バンドマンがラグビーを始め、2年間で体重を30kg増やした話
現在、都内の大学でラグビー部に所属している者です。
今回このnoteでは、小学校から高校までバンドマンで体重が49kgしかなかった僕が、ラグビー部に入部し無理矢理体重を80kg近くまで増やした「話」をしたいと思います。
増やした「ノウハウ」という表現ではないのは、別に僕が取り組んだことを偉そうに教えようっていう訳ではないからです。そこに再現性があるかわかりませんし、かなり個人的な事情による術が多いです。
実際、〇〇kg痩せる!理想の体を手に入れろ!腹筋を割って女を抱け!(最悪ですね)といった謳い文句で色々なノウハウを教えているサイトはいくらでもあります。ですのでここでは専門的な知識やトレーニングではなく、僕が体重を増やすために取り組んだ具体的なこと、及びその過程で生まれた考え方、継続のための手段等を書いていきます
(現在の写真です。ぽよぽよです。サムネイルの写真の二年後です)
体重を増やすきっかけ
僕は4月に大学入学とほぼ同時にラグビー部に入部しました。どうして初心者でラグビーを始めのかはまた別の機会にでも書きたいと思います。
ご存知の通り、ラグビー選手は皆ガタイがいいです。技術的な要素も勿論必要ですが、体格の良さというのは人とぶつかったりすることが多いラグビーにおいて絶対的な強さになります。
入部当初はキャッチボールや擬似ラグビーばかりで接触プレーはなく、特に体重が軽いことに特に危機感をもっていませんでした。何なら体重が軽く平均より少し足の早かった僕は自分にラグビーは向いているとまで考えていました。
しかし、本格的な練習が始まると、その考えはすぐに変わりました。死ぬ。心からそう思いました。
自分より文字通り体重が二倍ある、100kgを超えた選手とぶつかりあいをした時、僕は大きく後ろに倒れ後頭部を強打しました。幸いヘッドキャップをつけていたため大事には至りませんでしたが、ラグビーに対する恐怖が僕の中に植えつけらました。
足の速さを生かして、体は小さいのにトライを量産する選手、そんなものは幻想に過ぎなかったのです。ラグビー日本代表福岡堅樹さんは、いかにも「体は小さいけど俊足の選手」に見えますが、周りが異常に大きいだけで、彼も176cm/85kgあります。
※写真左から2番目が福岡選手。福岡堅樹公式Twitterより
https://twitter.com/kenki11/status/1160127063791005701?s=20
100kgとまではいかなくとも、部に僕より体重の軽い選手はいません。接触プレーがある練習のたびに僕の体の傷は増えていきました。
脳震盪(のうしんとう)になりかけたり、衝撃で舌を噛み切りそうになったり、足首をひねって常に足が痛かったり、耳を怪我して今でもイヤホンが入りづらかったり、と怪我は数えきれません。
僕の過酷な増量生活は、レギュラーとして活躍しよう、というよりはそもそも安全にプレーするために始まりました。
49kg→55kgまで
写真右が僕。高校卒業頃の写真。体重49kgほど。
タイトルにも書いた通り僕はバンドマンでした。小学5年生でドラムを始め、中学では吹奏楽部、高校では軽音部(バレー部も入ってましたが)に所属、高校卒業時で体重は171cm/49kg。かなりの細身です。
ここまで痩せていた理由の一つに、僕が軽度の味覚障害持ちで食に対してあまり関心がなかったことがあげられます。少し寝坊して朝ごはんを食べない、昼はあまりお腹が空かず、夜お腹が空いた状態でも寝れる、といった形で1日何も食べない、ということがざらにありました。
そのため、まず最初に取り組んだことは3食食べる、ということです。そんなの当たり前だ、という人が殆どだと思います、しかし僕は大学で一人暮らしを開始。ただでさえ食に関心がないのに自炊をしなければなならないことが苦痛で仕方ありませんでした。生まれてこの方、ちゃんとした料理なんて作ったことがありませんもの。
(自炊開始から1ヶ月経った後の食事。)
自炊の時に役に立ったのが、冷凍うどんと炊き込みご飯の素です。近所の業務スーパーに自転車で買い物に行き、とりあえずその二つを大量に買う。
・冷凍うどんは常にストックし、レンジでチンしてめんつゆに浸すだけ。
・炊き込みご飯の素は炊飯器にいれて米を炊き、塩をまぶすだけ。
1日3食、このどちらかを食べるだけです。三食作ることは思ったより楽でした。楽しようと思えばここまで楽できるのに、きちんと料理を作る全国の皆様は本当にすごいです。専業主婦を楽そうだと思っていた自分をタックルしたくなりました。(つまんな!)
