リリウム~新約少女純潔歌劇~を見てきた
4月22日にサンシャイン劇場で「LILIUM~新約少女純潔歌劇~」を観劇してきました。その感想です。
「LILIUM~新約少女純潔歌劇~」(以下:リリウム)およびTRUMPシリーズに関するネタバレが含まれます。
生きてるとリリウムを生で見られるんですね。本当に生きてて良かったです。
再演決定からキャスト発表まで
これまで、YouTubeで過去のシリーズ作品が無料公開される”はじめての繭期”にて、版権問題で上映されないリリウムにもどかしさを感じつつ、どこか特別感も覚えていたのかもしれません。
再演することを知ったとき、少し複雑な気持ちでした。
キャストが全員10代で現役アイドルが「永遠」をテーマにして切り詰めたような芝居をするのが大好きだったからです。
でも私はリリウムという作品が、演者は関係なく、物語としても大大大大好きなので、再演があるうれしさの方が大きかったです。
やっぱ良い作品は万人に見てほしい!
同じキャストで再演することが叶わないなら、フルキャストオーディションで募集するのは大賛成です。
「リリウムに出たい」という役者が集まったリリウムですから、最高が約束されたようなもの。シリーズ2作目にして、時系列ではかなり後半にあたるリリウムなので、これまでの公演を踏まえて内容の変化も期待できました。
そして、初演の若さ故の危うさとか、アイドルが演じることから生まれる文脈とかは、唯一無二であり上書き保存されることはないと分かっていました。だからこそ新約を100%楽しみで待つことができました。
(もちろん再演しないでほしいというオタクの気持ちも分かる)
運良く、チケットはすえ喫チャンネル最速先行で確保!やったね!
キャスト発表
どんなキャストでも楽しむことは決めていましたが、いざ出演者発表になったら、ああ!浜浦彩乃さん(ニックネームは”はまちゃん”)がスノウ役にいらっしゃる!
私はハロプロファンを自称しておりますが、こぶしファクトリーを結成時から追っかけており、こぶしファクトリーのオタク(通称”こぶし組”)として解散を見届けたオタクの一人。はまちゃんが女優としていろいろな舞台で活躍し続けていること、ハロプロ時代の先輩が演じていた舞台の再演に元ハロプロの看板を背負ってオーディションを受けてくれたこと、受かってくれたこと。すべてに感謝でした。チケット取ってて良かった!
オーディションの様子はドキュメンタリーで少し見ることができますが、注目すべきはまちゃんの歌唱力。
アイドル時代から常に成長していたはまちゃんですが、卒業してからもボイトレに通っていたようです。TRUMPシリーズの挿入歌や黑世界のチェリーを演じた新良エツ子先生にボイトレ指導をうけていたようです。努力されているんだなと嬉しくなっていました。はまちゃん出演作品では役名や役者名でパブサして褒められている推しを見てニッコリした夜もありました。
はまちゃん大佐に敬礼!
いざ観劇
入場すると、DVDで何度も聴いた風の音が会場に響いていて、すでに胸がいっぱいになる。ここが………クランだ…………………
席は上手側、五列目。近い!一番端の通路側の席。センターはほぼ真横から見ることになるけれど、今日だけの景色ということで。
舞台が始まれば、周りのキャストよりも少し背が高いはまちゃんを一瞬で見つけてからさめざめと泣いていました。
はまちゃんがいる…いや、この少女は、はまちゃんというよりもスノウ……顔小っちゃ……………リリウムの歌歌ってる…………生きてて良かった…
キャストパレードがある「Eli, Eli, Lema Sabachthani」(通称えりえり)では、目の前に竜胆お姉様が。ステージ前方ギリギリに立ち、目の前でキレッキレに踊るので、舞うスカートが目の前まで迫ってくるようで。目を離せませんでした。表情まで美しい。強い。
今日しか見られない部分をちゃんと見ようとしていたので、終止”目が足りない”状態でしたが、キャメリアが女子寮のヴァンプをナンパしてメロメロにさせる姿や、繭期のティーチングでニコニコしている「普通の少女A」を目に焼き付けました。
何十回も初演を見てきているので、セリフはほとんど空で言えるし、高校の時にはLILIUMを見せたオタクの友だちとTRUE OF VAMPごっこをしたくらい完コピしています。それでも息ができなくなるくらい衝撃の結末。お金払って絶望しに来た甲斐がありました。
思い出した順番に感想(ながい)
ドキュメンタリー映像内で言われてたとおり、えりえりは歌割りが変わっていましたね。というか歌がうまい。音響が良い。歌詞がはっきり聞こえる。すご!
