えなければいけない!
数年かかるかもしれないけど、生徒自身でアイデアを出しながら、水田復興から稲刈りまでプロジェクトにしていこうと思っています。
その他には、白浜にあるアドベンチャーワールドと提携が決まっています。すでに一度ワークショップを開催したのですが、大盛況でした。動物と触れ合う体験を持って、生命を学ぶ機会があることは子どもたちにとって意義が大きいです。
このようにコミュニティがあることで、学校の先生だけが先生じゃなく、地域、企業のプロの人たちが協力しあって、想像を超えたプログラムになってきていることを嬉しく思っています。
■教育移住も積極的に受け入れたいと伺いました。その想いを聞かせてください。
ーうつほの杜学園では、市と連携して教育移住の方もどんどん受け入れていきたいと思っています。想定としては、半分くらいの割合で、東京や大阪など、他府県からも移住者を想定していければと思っています。実は、私自身も、今年の8月に家族で、東京から和歌山へ移住予定です。
夫は、和歌山出身ではないのですが、子どもの頃は転勤家庭で育っていて、“自分の地元”がないと言っていて、自分自身の故郷を作りに行きたい、という気持ちで移住に賛成してくれています。
そうそう。学校が設立する中辺路のあたりは、昔から熊野古道を歩く人たちが、全国から集まる場所でした。何百年も前から、旅で来る人達へ、地元の人が食事を振る舞ったり、宿舎を用意したりと、いろんな方を受け入れる習慣がありました。実は既に多くの移住者も住んでいる地域でもあります。外からの人を受け入れる力は、この土地だからこそ。移住の方にとっても、心地よいコミュニティになるはずです。
ぜひご興味を持っていただいた方は、学校説明会で詳しくお話させてもらえたら嬉しいです。
(インタビュー終わり)
■うつほの杜学園2024年度 学校説明会・オープンスクールのご案内
ー2024年度5月〜7月にかけ、学校説明会を、全5都市+オンラインの計15回実施いたします。
内容:トークセミナー「変容する日本の教育とこれから求められる力」&(仮称)うつほの杜学園小学校の学校説明会。
詳細:変容するこれからの日本の教育と受験についての解説、学園の方針や教育カリキュラムについての説明、学校での学びの概要、移住について、入試の方針について 他
▶︎詳しくはこちら
◆インタビュアー/ライター:御林友希(MIHAYASHI Yuki)
シンガポール駐在帯同4年目。日本在住中は、インターナショナルキンダーガーテンの施設長を務めていた経験から、日本におけるグローバル教育に興味関心を持ち続けている。子ども達が通っていたシンガポールのインターナショナルスクールでは、Parents Association(日本でいうPTA)を2年間務め、学校と多国籍の保護者と子どもたちを繋ぎ、コミュニティ作りやイベント運営に携わっていた。
出身は、高野山の麓である和歌山県橋本市生まれ。高野山に息づく文化や哲学、伝統行事、食(農業)を肌で感じながら幼少時代を過ごしている。