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【ロマンティック数学ナイトプライム@数学の先生SPでプレゼンを終えて】

1月13日、ロマンティック数学ナイトプライム@数学の先生スペシャルというイベントで登壇させていただきました。
かねてから「ロマ数でプレゼンしたい!!!!」と思っており、主催のタカタ先生のご厚意もあり、登壇の機会をいただきました。ありがとうございました。
この記事では、「私が伝えたかったこと」を書きます。少し長いですが、適度に読み飛ばしてくれるといいかと思います。

この文章に書かれていること
①私のプレゼン内容
②プレゼンを終えての感想
③伝えたかったけど伝えきれなかったこと

【①プレゼンの内容】

タイトルは「desmosで学ぶ中高数学講座」。
私はこのプレゼンをやると決まったとき、2つの目標と1つの大きな目標を掲げました。
まず2つの目標とは「desmosをみんなに使ってもらうこと」と、「desmosの教育的な価値をみんなに知ってもらうこと」でした。
この2つの目標が達成されることを目指したので、プレゼンのはじめの方で、「desmosを今、使ってみてください。ここからプレゼンは聞かなくても大丈夫です(笑)プレゼンを聞いてもらうことよりも、今、desmosを使ってもらうことのほうが大切だと思うからです」と言いました。
このフレーズが、自分としては最も重要で「渾身の」フレーズでした(笑)
ただ、当日は緊張もしていましたし、時間が長くなってはいけないと思っていたのでサラっと流しました。
そして、1つの大きな目標というのは「数学の美しさを多くの人に知ってもらうこと」です。
この大きな目標を当日には、「私のロマン」という言葉に置き換えて話ました。

私のロマンー「数学の美しさを多くの人に知ってもらう」
2つの目標ー「①desmosを使ってもらう」、「②desmosの教育的価値を知ってもらう」

desmosというのは、「数式をグラフにしてくれるアプリ」のことです。アプリとしてインストールすれば使えますし、ネットがつながっていればアプリがなくてもweb版で使えます。
たくさんある数式描画アプリの中で比較的自由で、初心者に優しいと思って、desmosを授業でよく活用しています。


プレゼンでは3つの問いを投げかけました。この3つの問いというのは、私が実際に授業で生徒に投げかけた問いです。

この3つの問いは私のお気に入りの問いです。一見シンプルですがよくできているなぁと自画自賛しています(笑)

なぜお気に入りかというと、「答えが一つではない」ということと、「創造力が必要」であるということと、「数学の基本知識が必要」だからです。
これらの要素を含む問いを創るのは、結構難しいと思います。特に、数学の先生は「受験数学」とか「合格実績」の圧力がものすごいですから、答えが一つではない問いを創るのには慣れていません。

【問1.】だけ少し解説しようと思います。この問題を解くときに必要な知識は、「直線」、「定義域」、「値域」です。別の視点から考えると「絶対値付き関数」の知識が必要です。さらに別の視点から考えると「原点対称なグラフ、x軸対称なグラフ、y軸対称なグラフ」の知識が必要です。

この図形が描ければゴールですから、どの知識を使ってもいいですし、知識を組み合わせてもいいです。
大きなポイントは、「1つの式で表現するのか」、「2つの式で表現するのか」、「4つの式で表現するのか」ということです。

私は、この問いを「1つの式で表現する」のが一番かっこよくて美しいと思っています。でも、いくつ式を使ってもいいです。たくさんの表現方法があることを知ったうえで、「どのように表すのがエレガントなんだろうか?」と考えてもらえばいいのです。


【desmosがなんでいいのか?】

desmosに限らず、グラフ描画アプリを使うことのメリットは、「視覚的にわかる」ということと「創造的活動になる」という点です。この理由があるから、教育的な価値が高いと思っています。

視覚的にわかるということは非常に大きなメリットです。数学は頭の中だけで完結するものも多いです。ただ、頭の中というのはそれこそ人それぞれです。視覚的な情報がないと、理解に時間がかかる人もたくさんいます。数学が得意になってくると、「数式のみ」で理解できるようになりますが、それまでは「数式」と「視覚(ビジュアル)」を繋ぐような学習が必要です。
数式だけではない、視覚でわかる、ビジュアルで理解できることは、多くの人にとって重要なことだと思います。