初演の歌声は命を削るような全身全霊で歌うように聞こえますが(ミュージカル歌唱というよりもつんく歌唱が残りすぎている。愛。)、新約はオーディションを勝ち抜いたプロが歌うので、そりゃ迫力も美しさも強さも乗ります。
なによりYOSHIKO先生の振り付けが天才。腕で花びらを表現するところも、スカートのボリュームを活かした振り付けも、入れ替わるフォーメーションもさすがでしかない。ありがと~~~~!YOSHIKOの良いとこ全部出てた。
衣装が天才で、スカートのひらみはもちろん、何層にも重なったレース、ペチコートまで白!タイツも履いてるように見えました。
肌色がまっっっっったく無い。徹底していました。
お得意の、演者が丸になって腕で花びらを表現する振り付けは、ボリューム袖が腕を動かす度に透けて揺れてきれい。
ダンスがキレッキレなので、布がビュッってなる音が聞こえました。ありがたいです。
キャストパレードといえば、これはYouTubeに限定公開された映像で気付いたのですが、キャストパレード中に百合の花を持って登場するファルスは、自分のスポットライトがそれると花をポイっと捨てるんですよね。ひどいことするよね!最高。ありがとう。
紫蘭と竜胆のお姉様監督生双子が大好きなのですが、おしとやかな竜胆と可愛い声と「なのだ」口調の紫蘭から、二人とも「凄み」が追加されたなと感じました。
繭期のティーチングのコミカルさのギャップがまた良い。真剣な顔をして謎ツーステップをする紫蘭お姉様のこと、みんな大好きでしょ。
ドスが効いていて、マジでむち打ちしてそうな紫蘭と、ミステリアスで表情が読めない竜胆のふたりの迫力が良かった。
だからこそ、TRUMPのイニシアチブが弱まりクランの日常が崩れたとき、紫蘭竜胆がもちもちファルスに弱々しく跪くシーンはショッキングでした。美しかったです。
もう一人印象的だったのがマーガレット。
登場からあまりにも可憐で、「はまちゃんがリリウムに…!」という涙以外で観劇中に泣いたのがプリンセス・マーガレットのシーンでした。可愛らしくて麗しくて、最高すぎて感動して泣きました。
「うるわしゅう~」したかったのですが、声出し禁止だったので精一杯の拍手でお返事させていただきました。
「ダーリちゃーん」って呼ぶのと同じくらい「うるわしゅう~」したいので、新約も再演するか、マーガレットが出る舞台をやってください。
でも登場の時に上手側にお手振りをしてくださったので、小さくお手振りを返しました。うれしい!
