【繊細図書室】竜とそばかすの姫
こんにちは。繊細リーマンゆうたろうです。
繊細な働く皆さんが集う、繊細図書室へようこそ。
ここでは適応障害で休職と転職を繰り返す繊細リーマンが、
繊細リーマン&ウーマンの心に響く
そんな本を紹介させていただくシリーズです。
今回は「竜とそばかすの姫」という小説を紹介させてください。
※本書を引用しながらの記事です。
ネタバレが気になる方はご遠慮ください。
information(本と著者について)
<内容 Amazonから引用>
高知の田舎町で父と暮らす17歳の高校生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くし、現実世界では心を閉ざしていた。ある日、親友に誘われたことをきっかけに“もうひとつの現実”と呼ばれるインターネット上の超巨大仮想空間〈U〉に「ベル」というアバターで参加することに。ずっと秘めてきた比類なき歌声で瞬く間に世界中から注目される歌姫となったすず(ベル)は、〈U〉の中で「竜」と呼ばれ恐れられている謎の存在に出逢う。凶暴ながらもどこか孤独な竜との出逢いをきっかけに、すずは自分の中にある迷いや弱さと向き合っていく――。歌が導く奇跡の出会いと成長の物語!
<著者紹介 Amazonから引用>
細田 守:1967年富山県生まれ。91年東映動画(現・東映アニメーション)入社。アニメーターおよび演出として活躍後、フリーに。『時をかける少女』(06年)、『サマーウォーズ』(09年)を監督し、国内外で注目を集める。11年には自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。監督・脚本・原作を務めた『おおかみこどもの雨と雪』(12年)、『バケモノの子』(15年)、『未来のミライ』(18年)はともに大ヒットとなった。
細田さんの作品が好きです。繊細リーマンなおっさんでも、その世界観に浸ったあとは、必ず優しい気持ちにしてくれるから!
サマーウォーズ、おおかみこどもの雨と雪、バケモノの子などなど、映画を何回も繰り返し見まくって、細田さんの作品にはどっぷり浸からせてもらっています。
しかしっ!竜とそばかすの姫においては、映画を・・・見逃してしまっています。
映画の広告をよく見かけてはいて気になっていたものの、子供が生まれたばかり。なので、映画館は諦めて、この物語には先に本から入ることになりました。
結果、先に本で読んでよかったと思う。文章ってやっぱり良いですね。
繊細な主人公、登場人物の苦悩や感情を「読める」って読書ならではの体験です。
そして何より、この作品、良かった。映像でも見たい。
感動が何倍にも増しそうだぜ。
そして、小説先読みの特権「あ~、ここね~。ここはさー、小説ではこうなっていたんだけどね」とか言ってドヤ顔をしたい。(うざい)
「美女と野獣」をモチーフに仮想世界を描く
ラジオや各種メディアでも公表されていることですが、この物語のモチーフは美女と野獣。
▼TOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」。9月14日(火)の放送の内容
細田:「竜とそばかすの姫」は、「美女と野獣」をベースに作っているところがあります。「美女と野獣」といえば、ディズニー版が広く知られていると思います。ミュージカル仕立てなので、歌がポイントになっているんですよね。
※Yahoo!ニュースより抜粋
主人公のアバター名「ベル」、野獣のような「竜」、ダンスホールやバラが出て来たりと、所々で美女と野獣の雰囲気を感じます。
そのおかげもあって、自然とファンタジー感に浸ることが出来ます。
言うまでもなく、あくまで「モチーフ」。なのでもちろん、細田守さんっぽい、繊細で切なく、グッと熱くもさせてくれるストーリーで文字を読む目が止まりませんでした。
近未来的な世界へのワクワク、季節を懐かしく感じさせてくれる描写、切ない学生時代も想起させる、良い物語です。
繊細な主人公のキーホルダー「ぐっとこらえ丸」
私が好きになる話の共通点「主人公が繊細さん」。この物語もその例に漏れず。
そんな繊細さんの鈴は高知県の生まれ。この地元を紹介する場面が次の通りです。
日照時間は全国でトップクラス。お酒の消費量もトップクラス。そのせいか人柄はあっけらかんとして、気さくで明るいと言われる。でもそんな中にだって、暗い子もいれば、いつも下を向いている子だっている。
そのひとりが、私だ。
※「竜とそばかすの姫」文庫本P18 引用
世界を斜め下から穿って見てそうで、良いです。よかったっす。同じ感じで安心しちゃうっす。
そしてそんな鈴がスクールバッグに付けているキーホルダーが、「ぐっとこらえ丸」。
私のスクールバッグに付いているのは、「ぐっとこらえ丸」の安っぽいプラスチック製プレートだった。「ぐっとこらえ丸」とは、壁に手をついて辛いことに堪える、たまご型のキャラクターだ。
※「竜とそばかすの姫」文庫本P44 引用
なんか繊細さんの象徴のような神々しさまで感じてしまいます。
欲しいです。元気と笑顔を貰えそうです。依存心くすぐられます。
