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映画『BLUE GIANT』を観ました。

※ネタバレはありませんが多少内容に言及します。まっさらで楽しみたい方は続きを読まないことをおすすめします。
※映画本編のみに対する感想です。原作はほぼ未読ですのであしからず。

福井市の「HALF」という喫茶店に一度だけ行ったことがある。カレーがおいしいことで有名だったのだけど、マスターにとっての主役はあくまでコーヒーだった。カレー単品での注文は受け付けられず、態度次第では怒られることもあるとの事前情報を得ていた。
失礼ながらコーヒーもカレーもおいしい以上の感想を記憶していないのだけど、店内に置いてあった『BLUE GIANT』という漫画を一気に読破したことは覚えている。

先日の「鯖江JAZZフェスティバル」をきっかけに、にわかに周囲でJAZZ熱が高まるのを感じていた。僕は仕事でJAZZフェスには行けなかったのだけど、仲間内での映画『BLUE GIANT』鑑賞会に誘ってもらった。
残念な僕の海馬は原作の内容をろくに記憶しておらず、新鮮な気持ちで楽しむことができた。何より音がかっこよすぎて、数日たった今でも口ずさんだり口笛で吹いたりしてしまう。ドラム始めよっかなあ。

観終わって、最も気になったのは、そもそもJAZZとはどういう精神性を持つ音楽なのかということだった。検索してトップに出てきたのが福井新聞の記事だったのはなぜかちょっとうれしかった。

簡単に言うと、「不当な扱いを受ける者たちの魂の叫び」だろうか。

そうすると登場人物たちの経済状況や家族構成にどうしても目がいってしまう。
そんなJAZZで「世界一のプレイヤーになる」と熱く宣言する大は玉田の部屋に居候をし、ついぞ本編内では部屋を借りるシーンは描かれない。登場する家族は、兄と、歳の離れた妹のみ。オムライスがおいしく作れるのはきっと家の中で料理をする機会が多かったのだろう。
「勝つ」ことに異常な執着を見せる雪祈は、大に「予想外」と言われるほどのボロアパートに住み、家族は母親しかいないようだった。
いっしょに鑑賞していた友人が、「大のサックスは60万円くらいすると思う。」と言っていた。進学して学費に充てるでもなくリクルートスーツを買うでもないそのお金は、誰がどうやってどんな思いで蓄えたものだったのだろうか。それに対して、キレイなワンルームで一人暮らしをし、大学のサークル活動に打ち込む玉田のおかげで、僕のように特に大きな苦労なく生きてこれた人間でも物語に感情移入することができる。玉田がバイトに向かうシーンがあるが、行き先が工事現場ではないことはなんとなく予想がつく。

他には、作中のシーンに多く登場する「雪」や、雪祈の携帯電話の待ち受け画面にもなっていた「月」の意味するところなどはもう少し考えたいと思っています。このへん何か感じるところがあった人は教えてください。

今思えば、「HALF」の店内で薄く流れていたBGMはきっとJAZZだったのだろう。雪祈は「JAZZはいま瀕死。」と言った。今はなき喫茶店で食べたカレーの味はもう思い出すことができない。

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