麗しくて大好きな姫姉様なので、マリーゴールドにイニシアチブを取られたのが悲しくて悲しくて………………(マリーゴールドをかなりキツめにいじめているので、因果応報感はあるっちゃある)
マリーゴールドは敵意を向ける街の人たちを襲ってしまった女の子ですから、そりゃ無防備な目の前の敵は噛むよね。
親衛隊のひとりが「ドブネズミなんて思ってない、ダンピールがどうとか気にしてない、お友だちになりましょう(意訳)」と裏切りかけてたのも悲しかった。良い脚本だな…………ありがとう。
イニシアチブを取られたマーガレットが、葬送終曲「聖痕《スティグマ》」の歌唱メンバーに入っていたのも良かった。殺意マシマシでも、姫姉様は麗しいです。
ガンギマリな表情でスノウを襲う親衛隊もめーーちゃ良かった。
初演のマーガレットは自由奔放なおてんばお嬢様ならば、新約のマーガレットはまさしく「姫”姉”様」。
ソフィがTRUMPであることが明かされるシーンで、姫姉様は親衛隊をかばうように腕を伸ばし前に立っていらっしゃるのが印象的でした。姿勢が良くて腕が長く、手指もすらっと長かったのも素敵でした。
ファルスはメイキングでも出演者のツイートでもモチモチでかわいくて、こんなキュートな子がファルス!?どういうこと!?と思っていましたが、舞台の上では15歳で時が止まった少年にしか見えなかったです。残酷さも、かわいそうな感じも。3000年という時間は少年を狂わすには十分すぎるよな…………
キャメリアが慟哭するシーンでは、初演の工藤ファルスが完全に悪役の声色で「悪いことをしたよ」と濁点いっぱいで言うのに対し、新約の大森ファルスは無垢な声で呼び掛けるんですよね。アンタ、そんな軽い謝罪で済む問題じゃないのよ…
ファルスの役者を誰にするか最後まで悩んだとか、大森さんはファルス役でオーディションを受けていなかったとか聞きましたが、末満さんの中で、大森さんがファルスというピースがはまったときに、この残酷で無垢な少年が浮かんだんだろうなと感じました。
モチモチでかわいいファルスからのギャップが大変良かった。
一人にしないで、生きてくれ、とクランの仲間たちを次々に刺すシーンは衝撃的すぎて、ただ呆然と見ることしか出来なかったです。
基本的にTRUMPシリーズのクライマックスでは、悲しくてメソメソ泣きながら見るのですが、リリウムはショックが大きすぎて、泣くどころではないです。
ファルスがマーガレット親衛隊に刺されるシーン、SPECTERの萬里の刺され方に被って苦しかった。萬里(ソフィ)と同じ刺され方…どうして…………でもこっちのソフィは死にません……どうして…
推しのはまちゃん。
ラジオ番組「浜浦さんに喋らせたい」で少しお話しされていましたが、スノウはもともと明るい女の子だったとか、繭期の第6感で嘘を見抜けるとか。ヒエ~
だからファルスが「永遠に純潔でいてほしいんだ」と言うところで嘘をついていることに気付き、スノウは本気で悲しかったと…………
アイドル時代のはまちゃんは、立っているところがセンターになるような存在感があったので、高潔で冷徹で無愛想でとても孤独で諦めたように寂しげで、儚くて体温低そうで、物語が始まったらすぐにいつものはまちゃんじゃなくてスノウがそこにいる感覚になりました。
スノウとリリーが共鳴し、リリーが「頭がおかしくなりそうよ」と訴え、2人がステージ中央で溶け合うように抱き合うシーン、あそこはマジの宗教画。自体の重大さに狂いそうなのに、視界からの情報が美しくて、見ているほうも頭がおかしくなりそうよ。
何より主演の内田リリーさんについて。
鞘師リリーが好きすぎて、とくにファルスと初めましてをするシーン、鞘師リリーの「レディの身体に断りもなく触れるなんて信じられなァいッ」のセリフと言い方が本当に大好きなんです。そこがカットされてなくて安心しました。「ドォン!」「壁ドン!壁がないのに壁ドン!」もリリウム感謝祭から受け継がれていて歓喜しました。マーガレットにドブネズミと呼ばれたチェリーをペットみたいに激しくヨシヨシするのも。
さすがはオーディションで選ばれたというべきでしょうか。
リリウムの大きな見せ場の一つ、リリー・スノウ・シルベチカで歌う「TRUE OF VAMP」。
コレが見たかったんだよな~~~!この歌の殴り合いがさ~~!!