と思ったら売ってました。
このボールペンで書きました感。で、こらえすぎて顔がギュッとなっとる。
しかもこのぐっとこらえ丸さん、作中でYoutubeチャンネルを持っています。YouTuberです。
そこで荒らしに対して、「アホ!バカ!出てけ!」と言いながらドロップキックを何度もかましちゃうのが超絶キュート。
全然こらえられてないよ。ぐっとこらえ丸。
リアルと仮想世界でのギャップ
自分に自信のない主人公「鈴」は仮想世界の中で、アバターとしてであれば自由に歌い、自分を表現することが出来ます。
その歌が拡散し、世界中からフォロワーがつく超有名人になるのですが、現実では人前で歌うことが出来ません。
条件が揃えば自分を発散することができる、繊細さんの極みである鈴さん。
そして、歌があまりにも魅力的だったばかりに、リアルと仮想世界でのギャップが生まれていきます。
そのギャップに鈴は苦しんでいくわけですが、こういうことって私たちの普段の生活にもありますよね。
例えば仕事場ではテキパキしているけど、家族の前だと実はだらしない。とか。
こっちのグループだと明るいキャラだけど、こっちのグループにいると冷静なキャラになっちゃうよね。とかとか。
どちらも自分なのですが、切り離して生きていると「ギャップ」として捉えてしまい、どこかで必ず苦しみます。
繊細すぎて適応障害で何度も休職した私が断言しますが、環境ごとの自分のふるまいの違いを「ギャップ」と捉えている間は、ひたすら辛い。絶対に辛い。
この世に絶対なんかないけど、これは絶対。
自己矛盾に陥っているように錯覚し、自分のややこしさを増長させ、身動きが出来なくなる日がやってきます。
いつかはギャップという感じ方を捨てて、自分と向き合わないといけない日がやってきます。
そんなギャップをこの物語では主人公の鈴が、色んな人の助けを借りながら、乗り越えていきます。その瞬間の感動を文章で追いかけていく。
もう、グッときます。
もう一人の自分を生きた先の「本当の自分」
仮想世界「U」を通じて、もう一人の自分を生きることが出来るようになった鈴。
この仮想世界では、自分の中に抑圧されていた能力があれば、それを引き出してくれもします。
現実では歌えなくても、力が眠っていたからこそ、仮想世界では魅力的な歌を歌える。
鈴にとっての「歌う」とは、承認であり、愛情を受け取るためのツールでした。
現実の世界でその目的を失ってしまっている鈴は、仮想世界でなけれな歌うことが出来ずにストーリーは進みます。
ここは現実の世界とは違うと認識し、もう一人の自分を生きるのだ、と捉えることで本来の力である「歌」を取り戻せました。
▼「U」登録時のアナウンス
《「U」はもうひとつの現実》
《Asはもう一人のあなた》
《ここにはすべてがあります》
《現実はやり直せない。でも「U」ならやり直せる。》
《さあ、もうひとりのあなたを生きよう》
《さあ、新しい人生を始めよう》
《さあ、世界を変えよう》
※「竜とそばかすの姫」文庫本P7 引用
もし、自分が仮想世界「U」に行けたらどうするだろう。もう一人の自分を生きるってどんな感覚だろう。
そんな想像を巡らせながら、魅力的なこの物語の世界にはまっていきます。
鈴はこの仮想世界で、眠っていた歌う能力を存分に発揮するのですが、そこには個人的な思いを歌に込めます。
他人から求められることを研究し尽くして作り上げた歌ではなく、あくまで自分のユニークな部分と向き合って生まれた歌で、世界中を魅了します。
自分を知り尽くした先に、他人からの共感や称賛を得られたんですね。
そこが良い。
自分軸探しの旅の途中、他人軸歴39年の繊細リーマンはそこにたいへん感動しました。
仮想世界で見つかる自分もある
「U」ほどではないけど、このnoteもちょっとした仮想世界かなって、この記事を書きながら思っています。
普段は誰かに話したこともないような思いを、これまで結構書かせて貰いました。こっそり読んでる妻もびっくりするほど。
リアルでは醜すぎて見せられない面や、恥ずかしくてとても話せないことも、ここでなら書けちゃってます。
ここでの自分が作られていくことで、少しずつリアルの自分にも良い影響が出ている気もしています。
そこでつくづく思うのですが、
感情とは人に見せるためのもの。
涙や怒りは他人に見せるためのもの。
繊細な私はリアルでそれらに蓋をしすぎてしまいます。
でもここなら蓋なんか無かったよ、と思えるほどなんでも吐き出せる。
そうすると現実でも、ただただ自分の思いを知ってもらう、という喜びを最近実感し始めました。
このnoteで作り上げた自分と現実で生きる自分、どちらも自分。
歌で世界を沸かせた鈴のように、私も誰かのために自分を使いたい。
そんなふうに思わせてくれた「竜とそばかすの姫」。
一瞬で引き込まれて、その世界から出たくない!というくらいハマります。
是非読んでみてください。
以上、最後まで目を通していただき、ありがとうございます。
これを読んでいただいたあなたを、前向きとまではいかなくても、横向きくらいにはしたい。
繊細リーマンのゆうたろうでした。
ではまた!