今までが酷い食生活だったため、1月間、三食食べることで体重は49kg→55kgほどまで増えました。ここから60kgまでが長かったです。
55kg→60kg 筋トレの開始
(初めて試合に出た時。体重は60kgほど。)
55kgから60kgまで増やす段階で、筋トレを部活の先輩に教えてもらい開始しました。毎日ではなく週に三回でよく、部活である程度強制的にやらなけらばいけなかったこともあり筋トレは継続することができました。
このとき人生で初めてプロテインを買いました。筋トレを学ぶ前は、プロテイン=ボディビルダーが飲む、摂取するだけでムキムキになるやばい粉、という印象が強かったですが全くそんなことなかったです。あれはただのタンパク質です。
筋肉をつけるために1日に摂取しないといけないタンパク質は、普通に食事をするだけではなかなか足りないため、補助としてプロテイン(タンパク質)を飲む、ただそれだけのことでした。
人前でプロテインを飲んでると、「あ、やっぱりそういうの飲むんだw(楽して筋肉をつけたんだね)」と言われるのがたまらなく嫌です。
「じゃあお前何もせずただプロテインだけ飲んでみ。なんも変わらんから。(屁が臭くなりはする)」
と言いたくなります。
流石に毎食冷凍うどんと炊き込みご飯では、いくら味覚がバグってる僕でも飽きてきます。
そこで、
・朝ごはん→卵かけご飯、納豆ご飯などの調理がいらないおかず
・お昼ごはん→学食で大盛りメニュー
・夜ご飯→インスタントラーメンorカップラーメン、残った汁に白米投入
という食生活に切り替えました。
しかし、僕は少食です。朝ごはんもあまり量は食べれないですし、学食の大盛りはそんなに多くない。この生活では少ししか体重が増えませんでした。
そこで、三食+アルファでご飯を食べることにしました。一度に食べれる量が少なくても、トータルでたくさん食べれれば何も問題がないからです。
朝三合お米を炊いて、それをおにぎりにして、上記の三食食べることとは別に1日で食べきる。これにより、三食+1650kal(米1合=550kal)とることができると考えたのです。
しかしこの作戦は失敗に終わりました。なぜならそんなにご飯は食べれないからです。この生活は一週間も続きませんでした。そしてその反動で半年ほどコメを食べると吐いてました。やらなきゃよかった。
結局、三食食べることに加えて、たまに思いつきで何かをたべることを繰り返し、三ヶ月ほどで55kg→60kgに到達しました。
この頃から体の変化が実感できるようになってきました。
60kg→70kg 大学一年生7月→大学二年生11月
この10kgを増やすのに、一年以上費やしました。ここからは付け焼き刃の食事法じゃ増えてくれないゾーンになってきます。
60-63kgぐらいまで、オーストラリアはクイーンズランド州に6週間短期留学に行った時に増えました。
日本にいた頃は大学の小さなジムで筋トレを行っていましたが、留学先で筋トレをするため現地のジムに入会しました。
そこで、僕は人生で初めて、強烈なオージー・マッチョマン(オーストラリア人の筋肉質な男性)を目撃することになります。
確かに部活にはマッチョがいましたが、僕が通ったBrisbaneのJettsジムにいる人は破格のデカさでした。
Australia,BrisbaneのJettsジム
異国人で背も低くヒョロヒョロな僕に、オージー・マッチョマンズは親切に筋トレを教えてくれました。僕が見知らぬトレーニング器具を前に戸惑っていると、よく使い方を見せてくれました。重すぎるダンベルに潰されそうになったとき補助をしてくれました。
彼らのようになりたい。ヒョロヒョロで金髪で、チャラかった自分はカッコ良くもなんともなかった。かっこよさとは、心と体のデカさなんだと、この時気づくことができました。
帰国後もモチベーションは続きました。
9月に初めてラグビーの公式戦に出場した僕はチームに何も貢献できず、もっと体重を増やさないといけないと思うようになりました。
そこで生まれたのが、嗚咽(おえつ)食事法です。嗚咽とは文字通り、「オエっ」としてしまうことです。ですが、実際に吐いてはいません。
人は、たくさん食べると満腹と感じます。
僕は一瞬で満腹になってしまうため、そこからさらにご飯をたべないといけません。
すると拒否反応をおこして嗚咽してしまいます。
