帰ってきた冬
朝、カーテンを開けて私は自分の目を疑った。
何だか白いものがちらちら待っている。これは雪だろうか。
こんな南の果てで雪?
できれば見間違いか夢であってほしい。
長袖の服なんか持っていない。正しくは、持ってはいたが捨ててしまった。
ここに越して来た時に「要らないよ」と笑われたからだ。
同時に「冬はどっかに行ってしまった」とも言われた。
ここは南の果て。
昔は冬もあったし、雪も降ったらしいが、そんな頃のことを覚えているのは長老ぐらいだった。
同様に冬の過ごし方を知っているのも長老ぐらいだろう。
もちろん皆、知識としては知ってはいる。
長袖を着て、コートを着て、滑りやすくなるから慎重に歩くこと。
現実的には、何も知らない。
長袖を着たらどれくらいの寒さが凌げるのか、コートはもこもこしたやつの方が良いのか。
滑って転ぶ経験なんてしたことがないので想像もつかない。
実際、外に出てみたらあまりの寒さに心臓が2割くらい小さくなった気がした。
慌てて家に戻ろうとして滑って転びかけた。散々だ。
ご近所さんも皆同じようなことをしていた。
何の前触れもなく冬が帰ってきた。
だれか冬の過ごし方を教えてください。