最期は穏やかに…【看取り】というの保護活動に込められた想いとは?
わんちゃんの保護活動はさまざまあります。保護犬を預かり家族を探す、団体の活動にボランティアとして参加する、寄付や募金、保護の実情を広める活動など、できることはたくさんあります。その中の「看取り」という保護活動をご存じでしょうか?
今回は、まだあまり知られていない「看取り」という活動に込められた思いについて、関心を深めていきましょう。
わんちゃんの「看取り」という保護活動 について
まずは「看取り」の活動内容についての説明から、活動するうえでの目的についてご紹介していきます。
・「看取り」とは?
保健所や愛護センターに収容された保護犬の中には、高齢や持病があることで譲渡がされにくいわんちゃんがいます。 高齢の場合はやはり余生が短く、また近いうちに病気にかかる可能性も高くなります。若い子でも重い病気を持っていて、長く生きられる見込みがないわんちゃんもたくさんいます。
「看取り」とは、譲渡の見込みの少ない保護犬たちを迎え入れ、最期の余生を穏やかに過ごしてもらうための活動です。
・願いは、最期の時間を穏やかに暮らしてもらうこと
わんちゃんが保護されるになるまでの過程は、さまざまあります。飼い主様の飼育放棄、多頭飼育崩壊、違反ブリーダーの飼育など。いずれにせよ、精神的に悲しい思いをしてきた可能性が高いです。
収容された保健所や愛護センターも、決して幸せな環境ではありません。きっとどんなわんちゃんも、愛する家族との出会いを願っているはずです。しかしそれが叶わなければ、わんちゃんたちの最期が殺処分になってしまいます。そんな結末、悲しすぎます。
せっかく生まれてきたのなら、おいしいご飯を食べて、ふかふかのお布団で眠る幸せを知ってほしい。当たり前の幸せを堪能してほしい。そして、最期の時間は穏やかに…。看取りを行っているボランティアの願いは、これだけです。
看取るうえでの活動と、覚悟すべきこと
「犬生の最期を穏やかに暮らす」というと、なんだか簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、実際はとても大変なことです。 では、実際にどのような活動をするのか、そしてどのような覚悟が必要なのか、一緒に見ていきましょう。
【覚悟①】痴呆(ちほう)の手助けや介護 が必要になる
高齢の場合、わんちゃんも痴呆になることがあります。痴呆という言葉を聞き覚えのあるであろう言葉になおすと、「認知症」となります。わんちゃんが痴呆になると、人と同じような症状が現れます。例えば、わんちゃんは徘徊をするようになります。時には同じところをウロウロ、くるくると回り、時には危ないところに体を突っ込んで怪我をする恐れもあり、目が離せなくなります。
また、阿呆になると、排泄のコントロールもできなくなり、時には排泄物を踏みつけてその上に倒れこみ、体中排泄まみれなんてことも。 排泄がそもそもできなくなってしまったときは、圧迫排尿などの排泄の補助が必要なこともあります。
夜鳴きをする子も多く、声の大きさのコントロールもできないため、介護をする人は寝不足が当たり前な生活になっていきます。
病気を患っているわんちゃんの場合は、定期的に投薬や点滴を行うなどの時間の束縛があり、日常生活はかなり圧迫されます。
このようにわんちゃんの介護は、介護する側の体力面の負担がとても大きいのです。
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【覚悟②】精神的負担もかかる
また体力的負担だけでなく、精神的負担も大きいです。
通常の保護活動であれば、日々わんちゃんの成長を感じます。少しずつ人に慣れ、環境になれ、成長する姿を側でみるのは、とても楽しいことでしょう。
でも看取りの場合は、その逆です。日々、弱っていく姿を感じます。命が消える瞬間に立ち会うことになります。どんな姿になったとしてもとても愛おしいものですが、知能のある人にとっては、それが精神的負担となることもあるのです。
【覚悟③】苦しさに寄り添うことが必要
病気を抱えているわんちゃんの場合、苦しむ可能性もあります。息苦しくて呼吸が荒い、痙攣を起こす、痛みがあり吠え続ける、など苦しんでいる姿を側で看るのは、とてもツライことです。一方で、介護する側以上にわんちゃんは大変な思いをしています。それをきちんと理解し、きちんと寄り添うことがとても大切になります。
苦しみを和らげるために、必要があれば点滴などを家で行うこともあります。愛情だけでなく、わんちゃんの生命を守るための知識と覚悟も必要になってくるのです。
最期を迎えるとき、苦しい時間が長引くようなら『安楽死』を判断して行う人もいます。すべては「最期くらいは穏やかに過ごしてほしい」という願いのためです。
どのような対処をしても、命に関わる状態です。「本当に正しいことができたのか?」その苦しみとも、戦わなければなりません。
【覚悟④】健やかな暮らしを守るのための費用は高額
体力的、精神的だけでなく、経済的負担もあります。
看取りの場合は費用が多くかかります。シニア専用の食事、老後ケアの用品、苦痛を和らげる薬、病気を抑える治療など、費用は必然的に増えていきます。
看取ることで感じる、たくさんの幸せ
筆者の私は、保護活動ではなく、家族であるわんちゃんの介護を経験しました。うちの子は痴呆からの徘徊もしており、排泄まみれはしょっちゅう、夜鳴きはひどく半年くらいは寝られませんでした。
寝たきりになってからは、脳の発作がありました。苦しんでいる時間は暴れて危険が伴うので抱っこが必須。発作がいつ起こるかわからないので、つきっきり。
いつも先生に聞いていたのは、「これは延命になりませんか?苦しみを伸ばしていませんか?」ということ。命と向き合う葛藤は、常にありました。
でも嫌なことばかりではありません。できないことがひとつづつ増えていくのですが、それも可愛く感じるのです。愛おしくてしょうがないのです。また、自分自身の身体の変化をまったく気にせず、素直に受け入れる我が子を側で見ていると、学ぶことがたくさんありました。
どんなに日々が大変でも、シニアなのでまったりとする時間も必ずあります。穏やかな時間はとんでもなく愛しく、本当に本当に幸せでした。
余生の時間、介護や看取りの時間には、必ず意味があります。
看取り活動を知ることが、応援につながる
もちろんすべてのわんちゃんが大変になるというわけではありません。突然、眠るように旅立つ子もいます。介護が数日で終わる子もいます。一方で、大変な事例がたくさんあるのは事実。これらを覚悟した上で「看取り」活動をされる方がいます。
あまり知名度がないからこそ、ぜひこの機会に関心をもっていただければと思います。どこかで応援できる機会があれば、ぜひ応援してあげてください。 寄付や募金はもちろんですが、知って理解していただくだけでも、頑張っている人の励みになります。
苦労をしたわんちゃんたちに、美味しいごはんをお腹いっぱい食べて、ふかふかのお布団で眠る幸せを知ってほしい。 さらに、そこに「人の温もり」を…。 その幸せを想像しただけで、私はなんだか涙が出ます。
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●ライター:大久保ユカコ
●編集:うしすけチーム
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