京都人が「お揚げさん」に抱く特別な感情
京都の「お揚げさん(油揚げ)」は、他府県と比べて明らかに大きくて、そのことについては割とテレビ番組などで取り上げられているのだけれど、今回は、京都人がこの「お揚げさん」にもつある感情について記しておきたい。
我が家は、主に(というか100%)妻が料理をしてくれている。妻が料理を担当するのは、もちろん「女性だから」といった男尊女卑出来な発想ではなく、単純に料理がうまいからで、二人の合意の元の業務分担なので、この点は突っ込まないでいただきたい。
なんにしても、結婚したことで根っから京都人の妻の手料理を食べられるようになり、出汁なども家でとってくれているので、本格的な京料理を食べることができて、毎日楽しみであった。
ただ、数ヶ月経つ中で、どうしても理解できないことが出てきた。
ぼくは料理には詳しくなくて、糖質とかタンパク質とか全く理解していなかったのだけど、食事といえば、小学校の家庭科で習った、「肉・魚、野菜、お米」というイメージがあった。
妻の作ってくれる料理もほとんどはそう言う形になっているのだけど、たまに「野菜、お米」の時があるのだ。しかも、結婚して太ったぼくが、ダイエットのためにこのお米を抜くようにしたことで、「野菜」のみの日が出現するようになってしまった。
とは言え、料理を全部お願いしているのに、真正面から「どうして肉がないの」なんて聞くわけにもいかない。色々と検討をした上で、あるお肉のない夕食の日に、波風を立てないように
「今日は、お肉、お魚なしのヘルシーな感じやね」
と聞いてみた。すると妻は
「え、なんで。お揚げさんあるやん」
と、さも当然のように返してきたのだ。
そう言われてみれば、その日の料理にも大根とお揚げのたいたん(炊いたもの)がラインナップされている。以前に「野菜だけ」と思っていた日の料理も、どこかにお揚げがあったことを思い出した。
しかし、ご存知の通り、お揚げさんとは、油揚げのことである。これは豆腐をあげたものであって、豆腐は大豆からできている。確かに、大豆を「畑の肉」と言うのは知っているけど「肉」ではないはずだ。
「お揚げさんは、お肉じゃなくて大豆なんちゃうの」
とぼくが質問すると
「京都では昔からお肉と一緒でメインディッシュになる食材やで。衣笠丼もあるやろ」
と例を挙げてきた。
確かに、衣笠丼は、親子丼の鶏肉をお揚げさんに変えたものである。そこでやっと理解した。
どうやら京都人にとって「お揚げさん=肉」ということのようだ。
確かにそう思いながらお揚げさんを噛み締めてみると、肉と同じコクのある味わいがしないでもない。
しかし何より、お肉よりもお値段がずいぶん抑えられるのが妻にとってはポイントのようだ。
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