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【四十肩】痛み始めの解決法/重症な隠れた病気【腱板損傷】

「こちらの研究(*1)では、腱板断裂や石灰などがないけれど、肩の痛みがある患者さんの首のレントゲンを調べています。」

今回は肩が痛いけど、腕が上がる‥‥がテーマです。
五十肩、腱板損傷も、さらに首の問題も出てきます!

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。


はじめに、いただいたコメントをご紹介します。

2ヶ月前に腱板部分断裂していると言われました。
1ヶ月前から、理学療法士さんに週2回リハビリしてもらってます。
腕は上がるようになりましたが、最近は可動域を広げるためなのか、かなりきついリハビリになってきました。
その後、上腕二頭筋が痛みますが断ったほうがいいでしょうか?

YouTubeコメント欄より

腱板部分断裂になってリハビリを頑張った結果、腕が上がるようになったということですね。
素晴らしいですよね。
ただ、さらにリハビリ強度が上がって心配ということですが、これは正しい妥当な心配だと思います。
そこで考えるべきことも、今回の記事で紹介します。

腕は上がるけど痛い場合は!?


実際、あなたはこんな状態になったことはありませんか?
「腕は上がるには上がるけれど、痛いんだよなぁ・・」という状態。

こんな時に肩の診療にモチベーションが低い整形外科医だと
「ああ、腕が挙げられるようなら大丈夫なので湿布出しておくね」
という残念なパターンになりがちです。

残念なパターンと言っても、1-2週間のうちに痛みがなくなるなら、その医師の見立ては正解だったとも言えます。

反対に本当は1-2週間のうちに良くなるのに、リスクのある治療をしてしまう場合です。例えば極端な話ですと、手術をしてしまったら最悪ですよね。

ですから「湿布」というものが悪いわけではないのです。
常に正解は「ケースバイケース」だと言えますが、患者さんに不信感を抱かせてはいけません。

今回は「腕は上がるけれど、肩が痛いケースで考えるべき病気・ケガ・状態」を意外な順でTOP3としてランキング形式で解説します。
では早速行きましょう。

第3位|比較的軽症な四十肩・五十肩

まず考えるのは「四十肩・五十肩」です。
多くの一般の方がイメージされる四十肩・五十肩は「痛いけれど腕は上がるし・・そんなに困らない」のような感じかもしれません。
しかし、日頃より五十肩の症状が重い患者さんに接している私からすると、
この症状は、比較的軽度な四十肩・五十肩です。

関節鏡という内視鏡手術が必要になる「凍結肩」と呼ばれる状態は、肩が上がりません。
そのような意味では、四十肩・五十肩の症状が重症の場合は「凍結肩」、軽症の場合が「肩関節周囲炎」という病名でもいいのかもしれません。

ふんぞり男「待て待て!いろんな病名が出てきすぎて混乱してきたぞ」
少し解説を加えますね。

癒着性肩関節包炎

「凍結肩」というのは、その名の通り凍ってしまった肩という比喩表現になります。
実際に起こっているのは「癒着性肩関節包炎」という病名が一番近いです。

肩関節を取り囲む「関節包」という膜が炎症を起こした結果、周りと癒着しながら厚く固くなってしまい、凍結したかのように動かなくなる状態です。

それに対して、関節包よりも少し外側の周りに炎症を起こす病気を「肩関節周囲炎」と考えると、シンプルに理解できるのではないでしょうか。

実際そこまで考えて言葉の使い分けをしている医師は少ないです。
しかし「肩専門の肩マニア」というくらいに、肩の治療をおこなったり論文を読みまくっている私は、引き続き皆さんに情報をお伝えしていきたいと思っております。少し話が逸れました。

肩関節周囲炎

腕が上がるけれど肩が痛いという場合はどちらかと言うと「肩関節周囲炎」です。

ふんぞり男「ほぉ、じゃあ、その肩関節周囲炎とやらはどうしたらいいんだ?」

解決策ですよね。
本当のところ難しいのですが、シンプルに考えてほしい面もあります。
四十肩・五十肩と聞くと、多くの患者さんは「放っておけば、いずれ治る」というイメージを持っておられます。
もし、そのイメージ通りの状態の場合は、比較的軽症な四十肩・五十肩です。