教育的な価値について書きます。「創造的活動になる」という1点だけお話しました。
ブルームのタキソノミーを紹介し、創造的活動が重要な理由を説明しました。

ブルームのタキソノミーをザックリ言うと、「認知領域は6つに分類できる」という教育理論です。
認知領域というのは、頭の活動のことです。違う言葉でいうと、「論理、思考する、考える」という能力のことです。

私はdesmosを使うことで、1番上の認知スキルである「創造」を鍛えることができると思っています。もちろん、desmos以外でも創造を鍛える授業はデザインできます。私は、数学の授業ではdesmosを使えば「創造」を鍛える問いを立てやすいということが言いたいのです。

20世紀型の授業と言われてしまう受験数学、暗記数学、講義型の数学は正直いうと私は好きですが(得意ではないですけど)、ブルームのタキソノミーでいうところの3段目の「応用」までしか到達しないと思います。本当は6段目まで行かなくてはいけません。創造的な活動が重要と言われていますし、私自身も「創造」が本当に重要だと実感しています。


さて、今回紹介したdesmosの使い方をyoutube動画で解説しています。まだ動画は少ないですが、少しずつ増やしていきたいと思います。以下にリンクを貼っておきます。



【②プレゼンを終えての感想ー内省、反省、自己評価】 

とにかくこの日はすごく楽しかったです。会場の探求学舎という塾も大好きでしたし、プレゼンも集まる人たちも楽しい人たちばっかりだった。

楽しかったのですが、自分でも不思議なくらい落ち込みました。帰り道、なんだか情けなさというか悔しさ、気の重さがこみあげてきました。
プレゼン出来て良かった。けど、その日の夜はすごく元気がなくなった。とにかく元気がなくなった。

なぜそうなったのか考え、ひとまずまとめておこうと思いました。こうやって書いている今は、すでに元気になっています(笑)

【決めては本田さんの言葉】

本田さんの言葉が私の感情を大きく動かしてくれました。先に言っておきますが本田さんのせいで元気がなくなったわけじゃありません。むしろ本田さんには気持ちを救われました、本当に感謝しています。
ここからは「超わかる!」と「本田さん」について少し長く書いていきます。元気がなくなった理由は後の方で。

本田さんというのは、あの有名youtubeチャンネル「超わかる!授業動画」を創ったyoutuberです。

登録者は現時点で8万人超え。一方私のyoutubeチャンネルは90人くらいです。(笑)
雲泥の差とはまさにこのことですね。そんな本田さんもこの日は登壇者でした。本田さんに会って思わず「写真撮ってください!」とお願いしに行くくらい尊敬していました。2ショットの写真を撮ってもらえました。


この「超わかる!」動画は結構前から見ていて気になっていました。ここでは正直に言いますが、この動画シリーズは最初はあんまり好きではなかったです苦笑。ほんとに怒られそう…だけど、この記事は本気で書いてますので、正直に。

なぜ好きじゃないのかというと、アンチに厳しい感じが私と合わなかったんです。

でも、私の認識はだんだん変わってきました。

【超わかる!が本当にすごいと思ったのはなぜか】

今では、超わかる!は本当に素晴らしいチャンネルだと思います。最近は動画の雰囲気も変わってきて、よりステキな動画をだしていると思います。

あんまり好きじゃなかったけど、いまでは好きです。そう思うようになったのはyoutubeを私も始めたからです。

私は教員をやりながら、片手間でyoutubeを始めました。
youtubeを始めた理由はいろいろありますが、今は書きません(長くなりすぎるので)

youtubeを始めて、そして本田さんが好きになりました。
世の中のyoutuberは本当に尊敬しています。特に教育系youtuberです。
無料で、だれにでも、本気の授業を届けようと頑張っているその気持ちに感激します。

そして、これ、本当に大変なんだと知りました。私の動画のクオリティでも5分の動画をつくるのに1日から2日かかります。だからまとまった休日がないと作成できません。
本当に時間かかるんです。youtubeの動画はものすごく綿密に作りこまれています。テロップひとつとってもすご~~くこだわって作られています。

