日本のヨガの歴史(2000年代‐2010年代)「パワーヨガからホットヨガへ、そして○○ヨガへ」
ヨガ業界相関図2006を作成しました。
前回のNOTEで宣言したとおり、15年前のヨガ業界相関図を作成しました。
2004年には23万人程度とされていた日本のヨガ人口は、2017年で約770万人と推定されてます(*)。
*ヨガジャーナル日本版「日本のヨガマーケット調査」より
ヨガ業界の過去と現在を図示し、15年間でどのようなサービスが生まれていったのか比較し、そこからヨガ業界の未来を感じてとってもらいたいです。
そしてヨガ業界相関図2006とヨガ業界相関図を重ね合わせたのが↓
ヨガ業界相関図2006を作成するにあたり、名古屋のパーティーカメラマン坂野さんに貴重な意見をいただきました。ありがとうございました。
15年間でヨガ業界に増えたもの、と新しくでてきたもの
ヨガ業界相関図2006とヨガ業界相関図2020を比較して
・ホットヨガスタジオ
・フィットネスクラブでのヨガ
・ヨガ専門アパレル
・ヨガアライアンス認定校
・ヨガ練習中の怪我
などが増えました。
・SDGs
・マインドフルネス
などが新しくでてきました。
LOHASというワードが聞かれなくなり、その上位互換とともいえるSDGsが普及してきました。
2004年からLOHASの普及・啓蒙を行ってきたNPOローハスクラブは、これからはSDGs、と宣言されています。
http://www.lohasclub.org/sdgs-1/
ローハスクラブでは30年間の議論の解がSDGsではないかと受け止めています。
また、チクナットハン氏界隈ではよく知られていた「マインドフルネス」という言葉もここ数年で急速に普及してきました。マインドフルネスの歴史などをNOTEに書きました。
日本のヨーガの歴史(2000年代)「第2次ヨガブームがスタート」
1990年代以降、欧米社会を中心にダイエットや健康・自然志向が高まるなか、流行の先端を行くハリウッドスターたちがヨーガへ心酔し始めたことを契機に、ヨーガ・ブームが急速に沸き起こった。その背景には 情報・通信テクノロジーの革新に裏打ちされたメディアとの融合や関連商品の開発といったグローバル経済の台頭と結びつくスポーツ・ビジネスの地球規模的な展開がうかがえる。
”竹村 嘉晃氏「グローバル時代における現代インドのヨーガ受容(日本体育学会大会予稿集、2007)」”より抜粋
マドンナ、メグ・ライアン、などハリウッドのセレブリティがヨーガアイコンとして有名でした。元スーパーモデルのクリスティーナ・ターリントンが表紙のLiving Yogaはヨーギーニのバイブルになりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4862201458
アスレジャー文化を作ったlululemonが設立されたのが1998年、世界最大のヨガ資格発行団体であるヨガアライアンスが設立されたのが1999年でした。
その後、2000年代前半にいよいよブームの波が日本にやってきました。
日本において現在のヨーガ・ブームが始まるのは、オウム事件から10年弱を経て、その記憶がうすらぎ始めた2004年からである。この年、その後のブームをもたらした2つの出来事があった。「YOGAフェスタ東京」と雑誌 『Yogini』創刊である。
”永嶋弥生 「「鍛える私」から「癒される私」へ〜現代ヨーガに関する文化史的研究〜(早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科 修士論文、2011)」”より抜粋
2000年代前半からからヨガに関わってきた人は、ヨガ業界におけるイノベーターやアーリーアダプター。特にヨガフェスタやYogini、ヨガインストラクターでいうとケン・ハラクマ先生などはイノベーターといえるでしょう。海外のセレブリティの影響で運動量の多いパワーヨガやアシュタンガ・ヴィンヤサヨガが人気を博しました。
*イノベーター理論によるとイノベーター(革新者)は2.5%、イノベーター(革新者)は13.5%、「アーリーマジョリティ(前期追随者)」は34%「レイトマジョリティ(後期追随者)」34%「ラガード(遅滞者)」16%。
また、2004年はLOHASブーム元年でもありました。
常温ヨーガスタジオチェーン最大手「スタジオヨギー」を運営する株式会社ロハスインターナショナルが設立されたのが2004年(2018年に株式会社ヨギーに社名変更)。名古屋を拠点としながらも「LOHASをテーマにしたヨガイベント」を多数開催し、全国的な影響力があったNPO法人NaYogaが活動開始したのが2004年。
そして、雑誌ソトコトが「スロー」から「ロハス」へコンセプトをシフトしたのも2004年でした。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281680136/b/16675/
そして2004年。スローの一歩先にある「ロハス(LOHAS Lifestyles Of Health And Sustainability)」に眼を向けてみよう。ロハスのキーワードは「ヨコ」の繋がりだ。食、家、街、ファッション、医療、旅、……すべてが関係しあい、影響しあって、ロハスなライフスタイルが完成される。
「ロハス」を定義する5つの柱、「持続可能な経済」「環境共生な暮らし」「健康的なライフスタイル」「代替医療」「自己開発」
