【言葉狩りと言う勿れ】「飯テロ」を平然と使うのは同調圧力かも?
これまで「ほぼほぼ」や「肉肉しい」を取り上げてきましたが、実は私だって「マジで」とか「ヤバい」とか使うので“美しい日本語”をそれほど意識しているわけではありません。
でも今回のワード「飯テロ」に関しては「美しい云々」とかいうレベルを通り越していますよね。
noteでさえ数え切れないほどの記事で「飯テロ」が使われているだけに、批判殺到やむなしの覚悟で言わせてください。
「人としてよく使えるな!」
飯テロの歴史
2010年頃から電子掲示板などで使われはじめたようです。やがて『深夜食堂』、『孤独のグルメ』といった作品の人気とともにSNSなどで食欲をそそる状況を「夜食テロ」と表現するようになり、時間帯に関わらず使える「飯テロ」が広まったと思われます。
※欧米では「フードポルノ(Food porn)」という表現が「飯テロ」に近いといわれますが、ここでは趣旨から外れるため触れていません。
で「飯テロ」のどこがいけないの?
2015年11月、フランスでISIL(イスラム国を自称)によるパリ同時多発テロ事件が起きて世界中を震撼させました。
当時、私がSNSで「多くの人がテロによって命を落としているのに、飯テロという言葉を使うのは無神経ではないか」とコメントしたところ「言葉狩りだな」と批判されたのです。
「言葉狩り」という、具体的な説明を必要としない呪文のようなひと言であしらわれたことにショックを受けた私は、反論する気にもなれませんでした。
今回、「飯テロ」について記事を書くにあたりSNSを調べたところ、2018年3月に「『飯テロ』という言葉にずっと違和感をおぼえてる」とつぶやかれていたので、私と同じように感じた人がいることがわかり安堵したものです。
一方、ネット上には食欲をそそるという意味で平然と「飯テロ」が飛交っているのが現状です。癒やされると評判の『きのう何食べた?』ですら、2021年に劇場版予告映像のタイトルに「飯テロ編」と使っていますから。
私のような「飯テロに違和感」派は極めて少数なのでしょう。
しかし、日本では2022年7月に安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃される事件が起きた際、「テロ行為は絶対に許せない」との声が聞かれました。
現在はロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの紛争が続き、報道で「テロ行為」という言葉を使います。
多くの日本人がメディアを通してテロによる悲惨な状況を目にしたはずです。それでも「それとこれとは関係ないから」と割り切って「飯テロ最高!」「ヤバいし、飯テロ」などと使える神経がヤバいと言いたい。
もしかして同調圧力のせい?
コロナ禍ではほとんどの日本人がマスクを着用しましたが、欧米では自分の意志でマスク着用を拒否した人も少なくありませんでした。
その現象から「同調圧力」がクローズアップされたというわけです。
ある意見や行動において、集団のなかで多数派による暗黙の圧力が働き、少数派の人たちが自分の意見を貫くことなく多数派に合わせるしかない空気感を「同調圧力」と呼びます。
「飯テロ」の場合は、同調圧力よりもさらにナチュラルな形で「飯テロってテロリストのことを言ってるわけじゃないし、別に使ってもいいっしょ」と同調しあって「問題なし」という認識が広まったのではないでしょうか。
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私は「飯テロ」を使う人に会ったら直接「おかしいんじゃない?」と指摘するようなことはしません。ただ「この人は飯テロを使う人」のリストに入れて忘れないと思います。
【言葉狩りと言う勿れ】シリーズ「飯テロ」編、お読みいただきありがとうございました。
ちなみに気づかれた方もいると思いますが、「飯テロ」を批判したときのエピソードから「言葉狩りと言う勿れ」というタイトルを思いつきました。