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日本の医療制度の問題点

 もう四年ほど前になるけれど、「楽園の向こう側」というブログがあって、そこで「がんもどき理論」で有名な近藤誠医師に関連して「日本の医学で進んでるのは基礎医学だけ、臨床医学は全然ダメだな、と思ったの。90年代の日本の臨床医学はどの領域も学問の体をなしていなかった。数年前、某所で高名な名誉教授が「研究は誰々に教えていただいた。臨床はやっているうちにできるようになった」と言って、ひっくり返りそうになったが、このどうしようもない妄言暴言も当時のエートスを正しく表現したという意味では名言だった。」といった内容のことを書いていて、なるほど、と思ったのだが、「研究は誰々に教えていただいた。臨床はやっているうちにできるようになった」という言葉は、まさに日本の医療制度が江戸時代の「町医者」のあり方から全然、変わっていないということだ。そもそも「日本医師会」が町医者の集まりなわけだし。https://georgebest1969.typepad.jp/blog/2017/11/%E8%BF%91%E8%97%A4%E8%AA%A0%E6%B0%8F%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%B3%99%E3%81%AE%E4%BB%95%E6%96%B9.html


でも一方で、日本の基礎医学が世界的レベルであることは、ノーベル賞の数が示している。

そんな日本の医療体制なのに、病床が満杯で、医療崩壊の瀬戸際にあり、実際に何度も崩壊して、現在だって、自宅療養を強いられている数が全国で万単位になっていることは、明らかに崩壊していると言っていいのだろうが、外国のメディアがそれを知って、医療が進んでいる日本で、なぜ……としきりに聞いてくるらしい。実は、江戸時代とあまり変わりがないもんで、とは言っていないだろうが、実際の話、日本(の官僚)が世界に誇る健康保険制度だって、江戸時代の頼母子講が原型で、その発祥の地に厚生省が記念碑をつくっているそうだが、その健康保険制度の問題点も、コロナ禍で浮き彫りになった。どこで、どうなったのか、よくわからないのだが、要するに日本の医療制度は、国民の積立金で成り立っているので、諸外国みたいに税金で賄っているわけではないため、従来、ワクチンは一回で四、五万円もかかったが、新型コロナでは無料にせざるを得なかったことで生じた巨額な負担金を健康保険の積立金を使うか否かでの問題で揉めたりしているのだろう。

 そもそもの話、日本の「医師会」は、江戸時代の町医者制度に由来することを否定していないと思うけど、その結果として、冒頭のブログ氏(神戸大学の医者らしい)の言うような結果、つまり高度な医療技術を持つとは言えない臨床医と、優秀な基礎医学の研究者というアンバランスを生むことになったのだろう。実際、和算の関孝和なんか、微積分をライプニッツと同時代くらいに確立していたようだが、科学と関連づける発想がなかったので「お家芸」で終わってしまった。そんなこんなを考えるとデカルトが「方法序説」を発表した年に徳川家光が鎖国を断行したことがまことに痛かった――と、中央公論社の「世界の名著シリーズ」の「デカルト編」で、編著者が書いていたけど、全くその通りなんだろうなあ。

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