
すべての人に読んでもらいたい『老年について』について
お勧めの本はなんですか?
と聞かれたら、質問相手の興味関心に合わせていくつかピックアップするのですが、どなたに対しても必ず薦める本があります。
それは『老年について』という本です。
どんな本なのか?
『老年について』は紀元前44年、つまり今から2000年以上前に、古代ローマのマルクス・トゥッリウス・キケローという人物が記しました。
キケローはユリウス・カエサルらと同時代を生きた人物で、政府の要職を歴任するなど公的な活躍もありましたが、むしろ当代随一の思想家、文筆家として知られている人物です。
「老いるとはどういうことか?」
という問いに対し、キケローがその学識と論理力を総動員してまとめあげ、2000年に渡って読み継がれてきたのが『老年について』なのです。
小難しいかと思いきや
『老年について』は対話形式で記されています。
最初は献辞(この本をお世話になった友人に捧げます的なやつ)から始まります。が、この部分はよく分かんない固有名詞や引用が出てくるので読み飛ばしを推奨。
すると本編に入り、大カトーという元気なご老人にスキピオ、ラエリウスという二人の若者が
「貴方は歳を取ることを苦にしていないように見えるんですが、何か秘訣はあるんですか?」
と問いかけ、話が進んでいきます。一問一答なので、とっても読みやすい。
ざっくりこんなお話です
最初の問いに、大カトーはこう答えます。
「秘訣も何もない。そもそも、みんな長生きしたいと望むくせに、いざ長生きして老人になるとそれを嘆くのはおかしいんじゃないの?」
おっしゃる通りですね。
とはいえ大カトーさん、若者に優しい。
一般に、老年がみじめなものだと思われる理由を4つ挙げています。すなわち
・公の活動から遠ざかるから
・肉体が弱くなるから
・快楽を感じにくくなるから
・死に近づくから
そしてそれぞれに対して、実はそんなことはないのだよということを理路整然と説いていくのです。
キケローからのメッセージ
詳細は読んでいただくとして、キケローが大カトーを通じて言いたかったことは
「老いるからみじめになるのではない。何の努力もしない人が、みじめな老人になり果てるのだ。努力をした者にとって、老いは衰えではなく成熟なのだ」
に尽きると思っています。
受け入れるべきものは受け入れる。しかし努力でなんとかできるものについては全力で取り組む。
『老年について』とは「老いるとはどういうことか?」という問いに端を発した、「いかに生きるべきか」という問いに対する答えであると思っています。
既述の通り読みやすい上に、分量も70ページ程度なのですぐに読めるはず。
すべての人にお勧めしたい一冊です。
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