ヒッチコックの『裏窓』の世界
NHKのBSPで録画しておいたヒッチコックの『裏窓』を見た。事故で骨折して車椅子生活になったフリーカメラマンが、退屈しのぎに、自分の部屋の裏窓から、対面のアパートの生活を覗き見しているうち、殺人を目撃して……というストーリーは知っているけど、見たのは初めてだ。
大体の流れは知っているので、アパートの住人たちのうち、誰が犯人なんだろうと思って見ていたけど、何しろ窓越しなので、誰が怪しいのか、よくわからない。住人は、作曲家でピアニストの男性、グラマーな若い女性、対照的なオールドミスの女性、それに大きな旅行鞄をもって、出たり入ったりしている行商人らしき人物等々だ。
そんな彼らの日々の生活を、退屈まぎれに、カメラを手に覗き見している車椅子のジェフ(ジェームススチュアート)を、身の回りの世話をしている日雇いの看護婦というか、家政婦のステラ、そして、ジェフの恋人のリザは、悪い趣味だと思う。そのうち、ジェフは、妻の姿が見えなくなった行商人を怪しいと思う。大きな鞄にはノコギリが入っていて、それで浴室で切断して……とか、そう思って、知り合いの刑事に言う。刑事は「君の家にも、ノコギリがあるだろう」と言って取り合わない。私もそうだよなあ……と刑事の意見に賛成だったが、ジェフはその後、妻の結婚指輪を行商人が持っていることを望遠レンズで見て、ジェフ自身は独身だったが、既婚者のステラに、「結婚指輪を外すことあるかい?」と聞く。ステラは「指を切られでもしない限り、外さない」と答える。恋人のリザも同じ意見だ。それで、行商人が妻の指輪を持っていると言うと、ステラもリザも、行商人が怪しいことに同意する 改めて調査を要求するジェフに、刑事は、調べてみようと言う。そして、行商人が旅先で妻と一緒にいるのを確認したと電話で言う。男の人と一緒にいる女性を、男の人は妻と思いがちだが、そうとは限らないないとリザは言う。そして、その自分の言葉に覚醒したかのように、行商人(ソーワルド)の妻殺しの証拠品としての「結婚指輪」を、アパートに乗り込んで探そうと言いだす。
ジェフは「あなたの奥さんのことで話し合いたい」という手紙を書き、ドアの下から差し込むよう、リザに頼む。そして電話帳で調べたソーワルドを電話で呼び出し、ホテルで会おうと言う。ホテルには誰もいないので、当然、ソーワルドは部屋に戻ってくるが、三十分くらいの余裕はある。
リザは、部屋の中を探すが、見つからない。そのうち、ソーワルドが憤然とした顔で戻ってきて、リザを見つけて小競り合いになるが、時間がないと悟ったジェフが、警察に若い女性が襲われていると、電話をしたので、そこに警官が割って入る。それを見ているであろうジェフに、リザは、後ろに手を回して、手のひらの結婚指輪を見せる。
その後、ソーワルドは、ジェフの部屋に押し入り、「いったい何が目的だ。金はないぞ」と言って、ジェフを窓から突き落とすが、下にいた警察官が抱きとめる……というラスト。
要するに、夫が妻に与えた結婚指輪は、行商人のソーワルドの場合は、大した金額の指輪ではないと思うけれど、妻のもので、それを夫が持っているということは、妻殺しの決定的証拠となるのだ。刑事も、電話で「ソーワルドが妻の指輪を持っている」というジェフの電話で、有罪であることを確信、素早く動いてジェフを助ける。
……というわけで、夫が妻の結婚指輪を持っていることが決定的証拠になるとは、思わなかったので、「何が欲しい。金はないぞ」というソーワルドの言葉に、納得したりしたので、とどのつまりソーワルドが犯人であることに驚いた。……というわけで、話のあらすじは知っているのに、最後まで展開がよくわからないまま、最後まで見てしまった。さすがヒッチコックと言うべきなのか、そうではないのか、微妙ではある。
「黒衣の花嫁」で有名なウィリアム・アイリッシュ、ことウールリッチの短編が原作だそうで、証拠品となる結婚指輪についてどんなふうに書かれているか、読んでみよう。
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