イフェイオン 物悲しい星の花 [その2]
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邂逅
「パンっ!」
少年の頬に大きな衝撃が走った。
そう、ビンタをされたのだ。
ちなみに今は昭和ではない、平成である。
頬の痛みを堪えながら練習に戻る少年は中学生になっていた。
小学6年生の時に住んでいた市では、最もホームランを打った選手となり、いつしか「将来の夢はプロ野球選手です!」と言うようになっていた。
夢を叶えるため、クラブチームで野球をすることにした少年は練習に励んでいた。
クラブチームは中学校の部活とは違い、硬式球という高校生やプロが扱うボールでプレーをする。少しでも早いうちからそのボールに慣れておきたいというのもあり、このチームを選んだ。
同じ時期に入った同期と言われるメンバーは20人近くいた。
それぞれが違う地元の少年野球チームで野球を経験してきた個性溢れるメンバーだ。
キツい練習に文句を垂れながらも、お互いがお互いを鼓舞し合っていた。
「俺たちの時代になったら全国へ行きたい。」
そう思った。
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嵐の前の静けさ
クラブチームの練習は、土日祝の休日に行われる。
部活ではないため、休日しか練習する機会はない。
そのためか、チームメイトと集まって遊ぶ機会はほとんどなかった。
そんな生活が続く中、珍しく来週の練習がオフになった。なかなかない機会にメンバーの1人がある提案をした。
フジ「せっかくのオフだから集まって遊ぼうぜー」
フジの一言に多くのメンバーが賛同したが、なぜか少年は断った。
いや何故かではない。
中学校へ通い始め、クラスで一番初めに仲良くなったスギという男が原因だった。
スギ「けいおん!!ってアニメめちゃくちゃ面白いよ!」
少年は薦められるがままに、自宅で『けいおん!!』というアニメを観た。
何やら可愛らしい女子高生が、放課後にお茶をしながら軽音楽部で音楽を掻き鳴らすという内容だった。
面白すぎる…!!
中学に上がり、髪を丸坊主に刈り上げた身長170cmオーバーの野球少年はそれをきっかけにアニヲタになっていたのである。
元々、1人の時間が好きなこととアニヲタっぷりが見事に掛け合わさり、"行かない"という選択をしたのだ。
漫画とアニメに囲まれながら充実した一日を過ごし、
また次の練習日が近づいてくる。
少年にとっては、ただ一日練習がなかっただけの一週間。
しかし、その裏では大きな事件が起きていた。
>>>その3へ続く
𝘊𝘓𝘖𝘝𝘌𝘙𝘚 𝘏𝘐𝘎𝘏