しかし、嗚咽をした瞬間に何かを食べると、その時食べたものには嗚咽反応が起きないことに気づきました。
そこで生み出したのが↓
満腹の状態で食べる→嗚咽する→すかさず大量に食べる
→最初の満腹より更に満腹になる(吐いてはいない)
という方法です。これを繰り返せば、本当に胃袋が限界で中身を吐いてしまう直前まで食べることができます。始めた頃は限界を見誤ってせっかく死ぬ気で食べたご飯をよく吐いてしまいましたが、慣れてからは吐く直前までたべることができるようになりました。
食べれる絶対量が増えたので増量のバリエーションも増えます。
・脂肪と炭水化物もはいったプロテイン(ウェイトゲイナー)を朝晩飲む
・お出掛け先で隙を見つけては間食を買って食べる(サラダチキン、焼き鳥、プロテインヨーグルト、巨大プリン等)
・ラーメン屋さんに入ったら必ずラーメン餃子チャーハンセットを注文
・大学ではピーナッツ、煮卵、ふかし芋をジップロックにいれて持ち歩く
・100%のリンゴ・オレンジジュースを飲む(炭水化物摂取)
この食事法を生み出してからはたくさんの量を食べれるようになりましたが、体重をただ脂肪で増やしても意味はありません。使える筋肉を増やすことで体重を増やさなければなりません。
どうしても必要なのは、筋トレの継続です。
筋トレを継続するために欠かせないのが、強烈な自己暗示です。ひたすら、デカイことがこの世で最もすごいことだ、という言説を自分に言い聞かせます。
体重が増えていくにつれ、顔に肉がつき始めます。女友達には「前の方がかっこよかった」としょっちゅう言われ、増量を、筋トレをやめたくなる時が何度もありました。
嗚咽して限界まで食べることも、部活やバイト、授業や課題の忙しい大学生活の合間に、時間を作ってハードな筋トレをすることも、どちらもたまらなく辛いです。そんな苦労をいざ知らず、ヒョロガリサブカルマッシュヘアー草食男子を好きな女性諸君は、「スラッとした男性の方がかっこいい」などとぬかします。
そこできっぱりと言う勇気。
「モテるために筋トレをしてるわけじゃない。人としてかっこよくなるために筋トレをしてるんだ」
と。(そもそも、人の体型にとやかく言うこと自体がナンセンスなのです)
しかし、それでも痩せていた方が良かったと言われると傷つくもの。そんな可愛い可愛い愛しの筋肉ちゃんが罵倒された日に聴く曲は「マッチョ29」の曲。
全員がマッチョで構成された、歌って踊れる筋肉集団です。
出典:マッチョ29公式ブログより
これは彼らの曲の歌詞の一部です。
子供の頃から一目惚れしたあのマッチョ 周りは好きだぜ細マッチョ ああなりたいガチムチに。
鍛え抜くそれが僕の答えだ 筋肉は裏切らないんだ 小さい頃弱い僕を変えたんだ 夢見たあの人は Macho man
溺れたネズミはもがく 無謀と知りながら それしかできないんだと 今を信じた 季節は進んで冬に 水面は凍りつく 昇るため 氷を掴むんだ
これらの曲に何度涙し、救われたことか。
(オージーマッチョマンズ、マッチョ29のおかげで体重は70kgを超えました。写真は65kgほどの時)
70-80kg 大学2年12月〜現在まで
ここまでくると、あとは今まで身に付けたことをひたすら継続するでした。結局、2年間増量を続けて思ったことは、継続が一番大事だということです。ありきたりですが、増量に関しては本当にこの通りだと思います。他の分野なら、才能が努力をカバーすることがあるかもしれませんが、筋トレに関しては継続的な努力以外に道はないと言えます。
しかし、そうはいっても頑張れない時期が僕にもありました。そんなときはペースを落としました。食事を普通の量で3食食べたり、2週間ジムに行かなかったり。サボっても良いんです。完全に辞めることさえしなければ。筋トレはどんなに急ごうとも、結局は長期戦になります。だったら、どんなに遅いペースでも、辞めない限り進歩になります。
また、筋トレをすると、1日を有意義に過ごせた気になれます。誰しも、ベッドの上で1日スマホをいじってしまった、課題が1ページも進まなかった。そんな日があると思います。けれど、そんな日でも筋トレさえしていれば、その日は無駄じゃないと思えるのです。
こうして、3年生の5月、なんとか体重80kgに達することができました。
(はま寿司のエレベーター)
心の底から、筋トレに出会えてよかったと思っています。