閉鎖病棟入院のススメ
こんにちは、梅雨が開けて気分を持ち直してきたAさんです。
メンタル不安定な方に限らず、多くの人が気圧の変化で情緒が乱れてしまうと思うので、そんな時は「ありゃー、まあ低気圧だしねー!」と開き直るくらいがいいと思います。
自分に対しても他者に対しても、「人間は天候の変化には抗えない」というスタンスで生きると、色々なことに寛容になれるのではないでしょうか。
ちなみにAさんは理解はしていても無理です、できません。今のところ。
そんなにできた人間ではありません。こういう考え方も「あん、しょうがないわ、気圧のせいだもの」とできるのが、天気に左右されるこの世界の良いところではないでしょうか。
さて、これまで過去に三つの記事を投稿してきましたが、ここでAさんの精神病などを患っている方についての見解を述べておこうと思います。
と、いうのも、過去の記事でAさんは揶揄するような、いえもっと率直に言うと、思い切り小馬鹿にするような調子で他の患者さんのことを書き連ねています。
しかし、誰でもいつでも精神的な病気になる可能性なんて無限にありますし、ましてや自分でコントロールして病気になった訳ではありません。というか、多くの人が病気になんてなりたくないはずです。
Aさんもそうです。精神科に入院せずに済むのならそのほうが良いのです。
精神科の閉鎖病棟という、行動が限りなく制限された空間に、自分から喜んで入院する人が果たしているでしょうか。病棟の看護師さんもお医者さんも患者の病状を回復させるために手を尽くしてくれています。しかし、あの閉鎖的な空間に長期間いると、「どうして自分はこんな所にいるのだろう、こんなはずじゃなかったのに」という気持ちになっても仕方ないと思うのです。
そうなってきた時、「ここまで限界に至った原因」を他者に(特にAさんのような元気に見える人)必死になって話したくなる理由が痛いくらい分かるのです。
自分をここまで至らしめたのは「◯◯」という病気や「◯◯」という症状が原因なのだ、と叫びたくなる気持ちは、なんらおかしいことではないと思います。
Aさんは今後もちょっと面白おかしく「閉鎖病棟村」などと揶揄するような表現をしてみたりするかと思います。しかし、その根底には「病気になってしまったのだからしょうがない、同じ空間で過ごしているのだから一緒に少しでも良くなれるといいな」という同士意識があることを、ここに明記します。
まあ、病気関係なく「こいつそもそも性格悪いんじゃね?」って人もいます。そういう人については普通に「こいつ嫌なやつだわ〜」って書きます。
もしもこのNOTEがまかり間違ってバズってしまった時のための予防線として、お気持ち表明しておきました。が、上記の想いに嘘偽りはありません。
いつも冗長すぎる前置きで、タイトルに興味を持って記事に飛んでくれた方は「なんなんだよ、このタイトル詐欺」となってしまっているかもしれないです。
ちゃんとタイトルに沿った内容を書いているので安心してください。
Aさんは過去の記事で散々「閉鎖病棟に入院して嫌だったこと」に触れています。人間とは悲しいかな、良い思い出よりも嫌な思い出の方が前に出てくるものなのです。
ちゃんと入院して確実に良かった、助かった、と思えることが沢山あります。それらを以下に綴っていきますね。
・とりあえず自死を企ててもほぼ無理、故に命の保証がされている
入院する精神科病院や病棟の特性にもよりますが、自傷他害ができるようなものは全て没収されます。持っていった荷物を「そんなに調べる?」という位、くまなく捜索されます。洋服のポケットはもちろん、ポーチの中の小さい内ポケット、畳んだパンツもニギニギ触られて危険物を持ち込んでいないか調べられます。(もちろん同性看護師さんがやってくれています)
とりあえず、ガラス製品は全てアウトです。Aさんはいつかの入院の時、ランコムのジェニフィックを基礎化粧品の一つとして使っていたのですが、陶器製なのでもちろん禁止。基本優良患者なAさんですが、「これがないと肌の治安が悪ぐなるんでずうううう!」と反抗しました。もちろん無駄でした。
それから、紐状のもの。少しでも長さがある持ち手のバッグ、スウェットなどのウエストの紐も没収されます。いや、どう考えてもスウェットずり下がってくるわよ!と抗議したくなったのですが、仕方ありません。従いました。
鉛筆削りを没収された時、流石にAさんは「いや、どう考えてもそれじゃあ死ねないわよ!国際線の空港でも没収されないわよ?!」とワナワナしてしまいました。と、いうのも、Aさんは絵を描くのを仕事にもしているし、絵を描くのが癒しなので、カッターを持ち込めない閉鎖病棟で鉛筆削りを没収されるのは困るのです。
「鉛筆が削れないと本当に困るんです」と懇願したら、「ナースステーションで預かるので、看護師が見ている前で削ってもいいですよ!」と言われたのでとりあえず安心しました。
