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【マジカルバケーション】ワクティ村の話【GBA】

※2023年9月25日に別のブログに書いたものを再掲しています。

 トルーナ村の次に行ったワクティ村は、愛の大使という種族が暮らす村です。その名の通り愛にあふれた種族で、揉めごとや争いごとを嫌います。
 ここで主人公たちが出会うのはワクティ村村長の息子(また村長の家族なのね)トルティーヤさんと、村長親衛隊を名乗るタルトさんとタタンさん。村長の息子であってまだ今のところ村長ではないトルティーヤさんですが、お父さんである村長から愛のデッパリと呼ばれる村長の証を無理矢理奪い取り、自分が村長だと周囲に言い張っています。

 ワクティ村のそばにあるレーミッツ宮殿という場所にクラスメイト3人が向かったという情報を得た主人公たちは村長(お父さんのほう)から宮殿の鍵を受け取りますが、それに対して息子のトルティーヤさんは激怒。なぜヨソモノに鍵を渡すのか、と。
 村人は全員愛の大使という種族なので、基本的に欲しいと言われればなんでもあげてしまうのでしょう。宮殿の鍵も必要とあらばいくらでも配りまくるのだと思います。いったいいくつスペアがあるのだろうか……。
 宮殿にはどうやらエニグマもいるようで、トルティーヤさんとタルトさんタタンさんは宮殿のカギは好きに使っていいが、エニグマは自分たちが倒す!と張り切って宮殿へと向かいます。

 彼らのあとを追うように宮殿に向かった主人公たち。いざ入ろうとすると、そこに現れたのは先に行ったはずのトルティーヤさん一行。宮殿への立ち入りは許さん!と。なにこの人情緒不安定なの??さっきカギは自由に使っていいって言いましたよね?
 更にトルティーヤさん、あんなにエニグマを倒すと息巻いていたのに、主人公たちやタルトさんやタタンさんが協力してエニグマを倒そうと提案すると
「誰も彼もが口を開けば倒すだの、殺すだの……なんてあわれな……」
「なぜ倒す必要がある……?ヤツらが何をした!?光におびえ、宮殿に引きこもっているだけの相手をッ……!」
 とエニグマ退治を拒否。え???自分たちが倒すってついさっきまで言ってませんでした???
 これにはさすがに親衛隊のタタンさんも
「誰も手を汚さずに生きてゆける時代ではありやせんぜ。手を貸してやりやしょうぜ」
 と説得を試みますが、トルティーヤさんは首を横に振ります。
 が。
 このあと3匹のエニグマに襲われた主人公たちはトルティーヤさんたちに助けられます。しかも闇属性に効果があるという村長の証、あんなにお父さんに返すことを拒絶していた大事なものを投げつけてまで、2匹も倒してくれるんです。

 見事3匹のエニグマを倒した主人公たちは万々歳ですし、この喜びをトルティーヤさんたちと分かち合おうとしますが。
「そう……エニグマが死んで……オレたちは助かった……」
 と浮かない表情。
「たすかったからなんだって言うんだ」
「助かったからなんだって言うんだッ!!戦わなければ生きていけないなら、なぜオレは愛の大使なんかに生まれてきたんだ!!オレはもう……愛の大使なんかじゃない……生きてるシカクなんてない!!」
 主人公の仲間からアンタは英雄だと言われても、トルティーヤさんの叫びは止まりません。
「ハッ!このオレが英雄か!村へ帰り、みなの前で、『オレを見ろ。オレがしたように戦え』そう言えばいいのか!?」

 当然ながら私は愛の大使ではありませんが、トルティーヤさんの気持ちもわからなくはないんです。
 自分たちから見て『悪』だから傷つけ殺していいのか。
 エニグマの生態はわかりませんが、彼らも群れで動く以上仲間や家族がいるかもしれません。もちろん彼らは主人公たちだけでなく、毎年サマーキャンプにやってくる魔法学園の生徒を異世界に連れ去った悪ですから、退治されてしかるべきなのでしょう。でも、誰も誰かの命を奪う権利はありませんし、いかなる理由であれ、殺していい理由にはならないのでは?

 これって人間の世界でも言えることですよね。罪を犯したからといって、寄ってたかって責めたてたり石を投げたりしていいのでしょうか。

 憎しみからはなにも生まれない。村の平和を守る方法はエニグマを倒すしかなかったのか。ただレーミッツ宮殿にエニグマがいるというだけで、村に実害はなにもありませんでした。主人公たちを助けるためにトルティーヤさんたちはエニグマを倒しましたが、自分たちがここまでする必要があったのか。

 愛の大使であるトルティーヤさんは常に愛とはなにかで悩み苦しんでいるのかもしれません。だから言うことがころころ変わっていたのでしょう。
 主人公たちに感謝されるトルティーヤさんはタルトさんとタタンさんから村に帰りましょうと言われます。エニグマを退治したことを報告すれば、彼はきっと父から正式に村長と認められるでしょう。
「ありがとう、しんえー隊。それに、みんな。また、どこかで会おう」
 そう言い残し、トルティーヤさんはさっさとその場を立ち去りました。
 このあとワクティ村に行くとトルティーヤさんがひとりで旅に出てしまったことを聞かされます。
 なんだかつらいですね。愛って、優しさっていったいなんなのでしょう。相手を助けることや甘やかすことを優しさという人もいれば、あえて突き放すことを優しさだという人もいます。
 トルティーヤさんが主人公を助けるためにエニグマを倒してくれたのも愛ですが、殺してしまったエニグマに対して申し訳なく思うのも愛、なんですよね。
 旅の中で彼にとっての愛が見つかるといいなと思います。

 そういえば最後までわからなかったのはタルトさんとタタンさんのこと。ふたりは村長親衛隊とのことですが、彼らが指す村長がお父さんのガトー村長のことなのか、その父親から強引に村長の座を奪っている息子のトルティーヤさんのことだったのか。トルティーヤさんといるから彼を村長と認めているのかと思いきや、お父さんに村長の証を返すよう事あるごとに進言しています。父親で村長のガトーさんに頼まれて、息子の護衛をしていたのかもしれませんね。

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