彼女にご飯を作ってほしい男の人の気持ちがわかった。

今度は私から誘った。

「ビールのお裾分けしていいですか」「ほしい」

好きな人に会える日は起きた時からずっと楽しい。大好きな濃いメイクは封印して、清楚で脱がせやすいお洋服を着る。私が好きな”強い女武装”と”自分をいちばん可愛く魅せるカタチ”はまるで違うけれど、それを使い分けるのだって楽しい。

ビールを6缶持って向かえば今日もうとうとした彼。「ちょっとねてた…。」「お疲れ様。これお土産ね。」「おー、ありがと。」喜んでくれたら私も嬉しいからいつも貢いでしまう。

彼がベッドにうつ伏せになればマッサージの時間だ。「顔もやって?」と言うから膝枕をして軽くリンパを流す。彼の頬はやわらかくてぷにぷにと余計に触ってしまう。こめかみを押すと「あ、それきもちいかも。」「もっとおめめぱっちりになっちゃうね。」「やったー。」あぁ、今日も可愛い。

「最近家にいるから業務用のパスタ買ったんだよね。」「めっちゃ入ってるやつ?」「そー。」今日のゲームはスマブラ。一緒にやるわけではないけれど。

夕食にペペロンチーノを作ってくれた。酒飲みクッキング。ニンニクの香りをつけたベーコンを”これだけでおつまみになる”とまたお酒が進む。「2人前作ることないから味薄いかも。」「全然。お酒飲んでるからじゃない?」「そう?」「うん、美味しい。」じゃあ良かった、と言う彼の横顔はいつも通り感情が読めなかった。

次の日は在宅勤務だった。それでもいつもと同じ時間に出勤しないといけないから、と鳴る早朝のアラームに嫌な顔をしてのそのそと寄ってきた彼の頭を撫でる。出勤報告をしてまたうとうとした彼は2時間後に起きて布団の中からノートパソコンで仕事をはじめた。”まだ寝てていいよ”と頭を撫でられて私はまた眠った。

目が覚めたらお昼前。彼はいなくて、隣の部屋から音がするからそっちで仕事をしているらしい。ぼーっとしながらベッドを直していると、”起きた?”と彼が覗きに来た。「ごめん、めっちゃ寝た。」「いいよ。お昼作るけど食べてく?」「え、いいの?」「どうせ材料2人前買っちゃったから食べてけば?」「じゃあ食べる。」今度はボンゴレパスタ。トマトベースにちゃんとバジルの葉が入っている。「2人前むずい。麺の量も多くなっちゃった。」「少食なのにね。」「めっちゃおなかいっぱいになるやつだ。」なんか面白いから見ちゃうんだよね、と言いながらローランドのYouTubeを見ながら食べた。

「帰るね。ご馳走様でした。」仕事に戻った彼に声をかける。「次はもっと上手く作る。」「美味しかったよ?」「うーん…。」納得いかなかったらしい。

後日、彼から”ビール美味しかった”と連絡がきた。わざわざ連絡くれるところも好き。

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