しかし、いざナースステーションで預かってもらっている鉛筆削りを使おうとお願いしたら、「この電動鉛筆削りでやってあげるね!」とゴリゴリに尖らせた鉛筆を渡されました。違う!鉛筆の削り方にも加減があるのだ!!ステッドラーの鉛筆はステッドラーの専用の鉛筆削りで削りたいのだ!!鉛筆削り没収するより、この鋭利に削られた鉛筆の芯の方が危険でしょうが!!と、思いましたが、看護師さんに手間をかけさせたくないので我慢しました。
そんな感じで、「希死念慮が強くて、自分が変な行動を起こさないか不安」という方、あるいはそんな症状の人を支えている方、閉鎖病棟は自死できる確率を究極に減らしている環境なので安心してください。基礎化粧品にこだわりがある方は、抵抗があるかもしれませんが別容器に詰め替えましょう。あとは鉛筆の削り具合にこだわりがある方は、自分好みの削り方にした鉛筆を沢山持参すると良いです。
・生活の全てを丸投げできる
一人暮らしにしろ、家族(あるいはパートナー等)と同居にしろ、自分の身の回りの世話というのは必須ですよね。Aさんは家庭の事情(というか、病気の原因が家庭にある)ので、地元で一人暮らしをしながら仕事をしていました。
こんなアッパラパーな感じが滲み出ていますが、Aさんは実は料理が大好きです。家事も苦手ではない、どちらかというと好きな方。インテリアにも凝るタイプ。なんなら食器とかカトラリー、テーブルコーディネイトも大好き。
しかし、メンタルの崩壊というのはなんとも怖いもので、普通にできていたことが全くできなくなる。Aさんは毎日何品も料理を作って、会社にお弁当を持っていっていました。しかし、なぜそんな高度なことができていたのか不思議なくらい、やる気が起きなくなります。なんとかコンビニに行き、パックご飯を買い、めんつゆをかけて食べるという、限界メシでカロリーを摂取するようになりました。
Aさんは元々お風呂に入るのが大好きで、髪の毛のケアやボディケア、お風呂上がりのケアをするのが癒しの時間だった。しかし、メンタルを崩すとお風呂に毎日入るということが、富士山登頂するくらいに難易度が高くなる。真っ裸になってお風呂のドアを開けた瞬間、「あ、無理、今日も無理、やっぱやめよう」となる。そこまで来たらお風呂に入ればいいのに。そうこうしているうちに、一週間が過ぎて、髪の毛がベタベタを通り越してサラサラになる。三日目位までは髪の毛ベタベタで気持ち悪いのだが、自浄作用が働くのだろうか。一週間を超えるとなぜか髪の毛が綺麗になるのだ。人体の不思議だ。
最悪、家事はしなくてもなんとか生きていける。お風呂もまあ、上記のようになんとかなる。食事もまあ、なんかカロリーが摂取できているならいいだろう。
しかし、仕事に行く気力がなくなると大変なことになる。Aさんは超絶ブラックな会社に勤めていたので、病気休暇などという概念はなかった。社長は昭和の人もビックリな根性論を空高く掲げていた人なので、実はAさんは入院中も適当な理由で外出許可を取り、主治医に内緒で会社に出社していた。因みに出社できても数時間だったので、賃金は発生しない、タダ働きであった。
大幅に脱線してしまったが、普通の会社であれば診断書なりを提出すればお給料も保証されると思う。つまり、仕事に行けなくなっても大丈夫なのだ。
その上、バランスの良い食事が三食きっちり出てくる。シーツは定期的に変えられ、病衣も常に清潔なものが支給される。自力で洗濯が困難な場合は、格安でクリーニングしてくれるサービスもある。何より、お風呂の時間になると、優しい看護助手さんが「Aさーん、お風呂の時間だよ〜」と自室のベッドまで迎えに来てくれるのだ。「今日は入れない、無理だよう」と歳下であろう看護助手さんに甘えてみると、「昨日も入ってないでしょ〜、ほら行くよ〜」と手を繋いで浴室まで連れていってくれる。
他にも作業療法で物作りや運動ができたりする。これまた優しい作業療法士さんや運動療法士さんが丁寧に物作り作業や運動に付き添ってくれるのだ。こんな天国のような空間があるだろうか。
規則正しい生活が送れ、バランス良い食事が獲れる。更にはお風呂まで導いてくれる病院スタッフの皆さん。そのうえ、専門職のスタッフの方に運動も指南してもらえる。こんなの、大リーグの大物野球選手並みの待遇ではないか。
ということで、「もう限界。自分の身の回りのことができなくて苦しい」という方も安心してほしい。ものすごく健康的で丁寧な生活を送ることができます。
・究極のデジタルデトックス
これは人によってはデメリットになるかもしれませんが、閉鎖病棟というのは基本的に携帯電話などの通信機器は使用禁止。病院や病棟によってはナースステーションに預けなければいけません。もちろん、ipadやパソコンなども禁止です。
メンタルが悪化する理由の一つとして、不意に目に入ってくる情報に心乱されることだと思うのです。SNSで流れてくるネガティブな内容をはじめ、インターネットニュースなど、こちらが望んだ訳ではないのに急に目に入ってきたりしますよね。LINEを開いたら、上部にあまり見たくないニュースの見出しとリンクがあったり、天気を調べたら広告に変な漫画のバナーが出現したり。