放っておくべきかどうかは別として、そこまで大きな治療は必要ないかもしれません。
冒頭でお話した「湿布」による治療も選択肢に入ります。

しかし「腕は上がるけど肩が痛い」の痛み具合は人それぞれですよね。
上がるけれど、激痛の人もいると思います。
「肩関節周囲炎」というのは、肩関節の周りの炎症というザックリとした病名です。しかし、肩関節の周りといっても、以下のような多くの部位があります。
上腕二頭筋長頭腱
腱板疎部
腱板
肩峰下滑液包
烏口下滑液包
肩甲下滑液包など・・

ふんぞり男「うわ!一気に意味不明になった!」

ここが本当に難しいところです。
どこに炎症のメインがあるかをきちんと判定しなければ、ピンポイントの良い治療はできないです。

例えば、症状が強い場合には注射なども考えたいところですが、このピンポイントの診断がついていなければザックリした注射となり、本当の炎症部位に注射薬が届かないという残念な結果になってしまいます。

ふんぞり男「なるほどな。。そこは整形外科医の腕の見せ所というわけか」

そういうことですね。
なにか患者さん自身がセルフケアで注意すべきことや対策はないのか?と言うと、まずはその「痛みが出る動作」を徹底して避けるということです。

なぜなら先ほどから言っているとおり、肩関節周囲炎では肩の回りのどこかが炎症を起こしていて、その炎症自体が痛みの原因です。
そのため、痛みを感じる動作は、炎症部位に刺激を加えていることになります。
その結果、炎症はますます悪くなって周りに波及していき、さらに重症の凍結肩になってしまうかもしれません。
そうならないように「痛いことはしない」という当たり前のことが、非常に重要です。

その上で、腕は上がるとしても気にしてほしいのは「内旋」と「外旋」の2つの動作になります。

内旋

外旋

この可動域の中で動かせる範囲が、痛くない方の腕と同じ範囲で動けばいいのですが、狭くなっているようであれば、無理のない範囲でストレッチをしていきたいですね。

肩関節周囲炎は、徐々に固くなって凍結肩に進展することがありますので要注意です。

四十肩・五十肩の一番簡単なエクササイズとして、この内旋と外旋を活かした「うちわあおぎ」というものを紹介しています。

この動画もぜひご覧ください。

第2位|腱板損傷

ふんぞり男「なに!?この前、腕が上がるから腱板は大丈夫だねって整形外科の医者に言われたぞ」

そういう整形外科医も少なくないですが、それは間違いです。
腕が上がる「腱板断裂」や「腱板損傷」は、決して珍しくありません。

むしろ、腕が上がらず完全に凍結肩のようになっていたら「十中八九、五十肩の重症型である凍結肩ですね」とお伝えしますし、腕は上がるけれど痛いとなると「五十肩なら軽症ですが、腱板が大丈夫か気になりますね」とお伝えします。

ふんぞり男「腱板っつうのは、筋肉のスジなんだろう?なんで腕が上がるんだ」

勉強していますね。
スジである腱板は、面積が広く骨に付着しています。
その一部に穴があいてしまうのが「腱板断裂」です。
その穴以外の場所はまだスジがくっ付いていて、働いてくれています。

反対に穴が大きすぎて、ほとんどくっ付いている場所がなくなってしまうと、いよいよ腕が上がらないという状況が起こります。
ですから、そこまでの重症でない限り腱板断裂でも腕は上がったりするわけです。
ふんぞり男「なるほどね。じゃあ、腱板断裂の対策はどうすりゃいい」

