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Archipelago(多島海)

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詩・散文詩の倉庫01
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2022年5月の記事一覧

三月の紫陽花

遠く離れた東京の女子大に 君は入学することになった レストランでお祝いと送別の 食事会を終えたのは昨日のこと 今日 ホームセンターに行くと まだ三月だというのに 初々しいピンクの紫陽花が 園芸コーナーに並んでいた 公園の樹々にイルミネーションが灯るまで 君はピンクのヘルメットを被って 自転車や一輪車に乗る練習をした   君にはお父さんがいないから   私が練習に付き合ってあげたね 小学校の入学式はまだ先なのに 君はピンクのランドセルをしょって 大はしゃぎで家の中を歩き

けんちゃっきいブルーグラス

ギターを爪弾いていると 風が懐かしい草のメロディと 幼い日の記憶を運んで来る     けんちゃっきいを   植えたけえの   蜜柑畑の土手に並ぶ緑の苗を 指差しながらお祖母ちゃんは言った     水をやってお陽さんが照って   雨も降りゃあ根付いてくれるじゃろう   ケンタッキーブルーグラス やがて豊かな草叢になり 土手の崩落を防いでくれる     のうきょうで仕入れたのを   分けてもろうてきたんよ   お祖母ちゃんが教えてくれたんだ ゴルフ場や駅前広場の平べったい芝生は