登録者が1万人を超えるようなチャンネルは、本当にすごいです。適当なテロップなんて使いません。全部、細かいところまでこだわってつくられている。

だから、youtuberって本当に尊敬します。


その中でも、最近の本田さんの動画は本当に洗練されている。あんな動画、真似しようと思ったら自分だったら3分の動画に1週間かかります。

そんなすごい作品をバンバンだしている。


でも、そんな本田さんでさえ8万人。世の中には登録者が10万人を超え、100万人を超えるyoutuberがたくさん。上には上がいることを、みんなが分かっている。
そのプレッシャーも毎日、感じている。撮影しながら、編集しながらプレッシャーを感じている。

「超わかる!はまだまだ途中なんだ、こんなにすごくても」と思うと感激せずにはいられません。



【本田さんからいただいた言葉】

そんな本田さんが、ロマ数の登壇の話の中で言ってくれた言葉があります。


「あしべさん、さっき登録者80人って言ってましたよね。これ、本当にすごいと僕は思っています。80人って普通にすごいんですよ。80人になるまで本当に大変だったと思います。」

と言ってくれました。褒めてくれた。私は心の中で泣きました。youtubeを初めて半年、編集しているあの孤独な時間。ほとんど見られていない本気で創った動画、限定公開を含め、今では70本を超えました。すごいね、と言ってくれる人はいましたが、「いえいえ、半分はネタですから(笑)」なんて言ってお茶を濁していたあの瞬間。


いろんなことが走馬灯のように流れ、「こんなにうれしい気持ちはいついらいだろうか」と思いました。
本田さんの言葉はお世辞じゃない、と直感的にわかりました。本田さんはyoutubeの大変さを本当に知っているから、本気の言葉だったと私は思います。


【元気がなくなった理由】

以上のようなエピソードがありましたが、元気がなくなった理由に戻ります。

一言でまとめると「自分はまだまだ」と深く理解したからです。

他のプレゼンターはみんなすごかった。会場を熱狂させていた。
自分は、プレゼンは得意だと思っていたけど、この日はうまく話せた自信がない。

本田さんやタカタ先生はyoutuberとして大物。
自分は、登録者80人で苦戦している。(登録者を増やすことが目的ではないとはいえ)

本田さんは、本気だった。
自分は、本気だっただろうか。

自分は、数学教師として生徒になにか残せているのだろうか。

他者と自己の対比をえんえんと繰り返しました。


まだまだ出来る、もっと出来る。今まで、全然本気じゃなかったなぁと強烈に反省しました。

あぁ、これから本気をださなきゃいけないじゃないか、大変だなぁ、、、明らかに前途多難だなぁ、、、。


これが元気がなくなった理由だと思います。



【③本当に伝えたかったこと】

私は、「数学を美しいと想う感覚」を育てたいと思っています。その美しいとおもう感覚をここでは、「エクセレンス」と呼ぶことにします。

エクセレンスとは、アメリカのHigh Tech Highという学校のロン・バーガー先生の言葉から借りました。

ロン・バーガー先生いわく、「エクセレンスを身に着けると、子どもは後戻りできない。ひとたびエクセレンスを味わうと、エクセレンスのないものに満足できなくなる。」


エクセレンスが備わった仕事、エクセレンスが備わったモノづくりができる能力は、まさにこれからの時代を生き抜くのに欠かせない力だと思います。


数学を美しいと想う感覚は、エクセレンスの部分集合だと思います。

これが、数学を教える理由で、数学が役に立つ理由だと私は思います。


【教育が変わるために、まずは先生から】

数学の先生はみんな、このエクセレンスを身に着けています。そうでないと先生を続けられません。

子どもたちのエクセレンスを磨くために、desmosは最適だと思っています。だから、紹介したんです。

世の中の数学の先生が、受験数学に疲弊しないようにしたい。
本当に伝えたいことを伝えられるようにしたい。
エクセレンスのある授業が広がってほしい。


ロマ数は、これらを伝えるには最高の舞台でした。
でも、ちゃんと伝えられなかった気がしました。教育を本当に子どもたちのためのものにするには、先生からはじめなくちゃいけません。

子どもたちにエクセレンスを伝えましょう、先生がエクセレンスを磨きましょう、自分から動きはじめましょう。一緒にはじめましょう。





長い文章でしたが、これで終わりです。

この文を書いたおかげで、あの「元気をなくした帰り道」に決着をつけられた気がします。

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