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ウトニューレトロ手帖

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九州の真ん中、熊本県宇土(うと)市。このまちに眠っているレトロ建築を掬い上げて魅力を再発見するnoteです。「懐かしさと新しさの交差点」という視点からまちおこしを考えていきます。
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記事一覧

色ー”3つの黒”編

カラスのような黒。カブトムシのような黒。 同じ黒という名前だけれど、印象はまるで違う。 色の印象には名前だけでなく、その風合いがとても重要になってくる。 建築に使われる色も風合い、特に材質感がその印象を大きく左右する。 コールタール塗料の黒。渋墨塗料の黒。カラーガルバリウム鋼板の黒。 この小屋には3種類の異なる黒色が、外壁という同じ役割で存在する。 カラーガルバリウム鋼板というのは近年住宅の屋根や外壁で見られるようになった建材である。金属の板で貼られている部分は現代的で

愛着と出会う小屋

気づけばずっとそこにあった小屋。いつごろ建ったのかも定かではなく、おおよそ80歳くらいらしい。農作業小屋として建てられたこの建築には、はじめは馬がいたという。馬がトラクターに変わり、自動車が置かれ、そして今は家具を作る機械が所狭しと並んでいる。 受け継がれてきたこの小屋で、家具職人夫妻による冒険のような改修が今まさに行われているところ。 宇土市緑川地区。農業盛んな田園地帯のとある集落にその小屋はある。農家にはよく見られる何の変哲もない小屋。1階は出荷作業場所や米の乾燥部屋

かたちーまる編

四角い窓や三角屋根。 建築物の絵を落書きするとき、無意識にも直線の組み合わせで描く癖がいつの間にかついている。 だからか、建築に現れる“まるい形”に何か特別なものを感じてしまう。 特に、この建築の“まる”へのこだわりはすごい。 例えば、窓。 角を丸めた窓。ここでは、さらに外側にコンクリート製の丸い装飾が施されている。 そして丸い照明。 壁パネルの装飾。 ショーウインドウの角にも“まる”。 他にもいろんなところに大小様々な“まる”がある。 ディズニーランドの隠れミッキ

タイルーきらきら編

壁にタイル。床にタイル。犬も歩けばタイルにあたる。 私たちが気付いていないだけで、街はタイルにあふれている。 住宅街の路地裏に入ると現れた黒く光るタイル。クリーム色の外壁とのコントラストも相まってこのタイルが際立つ。 元美容室のポーチにあつらえられたタイルは、その佇まいから、まるでこの店の看板のような存在感がある。 木造であるが、鉄筋コンクリートで作ったかのような建物のかたち。モダンさを追求した設計者のこだわりが感じられる。 なによりもこの小さなタイルたちに注目して