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一生懸命になれなかった私へ

中学最後の吹奏楽コンクール、その時吐き出した言葉を今も鮮明に覚えている。

演奏が終わり、全体写真を撮り終わって同期と喋っていた。「どうせ銅賞だよ」「もしかしたら奨励賞かも」そんな風に言いあった。(吹奏楽コンクールでは金賞>銀賞>銅賞>奨励賞の順でどの団体にも必ず賞が贈られる)

そして結果は銀賞。「まあ、こんなもんか」「銅賞じゃなくてよかったね」今思い返すと、なんて不誠実で冷めた言葉だろうかと思う。そこには迸る熱情も、金賞への切望もなかった。中学最後のコンクールにもかかわらず、涙なんて一筋も流れなかった。

誰よりも早く部活に来て準備をし、欠かさず自主練をして誰よりも遅く帰った。練習にも熱心に取り組んだ。でも、心のどこかで一生懸命になれない私がいた。そこにはきっと、「これだけ練習したのに成果が出なかったらどうしよう……」「一生懸命練習した先に何も得られないとしたら?」そんな恐れがあったのだと思う。今でも、目標に向かってひたすらに一途に突き進む学生たちの姿を見ると泣きそうになる。あの日置いてきてしまった熱情のかけらが、どうしようもなく胸を刺して。

一生懸命になれなかった青春には、苦い思い出だけが残った。


そんな私が、今一生懸命になっていることがある。
それは、eスポーツ選手の応援だ。

きっかけはMondoさんという方だった。

Youtubeで見た切り抜きをきっかけにMondoさんの溢れる魅力に虜になった私は、彼の所属するCrazy Raccoonというチームを知った。Crazy Raccoon、国内指折りの有名プロゲーミングチームだ。

そしてその時たまたま、MondoさんがAPEXの公式大会であるALGSにCrazy Raccoonの名を背負って出場することになり、私はゲームのことも大会のこともよくわからないままMondoさんを目当てに視聴した。

その時の感動を、私は生涯忘れることがないと思う。初めて見た一試合目でなんと、Crazy Raccoonがチャンピオンを獲得したのだ!Mondoさんは韓国人なので、ゲーム内での会話は韓国語。観戦初心者だからゲーム展開もいまいちわからない。でも、彼らがチャンピオンを取った瞬間、確かに私は胸に溢れる熱情を知った。

この感動をきっかけに、私はeスポーツ競技シーンにのめり込んでいく。毎試合欠かさず追い、試合の日には朝早くから神社に行って彼らの勝利を祈った。チャンピオンや勝利をつかみ取ったときには狂喜乱舞し、敗北し悲しい結果に終わったときは涙を流した。応援しているチームが試合に負けたショックで熱を出したことも、数日寝込んで使い物にならなくなった時もある。それくらい、いつだって私は応援に全力だった。

「応援」という形で自分のために、誰かのために一生懸命になれる私を知ったとき、涙が出るほど嬉しかった。応援は楽しいだけでなく、酷く苦しい。けれども私は、応援をやめなかった。たくさん悩んで、苦しんで、泣いて、それでも全力で応援していたかった。そう思わせるだけの魅力がeスポーツ競技シーンにはあったし、そしてそこで戦う選手にもあった。

たくさんの選手を知った。そして知るたびにそのひたむきさに心を打たれた。プロゲーマーというキャリアが短く先が不安定な職業を若いうちから自らの手で選び取り、勝利をつかみ取るために一日のほとんどを練習に費やす彼ら。画面の前で何度も試行錯誤を繰り返す気が遠くなるほどの努力を、彼らは「勝利」ただそれだけのために捧げる。

一生をかけて応援したいと思える大好きな選手もできた。同じくCrazy Raccoon(現在はDetonatioN FocusMe VALORANT部門)に所属するnethさんだ。

nethさんという人に、その素晴らしいプレイに、選手としての在り方に惚れ込んだ。これほどまでに、私は人を好きになって応援できることを知った。nethさんをはじめとする選手たちに、たくさんの素敵なものをいただいた。喜び、感動、勇気など、言葉で表しきれないそれはもう素敵なものをたくさん。今はそれを少しでも応援という形で返していけたらなと思っている。

あの時の臆病さゆえに一生懸命になれなかった私へ。一生懸命ってとびきり苦しいけれど、とびきり楽しいよ。たとえ望んだ結果が得られなくたって、あなたの努力は決して無駄にはならない。必ずその経験が活きる時が、自分を助けてくれる時がくる。どうか恐れないで、あなたが勇気ある一歩を踏み出せますように。

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ばすとっく
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