Aさんが入院していた病院では、基本的に外部との連絡手段は公衆電話のみでした。これがまあ大変で、入院前に「テレフォンカードをご用意ください」と言われたのですが、テレフォンカードなんてまあ手に入らない。病院近くの金券ショップを訪れてみるも「いやあ、もうテレフォンカードは扱っていなく……」と言われ、途方に暮れていたのですが、祖父がテレフォンカードを大量に所有していたのでなんとかなりました。(Aさんはあの金券ショップでテレフォンカードを扱ったらものすごく売れると思い、店員さんに伝えようと思ったが怪しすぎるのでやめておいた)
因みにこちらから相手に電話をかけることはできても、相手からの電話を受けることはできません。その上、公衆電話からだと非通知設定になるので、事前に伝えていた人にしか電話を取ってもらえないという難儀な問題がありました。
それでも、一日に決まった時間、30分だけですが、面会室で通話以外の操作をすることは可能でした。
「今日何時何分ごろに公衆電話から連絡するね」とメッセージを送信するという、携帯電話普及前に恋人の実家に電話すべく根回しをする思春期の高校生みたいな行動です。あ、30分以内に返信がないと電話しても無駄になることが多かったです。
なんだかメリットを書いていたつもりが、デメリットにすり替わっていました。しかし逆の発想をしてみると、連絡を取りたくない相手や、もうLINEとかInstagramとかXとか、人とコミュニケーション取るの疲れたわよ……という人にとっては最適なのではないでしょうか。
Aさんは仕事のクライアントの男性にものすごくしつこく言い寄られていた時、LINEがピコンピコンなるたびに過呼吸を起こしていました。なぜ返信をしていないのに追撃してくるの?!と途方に暮れていましたが、入院したことで携帯電話を一日一回しか触らなくなったので気に病むことが少なくなりました。
「Aさん、僕のLINE見てます?返事待ってるんですけど」と、メッセージが来た時は泣きながら看護師さんに相談しました。
「入院中だから携帯見れないって送りな!」という的確すぎる助言。あ、そうよね、とすぐに助言通りに返信。それからは未読スルーしても気にならなくなりました。「入院って大丈夫ですか?!お見舞いに行きたいです」と更に追撃されましたが、携帯見られない状況って伝えたんだから黙るべきだわ、私は悪くないわ、と思えるようになりました。
何にそんなに怯えていたのか、今になってみたらよく分からない。今なら即座にブロックします。クライアントだから無碍にできない?知らんがな、LINEなんてプライベートなツールじゃなく、代表メールに用件書いて送ってこい。
しかし、しょうがないのです。何度も書いていますがメンタルが極限までやられてしまうと、あらゆる事柄に対応する能力が著しく低下するのです。低下するというか、全く対応できなくなります。
何が正解なのか、何が間違いなのか分からない、ここはどこ?私は誰?空ってどうして青いの?あの天井のシミが人の顔に見えるわね……いえ!違うわ!冨江?!死んだはずの冨江が蘇っている……?!(ホラー漫画家の伊藤潤二先生の『冨江』を読んでみてください)
と、まあ、こんな調子で狂っていきます。
そんな狂ったメンタルを、看護師や看護助手さんが「Aさん、気にしすぎだよ〜。今日は携帯電話みるのやめときな〜」と現実世界に引き戻してくれます。
因みにAさんにとって携帯電話を使わなくなった最大のメリットは、目の下のクマが薄くなったことです。パソコンも触っていない、携帯電話も触っていない、ブルーライトによる肌の老化がおきない!!
ブルーライトを発する通信機器から距離を置くことは、メンタルの安定とお肌の調子を良くさせる、素晴らしい効果がありました。
思い返してみたら閉鎖病棟に入院して、よかったなと思うことが沢山出てきましたが、今回は長くなってきたのでここらへんで締めくくりたいと思います。
とりあえず、本当にメンタルがやばい、何をしでかすか分からない、疲れ切っているから充分な休息が欲しい。そんな時は抵抗があるかもしれませんが、精神科に入院するというのも一つの手段ですよ。
Aさんは普通に暮らしている今、過去に閉鎖病棟に入院していたことを隠していないのですが、人にサラッと言うと「誰にも言わないから安心してね」や「それ、言ってもいいやつ……?」と困惑されます。
しかし、こちとら心が複雑骨折してる状態だったから入院したわけで、精神的な病気も身体に関わる病気も関係ないでしょ!と考えています。変な目で見るな、コンチクショー!
今でこそこんな風に堂々と言えるようになりましたが、昔は精神科に通院していること自体も入院歴があることもひた隠しにしていました。自分の取り巻く環境にもよりますが、別に隠さなくてもいいんじゃないかなあと思うのです。というか、隠さなくてもいいような世の中になって欲しい、と切に願います。
それでは次回はAさんがなぜメンタル崩壊するまで追い詰められるようになったか、パンドラの匣を開けてみようじゃないですか。ものすごく重い内容になると思うので、投稿する際は注意書き等をして、サムネイルを深刻な感じのデザインにしますね!それでは次回!