2004年はホットヨガ元年でもありました。2010年代に急成長したホットヨガスタジオLAVAの一号店が渋谷にオープンしたのです。
日本のヨーガの歴史(2010年代)「世界有数のホットヨガ大国に」
2010年代になるとホットヨガが本格的なブームとなりホットヨガ専門スタジオが全国各地にできました。ホットヨガはダイエットや健康志向な女性に支持されるようになりました。
先行したオラビエは2014年3月期の売上高が14億円、利益が2億円と前年同期比で増収増益。最大手のLAVAの売上げは160億円を超す。オラビエの小林徹平管理部長は「ここ1、2年、業界は高止まりの状態です」と話す。
”「女の園”脱皮を図るホットヨガ 稼働率アップのカギは?”. SankeiiBiz (2015年7月12日)」”より抜粋
LAVAは、当初「まんが喫茶ゲラゲラ」などを展開する株式会社ベンチャーバンクの新規事業でした(2016年株式会社LAVA Internationalとして分社化)。
2011年にINSPAグループを運営する株式会社ロックスがカルドというホットスタジオブランドをスタートし追従しましたが、LAVAの勢いは衰えず、日本のフィットネス事業売上高で見て、コナミスポーツ、セントラルスポーツ、ルネサンス、ティップネスに次ぐ規模にまで成長しました。https://www.fitnessclub.jp/business/date/big12.html
また2010年代半ばから大手フィットネスクラブがホットヨガのプログラムを相次いで導入しました。現在ではホットヨガクラスは、フィットネスクラブで最も人気あるプラグラムの一つとなっています。こうして、日本は世界有数のホットヨガ大国となりました。
一方、ホットヨガの元祖ビクラムヨガは2006年、銀座に日本1号店をオープンしましたが、紆余曲折を経て、現在は株式会社 BIKRAMYOGAにより数店舗が運営されている、という状況です。
http://www.bikramyoga-japan.com/index.html
創始者ビクラム・チョードリー氏について知りたい方は、Netflixドキュメンタリー『ビクラムの正体 ヨガ、教祖、プレデター』を御覧ください。
日本のヨーガの今後
・ヴィーガン
・オンライン
といったブームがくるかもしれません。
ヴィーガンは東京五輪・パラリンピックが大きな潮目になる、といわれています。
市場規模は1兆円超えの調査も 東京五輪で「ビーガン」にどう対応?
2020年東京五輪・パラリンピックを前に、肉や卵、ラードなどの動物性食品を食べないビーガン(完全菜食主義者)への対応が議論になっている。ベジタリアン(菜食主義者)は欧米に多く、訪日外国人客の増加に向けて受け入れ態勢の整備は急務だが、日本は正式な認証マークもなく、対応店舗も少ないのが現状だ。五輪本番まで半年あまり。議員も超党派で対応策の検討を急いでいる。
ただしヴィーガンは1940年代にできた言葉であり、歴史的にヨーガそのものとの深い関連性は知られていません。
オンラインでのヨガレッスンではアメリカが日本より5年進んでいます。 YogaGlo(現在はGlo) が先行し、それをYogaWorksが運営するMyYogaWork.comなどが追従しています。ちなみにYogaWorksは2017年7月に上場したものの、2019年7月には上場中止となりました。創業者Maty Ezraty氏が日本で急逝されてから約1週間の出来事でした。
https://ir.yogaworks.com/news-releases/news-release-details/yogaworks-announces-delisting-nasdaq
https://www.nytimes.com/2019/07/17/health/maty-ezraty-dead.html
YouTubeチャンネル「Yoga With Adriene」はチャンネル登録者数600万人を超えています。人気YouTuberフィッシャーズと同じくらいのチャンネル登録者数です。
日本ではB-Lifeが「ヨガ界のHIKAKIN」といえる存在感を示しています(チャンネル登録者数60万人以上)。
YouTubeを始めるヨガインストラクターが増えています。
ただ、ヨーガ系YouTuberは今後かなり厳しい競争になりますので、それなりの覚悟が必要かと思います。ヨーガ系YouTuberとして真剣に活躍したと考えている方で、どんな苦行(タパス)にも耐えられる自信のある方には筋のよい専門家を紹介します。ご連絡ください。
アンダーザライトでも、2つのチャンネルを開始しました。
まとめ
オウム事件によって干上がってしまった日本のヨーガという歴史ある川に、アメリカの新しいヨーガが流入し、またたくまにホットヨーガが流入し、流れの幅を広げていった15年だったかと思います。
これから、他を排斥することなく、吸収や融合を繰り返しながら、多様性や豊饒性を創出し立派な大河となっていくことが即ち、ヨガ業界の発展につながっていくことになるかと思います。大河の周りには文明が栄えるといいます。
仏教やジャイナ教の影響を受けながらそれらをうまく吸収・融合していったヨーガの長い歴史に学びましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?