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「君の名は」のイメージ吹き飛ぶ岸惠子の“名エッセイ” 俳優や政治家に読ませたい!
「クスリ」と笑い、「ウルッ」としたり、「うーん」と唸る 【原点回帰】自分が書きたいこと
NHKラジオで放送されたラジオドラマ『君の名は』が人気を博したのは1950年代のこと。
自称“スーパーカン”(超還暦)の私もさすがにリアルタイムでは聴いていません。どころか、正直なところよく知りません(汗)。
ただ同ドラマは小説や映画、テレビドラマ化されて語り草となったものです。それは私も大人たちの会話から実感していました。
最近では新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』(2016年8月公開)が大ヒットしましたが、タイトルが似ているのは偶然ではないでしょう(個人的意見)。
1953年公開の映画『君の名は』でヒロイン・真知子役を演じたのが岸惠子さんです。
文筆家でもある岸惠子
私はnoteのプロフィールで母親のことを“スーパーベイ”(超米寿)などと勝手に紹介しています。その母ももうすぐ90歳。
デイサービスに通ってはいるものの、自宅ではテレビにジーッと見入るか横になって休むことが多くなってきました。
息子としては少しでも生活に張りが出ればと願いつつ、佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』(2016年)を勧めるなどしています。
母も気が向いたときに少しずつ読んでいるようです。
すると先日、本屋さんをぶらぶらしていたときに、ふと目にとまったのが岸惠子さんの新刊『91歳5か月 いま想う あの人 あのこと』(5月発売)でした。
母に勧める前に、内容がふさわしいか確認するためまずは自分で読んでみました。
意外に感じたのですが、岸惠子さんは当初「物語を書く人」になりたかったとか。
実は女優として活躍するだけでなく、エッセイ『巴里の空はあかね雲』(1983年)をはじめ多くの著書があります。
岸惠子の歯に衣着せぬ言葉で目を覚まして欲しい
詳細についてはネタバレになるため触れませんが、これだけは言いたい。
エッセイとして素晴らしい。とにかく読み応えがあり、彼女の生き様や、共演してきた俳優や出会った政治家、プロレスラーなどの描写が見事。
特に映画『君の名は』で共演した春樹役の佐田啓二さんとのロマンス。弟分的な存在だった萩原健一さんとの思い出など、ありありと書かれていて胸キュンものです。
また、当時の俳優たちや映画監督たちが作品にどれほどこだわっていたかを知ることができ、読んでいて身が引き締まるようでした。
私は、昨今の俳優陣や映画・ドラマの関係者がどのような心づもりで作品と向き合っているか知る由もありません。
ただ岸惠子さんが経験したような苦悩が迫真の演技や優れた作品につながることを思うと、若手にこそ本作を読んでほしいです。
岸さんは政治家として活躍した中曽根康弘さんや石原慎太郎さんとのエピソードも明かしています。
政治の手腕が云々ではなく、彼らの人間としての魅力がうかがわれる名文です。これもまた、若手政治家に読んでいただきたい。
noterも参考にしたいライティングの“妙”
あなたがもし「女優が書いたエッセイ」と思って読んだとすれば、きっといい意味で裏切られることでしょう。
文筆家としての彼女らしいオリジナリティーのある表現が随所に見られて“輝き”を放っているからです。
たとえば、数秒ほどざっとページをめくっただけでも次のようなフレーズが気になりました。
「人が鈴なりになったその一つの窓を必死に跨いで、ハイティーンにも満たない可愛い女の子がいきなり窓から飛び降り、ホームを駆け抜け私に向かって走ってきた」
「私は浩市さんを、まだ自分の息子のように感じている自分にペケを付けた」
「人生百年などという、とんでもない流行言葉を日本は世界中で一番実践しているようである…」
noteに投稿する記事を書く際に「どのように書けば読んでもらえるのだろう」と悩むことはありませんか。
いわゆる「ライティングテクニック」や「ライティングスキル」について解説された記事も少なくありません。
そうしたノウハウを学ぶのも方法ですが、私は生きた文章を読んでセンスを身につけることも大切だと思います。
以上、岸惠子さんの『91歳5か月 いま想う あの人 あのこと』を紹介させていただきました。
おまけ
映画『おとうと』(1960年11月1日公開)は幸田文の小説を原作に市川崑監督、岸惠子主演で実写化されたもの。
角川シネマコレクションで配信された「劇場公開当時予告」の映像では、迫真の演技が垣間見られます。