ロブスタも美味い!
いきなりですが、
皆様「ロブスタ」ってご存知ですか?
ロブスタとは、
「ロブスタ種(しゅ)」という、
珈琲の一種のことです。
ロブスタ種は、
一般的に「安価で低品質」と言われています。
珈琲の入門書的な本にもそう書いていますし、
お客様と話していてもほとんどの方がそういった認識だと感じます。
ロブスタは珈琲好きの方に「低品質」として広く認知されていますが、実際に単体で味わったことがある方はかなり少ないのではないでしょうか?
店主は結構「ロブスタも美味い!」と思っています。
なので今回はロブスタにまつわる誤解を解きながら、「ロブスタ礼讃」させていただきたいと思います。
どうぞお付き合いください!
①コーヒーとは?ロブスタとは?
はじめに、
普段目にする黒くてコロコロした珈琲豆は、
どのようにできているのかを紹介したいと思います。
珈琲豆は、コーヒーノキになる実を加工したものです。
大雑把にいうと、実の果肉を剥ぎ、殻をわり、中に入っている種子を焙煎(加熱)したものが珈琲豆です。
コーヒーノキには、他の植物と同様に
「アカネ科・コーヒーノキ属・〇〇種」というように、植物学上分類された様々な「種(しゅ)」があります。
その中でも、市場に出回っている珈琲豆は
ほぼすべて「アラビカ種」か「カネフォラ種(通称:ロブスタ種)」に分類されます。コーヒー生産量全体の約60%がアラビカ、約40%がロブスタと言われています。
一般的にアラビカの方が風味が良いとされているため、珈琲専門店で扱われているコーヒーはすべてアラビカです。反対にロブスタは安価で生産しやすいけれど、風味が悪いとされています。
「ロブスタ」とはラテン語で「力強い」という意味で、その名の通り病害虫などに強く収穫量も多く、風味も粗野な印象です。ですので珈琲屋でロブスタが単体で販売されていることは滅多にありません。
ではロブスタはどこで使われているのかと言うと、
基本的に缶コーヒーやインスタントコーヒー、スーパーで売っている安価な珈琲豆などに混ざっています。
そのため、ほとんどの方は意識することなくロブスタを飲んだことがあるのではないかと思います。
ちなみに、珈琲好きの方は「ブルボン種」「ティピカ種」「ゲイシャ種」等もよく目にするかと思いますが、これらはアラビカ種の「品種」です。
「コーヒーノキ属・アラビカ種・ブルボン種(品種)」
というように、品種は種の下位分類にあたります。
どちらも「〇〇種」と呼ぶので誤解を生みそうですね。
②アラビカとロブスタの違い
アラビカとロブスタは、
植物学上の「種(しゅ)」が異なるため、
かなり多くの点に違いがあります。
外観や成分や生育環境、
染色体の数や繁殖方法も違います!
基本的にはロブスタのほうが
外的要因に強く収量も多く、
育てやすいという特徴があります。
風味に影響する重要な成分を比較すると、
ロブスタは少糖類・脂質が少なく、
カフェイン・クロロゲン酸類が多いです。
その結果、
華やかな香りや酸味が少なく、
土っぽい香りや苦味が多い、
素朴で力強い味わいになりがちです。
ただアラビカとは別の種(しゅ)なので、
上記の特徴だけであれば「個性」であり、
「低品質」とは言えないはずです。
実際、
素朴な風味のブラジルや、
土っぽい香りや苦味のあるマンデリンは、
広く好まれています。
ではなぜロブスタは
「低品質」とされているのでしょうか?
③ロブスタは低品質?
それは、多くのロブスタから
カビ臭や枯れ臭・雑味を感じるからです。
というのも、安価なコーヒーに使用することを前提に作られているため、ロブスタの多くはあまりコストをかけずに生産されています。
産地の段階でいうと、「生育・収穫・精製・保管」等にコストがかけられていない。
その後も、「黒豆・未成熟豆・カビ豆・虫食い豆」等の欠点豆を多く含んだまま、ハンドピック(選別)にあまりコストをかけずに焙煎される。
これでは、
アラビカ種だったとしても風味が悪くなります。
ロブスタ自体の素質が悪いというより、
ロブスタの多くがアラビカより悪い環境で生産されている、というのが正確なのかもしれません。
④ロブスタも良くなってきている!
悲観的なことを書きましたが、
ロブスタの生産環境は良くなってきているようです!
「昔はもっとひどかった」
「今は品質がだいぶ良くなった」
という話をよく耳にします。
私は昔のロブスタを飲んだことがないのでなんとも言えませんが、書籍や資格の講習会でも見聞きするのである程度妥当なのかなと思います。
また、「ファインロブスタ」と呼ばれる手間暇かけて作られた高品質なロブスタも少しずつ増えています。
農園単位など小さなロットで、良質なものをそれ相応の対価を支払って継続的に購入する。「スペシャルティコーヒー」のロブスタ版のようなイメージですね!
(CQI認定がどうのという細かな定義について、ここでは省略しますがいつか書こうと思っています。)
ファインロブスタは今後普及して、
アラビカと一緒に珈琲屋に並ぶようになるかもしれませんね。要注目です!
ちょうど今手元に「ファインロブスタ」認定生豆を私が焙煎したものがあります。書いてたら飲みたくなってきたので淹れます(笑)
(インド パパクチ農園 ウォッシュド 中煎り)
酸味がほぼなく心地良い苦味、
麦・きな粉・ほんのりバニラのような香り、
まったりとした重たく柔らかい口当たり。
ほっこりします!
素朴かつ骨太で、
どこか田舎っぽい風味が凄く気に入っています。
やはり丁寧に生産・焙煎・抽出すれば、
ロブスタも素晴らしい個性があり美味しいです。
⑤まとめ
アラビカとロブスタの違いについて、
『コーヒーおいしさの方程式』という本に
面白い文章があるので引用します。
「アラビカとロブスタは学術上は”種”のレベルで異なっていて、いわば温州みかんとグレープフルーツほどの違いがある。成分バランスにも大きな違いがあるから〜(以下省略)」(p.33)
上記のことを考えると、「グレープフルーツよりみかんの方が安価で低品質で風味が悪い」という比較ができないように、「アラビカよりロブスタの方が風味が悪い」というのは成立しないと思います。
丁寧に作られたものであれば、
どちらも素晴らしい個性を発揮するのではないでしょうか。
私はまだまだロブスタマスター(?)ではありませんが、素朴で田舎っぽい風味に妙に惹かれています。
しかし、一般的にはロブスタの評価は低いので、
「これはコーヒー好きの皆様に新たな視点をお届けできるかもしれない!」と思い、いそいそと書きました。
少しでも発見があれば嬉しいです。
余談ですが、
当店はブレンド専門なので単体では販売していませんが、「冷珈ブレンド」にファインロブを使用しています。ご興味があればストレートでもお渡しできますのでお声掛けください。
今後も珈琲に関する新たな魅力を、
たまに紹介していきたいと思います。
最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました!!
ーー参考文献:ーー
全日本コーヒー協会『コーヒー検定教本』
旦部幸博『コーヒーの科学』講談社,2016年
田口護・旦部幸博『コーヒーおいしさの方程式』NHK出版,2014年
↑客観的な内容に関しては上記資料を参考にしました。どれもマニアックで面白い本なので、ご興味ある方はぜひ!