マリーゴールド、もといガーベラは、クランに来る前、母親アナベルが娘ガーベラを長生きさせるために永遠の命を持つTRUMPを探していたことを我々は知っています。だから、「ン馬鹿馬鹿しい……」(←この言い方好き)「TRUMPなんているはずがない」「おかしなことをリリーに吹き込まないで」と真っ向からTRUMPを否定するマリーゴールドが辛かった。
ヘンルーダさぁ……………ほんま
閑話休題。
ソフィ・アンダーソンに別れを告げ、心臓を貫くリリー。
リリーは個性あふれるクランの仲間たちの中では、没個性というか、良い意味でまっさらな存在のように感じました。どこにでもいるようなお人好しな女の子感が、内田リリーにぴったりで…!
まあ、没個性から不老不死という激強アイデンティティを得てしまうのですが……………
不老不死はずっと「死ぬのが怖い」ひとにとってある意味救済にはなるかもしれないけれど、リリーの目の前にいる不老不死者の狂いっぷりを見てしまっているし、クランの友だちを全員殺めて一人生き残っている訳ですから、不老不死絶対嫌だよな………
あんな可憐な少女が背負うには重すぎるて
そして、800年以上も費やして作り上げたクランを終わらせられ、錯乱したファルスは「ウル」を呼ぶんだよな~~~ウルはいません。代わりもいません…………
どうせ希望通りの「ウル」の存在が完成したとて、なんかちがうんだよな、って違和感でソフィはまた孤独になりそう。かなしいね…
LILIUM見るとファルス憎しになるけれど、TRUMPも繭星もみているので、そこまでしなくても良くない?って気持ちが1ミリくらい残ります。イニシアチブかかってないのに、ソフィはお父さんのように永遠に枯れない花を作ろうとするのほんと、何????????
ところで、サナトリウム・クランに男子は何人いるのでしょうか。ファルスが言うように「何十人も何百人もいる男子寮」なのか、ファルスのイニシアチブで沢山いるように思い込ませているのか。
男子寮の人数によってTRUMPシリーズ殺めた人数ランキングにかなりの変動があるので、ここのところは早く決着させたいところ。
不老不死になったリリーの絶叫は、もう心がぎゅっと締め付けられました。どうして、どうして、わたしだけ、化け物になってしまった、おいていかないで、そんな絶望が身体の隅々に伝うようで、苦しかった。ステージが真っ暗になってからの3度目の絶叫は、深い森の奥の風の音と同化して響き、リリーの孤独を浮き彫りにするようでした。
「少女純潔」の曲終わり、ソフィを中心に倒れゆく少女たちの最後にリリーがパタリと倒れるので、リリーは未来のどこかで永遠を終えるのだと思います。永遠に枯れない花を作ろうとした庭師のお話でも、結局花は枯れますし。シュカのようにウルが永い時をかけて枯れゆくのか、ソフィかクラウスのイニシアチブかは知りませんが。
全体的に、劇中歌が増えたことで、より”ミュージカル”感が強くなったように感じました。
これだけ歌ウマキャストがそろったら歌わせたくなるよな。
キャストへの感謝を述べると、これ以上長くなってしまうので、この辺で。本当に再演ありがとう。
こんなに長く拗らせられる作品に出会えて良かった。
次の戦いはBLOSSOMS通販です。会場では敗北したので。
あらためて、末満さん、キャストの皆さん、ポニキャン、アップフロント、関わったすべてのスタッフさんありがとうございます。でもポニキャンの二輪咲き後出し告知は許していません。あとはじめての繭期の作品チョイスもセンス疑っちゃうよ。
パンフの年表を見てひっくり返ったのですが、年表の終わりが途方もなさすぎる。何かの模様かと思った。
最後、クラウスとソフィの終わりを見届けられるまで、どうか末満さんは健康でいてください。