この再生リストから気になる動画を是非ご覧ください。

ここでお話しすると、ものすごい量になってしまうため、ここでは重要なポイントだけお伝えいたします。

痛いけど腕が上がる「腱板損傷」だった場合に大切にしたいポイントは、
ふんぞり男さんが言われた「腕が上がるなら腱板は大丈夫だね」っていう謎のアドバイスがカギですね。

腱板損傷という診断がついたとしても
「腕が上がってるなら大丈夫だから、上がらなくなったらまた来てね」
という整形外科医がいます。

しかし、上がらなくなってしまった頃には腱板断裂が重症化してしまっていて、修復が厳しくなってしまいます。
そのため、腱板損傷は「自然に治ることは滅多にないこと」を念頭に手術を考えるか、手術をしないなら必要な定期通院の形を考えることが重要です。
少なくとも「腕が上がらなくなったら」では、あまりにザックリし過ぎです。

むしろ「少しでも痛みが増したら」や「少しでも力が入りにくくなったら」など、小さな変化で、また診察をしてもらうような形が望ましいと思います。

第1位|首の神経の問題です。

神経は脳から始まり、首の脊髄神経から枝分かれして肩を通ります。
首を通る神経が、最初に首から分岐する辺りにヘルニアがあったり、骨や靭帯で神経が圧迫されてしまった場合、肩の痛みやしびれがでます。

これを病名では「頸椎椎間板ヘルニア」や「頚椎症性神経根症」と言います。
首のどの高さに問題があるかによって、肩に症状が出る場合と腕や手などに出る場合があります。
支配する神経によって症状が変わりますので、これも念頭に入れたいですね。

こちらの研究(*1)では腱板断裂や石灰などがないけれど、肩の痛みがある患者さんの首のレントゲンを調べています。
肩の症状に関連しやすい第5・第6頚椎レベルでの脊柱管が、肩の痛みがある患者さんでは狭いことを示しました。
「脊柱管」とは神経の通り道のことで、ここが狭くなると神経が圧迫されて症状を出しやすくなります。
基本的に首の問題があるかもしれないと考えたら、首のMRIで神経の圧迫がないかをチェックします。

治療としては、まずは「神経障害性疼痛治療薬」と呼ばれる神経の痛み止めを使うことが多いです。
もちろん重症度によっては、手術をすることもあります。

ただ注意してほしいのが、患者さんが「肩が痛い」と言うと首(頚椎)のレントゲンだけ撮って「首のせいだね」と大して診察もせずに、結論づける整形外科医がいることです。

診察すれば一瞬で「少なくとも首ではなく肩が悪い」と言える状態の患者さんにも、前の整形外科医に「首のせい」と言われて、首の牽引治療を受けていたという話を本当によく聞きます。
そういう初歩中の初歩の間違いは「何をしたときに肩が痛いのか?」という視点を持つことで、誰でもかなりの確率で防げます。

何をしたときに肩が痛いのか?

この「何をしたときに肩が痛いのか?」という視点はとても大事です。

第3位と2位は基本「肩関節を動かした時」に痛みます。
その痛い動かし方にはバリエーションがあります。
第1位の首のヘルニアや頸椎症性神経根症であれば「首を動かした時」に痛みが出ます。

しかし、肩を動かしても首を動かしても痛みは変わらず、何もしていなくてもずっと痛いという状態もあります。
何もしていなくてもずっと痛いというだけならTOP3のどれでもあり得ます。

しかし、その上で肩や首も動かしても痛みが増えないという状態では、いよいよ首も肩も悪くないのではないかと疑います。
例えば、怖い話ですが「心筋梗塞で肩が痛くなることもある」という有名な話もありますよね。

内臓の問題であれば、命に関わることもあるため、一大事です。
この視点で「あれ?おかしいな」と思ったら、内科の先生にご相談くださいね。

まとめ|本日のひとこと

「腕が上がるけど、肩が痛いときには、何をして痛いかを丁寧にチェックしよう!」

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参考論文

(*1) K Mimori, et al. J Shoulder Elbow Surg. 1999 Relation between the painful shoulder and the cervical spine with narrow canal in patients without obvious radiculopathy

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