ミニレクチャー⑤「コミュニケーションについて改めて考える」
東京大学相談支援研究開発センター/ピアサポートルームは、東大の構成員が長期休暇中の生活リズムを維持しながら運動不足を解消し、また健康的に新学期を迎えるために、2022/2/14〜3/24の平日にオンラインエクササイズというプログラムを開催してきました。
ヨガやピラティスのLIVE配信など曜日ごとにメニューは異なり、木曜日には相談支援研究開発センター等の先生方による、健康に関するミニレクチャーが行われました。その内容は非常に参考になるものであったので、今回はミニレクチャーの要約とピアサポーターの感想を公開します!
今回は3月17日に行われた、コミュニケーション・サポートルームの綱島先生による、「コミュニケーションについて改めて考える」というテーマでのミニレクチャーの紹介です!
レクチャー内容の概要
1. コミュニケーションとは
コミュニケーションとはよく聞く言葉ではありますが、それは一体何なのでしょうか。レクチャーの中では、相互的なやりとりの成立、と定義されました。みなさんは、コミュニケーションについてどう思っていますか?好きでしょうか、嫌いでしょうか。
ひとりが好きな人もいるかもしれませんし、ひとりでは寂しい、という人もいるかもしれません。コミュニケーションが好き、と答えた方が社会的に評価されそうだからそう言っているけど本心ではそうでもない、みたいな人もいるかもしれませんね。コミュニケーションは取っているけど、なんだか虚しい、という人もいるかもしれません。このように人によって色々な考えがありますね。
2. 発達障害とコミュニケーション
コミュニケーション・サポートルームでは発達障害の特性がある学生へのサポートも行っています。そして、相談内容は「コミュニケーションに関する悩み」が最も多いです。コミュニケーションに関する困りごととして、「雑談で何を話したらよいか分からない」「一方的に話しすぎる」などの相談がよく寄せられます。
発達障害の代表的な2つの診断として、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動性障害(AD/HD)が挙げられます。対人場面における理解が発達障害の特性がある方とそうでない方では異なることがあります。例えば、会話の中で沈黙が起こったとき、多くの方は「何も話さないのは気まずい」と思うことが多いですが、発達障害の特性がある方は「沈黙が心地よい」と思うこともあります。
言葉掛けの場面においても、理解の違いが現れることがあります。例えば、発達障害の特性がある方は髪を切った同僚に対して悪気なく「前のほうがよかったね」と言って相手を不機嫌にさせてしまうことがあります。しかし本人には悪気はないので、同僚が何を怒っているのか分かりません。
このように、発達障害の特性がある方はコミュニケーションの齟齬(すれ違い)から「やる気のなさ」や「悪意」として理解されてしまうこともあります。これはどちらが間違っている、正しい、というものではありません。互いの考えをすり合わせることが大切で、それが「ダイバーシティ&インクルージョン」につながります。
3. 発達障害と仕事
日本の社会ではコミュニケーションが重視される傾向にあります。例えば、経団連「2018年度新卒採用に関するアンケート」では、重視する能力としてコミュニケーション能力は16年連続第1位となっています。この点で、発達障害の特性がある方は不利になってしまうことも多いです。
しかし、発達障害の特性があっても、環境に適応出来ていれば診断の対象にはなりません。得意なところを生かし、苦手をカバーしてもらえる環境調整が重要となります。もし、得意な仕事と興味のある仕事が異なるなら、得意な仕事を選んだ方が良いかもしれませんね。どうしても仕事がうまく出来なかった場合は、障害者手帳を取得するという選択肢も考えられます。
働くためのヒントは、当事者の方の書籍が参考になります。例えば、借金玉さんの『発達障害の僕が「食える人」にかわったすごい仕事術』では、会社の人を「部族」にたとえ、部族の人間関係には「見えない通貨」が流通している、人は与えたものに対価を支払われないと怒る、といった見方で社会の仕組みをわかりやすく解説しています。仕事やコミュニケーションがうまくいなかい方にも参考になるので、気になる方は読んでみてください。
企業では、法定雇用率(民間企業2.3%、国地方団体等2.6%)の影響により障害者雇用が増加しています。これも、ダイバーシティ&インクルージョンの考えからです。コミュニケーションで大切なことは、無理をし過ぎず、互いの多様性の受け入れることです。また、職場でのコミュニケーションが苦手な方は、発達障害当事者の方の書籍が役立ちます。悩みのある東大生は気軽にコミュニケーション・サポートルームに相談してみてくださいね。
レクチャーを聞いたピアサポーターの感想
・話していて楽しい人とのコミュニケーションはいくらでもしたいと思うが気が合わない人とのコミュニケーションは苦しい。コミュニケーションを全方位に対して上手にするのはとても難しいと感じる。
・コミュニケーション・サポートルームの存在は知っていたが具体的に何を行っているか意識したことがなかった。
・「発達障害の人のコミュニケーションの悩み」は発達障害と診断された人に限らず、多かれ少なかれ多くの人が感じたことがあることだと思う。
・コミュニケーション上の齟齬が生じた時に、どのようにお互いにストレスを感じないようにするかが、大事だと思う。
・ダイバーシティを意識して、円滑なコミュニケーションを取るとともに、豊かな人間関係を築いていきたい。
・自分の特性にあった仕事を選ぶことが大事。就活を控える学生に伝えたい。
・コミュニケーションを円滑にするために重要なポイントを意識することが大事。先生が紹介された本を始め、コミュニケーションのポイントは発達障害者の方の書籍からも学ぶことができる。
東京大学ピアサポートルーム
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