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レンタル博士されてみた話 クエスト3

 博士の知識を丸一日独り占めにすることができる「レンタル博士」。正直、最初の依頼で終わるものと思っていたが・・・一ヶ月後には2件目の依頼を実施できた。そして、2度あることは3度ある・・・3件目の依頼も来て今回実施することができた! 依頼が続くのは非常にありがたい! 今回は過去2回のレンタルと大きく異なり、依頼者は夫婦(つまり2名)、舞台は水族館、と初の出張してレンタルされることになった。いろんな意味でドキドキしながら行った今回のレンタル博士の詳細をここでお話ししよう。


【レンタルされた博士の自己紹介】

 生活費を稼ぎつつマンボウ研究を続けるにはどんな方法がいいか人生迷走中の求職中のポスドク。ペーパードライバー歴15年、免許は身分証明書の代わりにしか使っていないが、何とかマンボウ研究ができている謎。日常ではボロボロのチャリを乗り回す。詳しいプロフィールは以下。


【依頼者の紹介】

 天文学者の夫婦(仮称「サードさん夫妻」)・東京在住・20~30代。サードさん妻がTwitterでレンタル博士の記事を見て「変なことやってる人がいる!これ絶対面白い奴!」と思い、依頼しようかどうしようか考えて一週間・・・「依頼が全くありません」という私のツイートを見て依頼を決心。はやぶさ2とか木星と土星の超接近とか空のイベントはしっかりチェック。生物学的知識が全然ないので、水族館でマンボウを見ながらいろいろ話を聞きたいと思い、今回依頼した。
 

【レンタルされるまでの経緯】

 Twitterでレンタル博士の記事を見て面白そうと思い、2020年11月17日に「マンボウなんでも博物館」公式ホームページの問い合わせから依頼 →以降、私とメールで打ち合わせ。



 メールで詳細な内容について打ち合わせする。
【知りたいこと】 マンボウの骨格、生息海域、近親種との類似点と相違点、今後の進化予想、フグ科との形態比較、大学や研究機関と水族館のつながり、個体差、研究に必要なサンプル数、新種の定義など。


【費用】 3件目の依頼もtwitterの皆さんにどうしたらいいかアンケートを取った結果、レンタル料は1.5万円が最多となったのでそのレンタル料でお願いした。

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 今回の依頼者の人数は初の複数人(二人)だったので、一人目と同額(1.5万円)or 二人目以降は割引(1万円)、どちらがいいかtwitterでアンケートを取った結果、最多が同額となったので、最終的なレンタル料は1.5万円×2人でお願いした。

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 今回は今までと異なり、静岡県⇔大洗水族館の往復交通費が発生したが、すべて依頼者に負担して頂いた(感謝)。私が飛行機を使うこと、ホテルで前泊することも想定していたとのことだったので(実際には使わなかった)、相当楽しみにして頂いている本気の依頼だと感じて私は嬉しくなった。

【日付と場所】 日付はサードさん夫妻の都合の良い日に合わせて、2020年12月19日に決定。場所はサードさん夫妻の強い要望で「マンボウがたくさんいる水族館」が良いとのことだったので、東京から近いマンボウが複数飼育されている水族館候補を大洗水族館か八景島シーパラダイスかの2択に絞った。依頼があった11月中旬は八景島シーパラダイスでマンボウ3個体が飼育されていたので、東京を経由するコロナのリスクと私の移動費のコストを考慮して、八景島シーパラダイス(12月はサンタの格好をした飼育員がマンボウの餌やりをするというインスタ映えするイベントもあったし)の方が良いと打診した。 しかし、マンボウの飼育は難しいため、八景島の方は最悪マンボウが全部死亡する可能性も想定して、大洗水族館に変更する可能性も頭においてもらっていた(大洗水族館は水槽に入れているマンボウの個体数が多く、地元で入荷されているので、個体数は問題ないと考えていた)。

 レンタル1週間前になり、八景島と大洗水族館のマンボウ飼育個体数の情報を再度集める。すると、八景島の方は残り1個体になっていることが発覚。これでは依頼者の希望を叶えることができない。12月16日、急遽サードさん夫妻に大洗水族館に変更する可能性も検討して頂いた。ちょうどそのタイミングで都内はコロナ感染者が800人を超え、年末年始コロナ特別警報が発出されるなどがあり、レンタル博士を延期する可能性も検討して頂いた。本当にコロナは厄介だ。

 予定通り実施するか悩んだものの、年末年始で人が大きく移動した後の方がコロナ感染者増加で実施できなくなる可能性が高いと想定して、今のうちにやった方が良いと判断。冬は曇りがちだが、12月19日は晴れとの予報で天候にも恵まれている。サードさん夫妻と相談した結果、最終的に12月19日に大洗水族館に行くことに決定した。移動は私が新幹線で東京駅(8時過ぎ到着予定)まで行き、東京駅でレンタカーを借りたサードさん夫妻に運転してもらって一緒に大洗水族館に行くという作戦になった(マンボウの生存とコロナの影響で当初の予定が直前で二転三転したが、結果的に無事クエストは完了できた)。




当日初対面。


【レンタル当日の様子】

 レンタル当日、私は3時に目覚めた。体の調子を整えて、レンタル博士の準備物の最終確認を行う。

 6時頃、自転車で駅へと向かう。バスで駅まで向かってもよかったが、帰りの時間が何時になるのかがわからなかったので、バスの最終便が終わっても問題ないように今回は自転車で駅まで向かった。まだ少し星が空に輝く夜明け前。寒くないよう何重にも着込んで自転車を漕ぐ。自転車を漕いでいる途中、依頼者に食べてもらおうと用意していたヤリマンボウの軟骨の味噌漬けを家に忘れてきたことに気付いたがもう取りに帰れない。無念である。

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 30分ほど自転車を漕いで、予定通りに時間に駅に到着。朝日が昇り、晴れてて楽しい1日になりそうな予感がした。適度に消毒しながら、電車を乗り継ぎ、新幹線で東京駅へと向かう。

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 8時過ぎ、東京駅到着。東京駅に着くと、サードさん妻が改札で待っていた。無事合流でき、話をしながら地下にあるレンタカー屋に向かう。レンタカー屋では既にサードさん夫が車を借りて下さっていたのでそれに乗り込み、一緒に大洗水族館へと向かった。

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 朝早かったので寝ててもいいですよ、と気遣って下さったが、問題はない。私は朝には強い。逆に夜の方がすぐ眠くなるので弱い。サードさん夫妻は天文学研究者。研究者の方から今回依頼があったのには正直ビックリした。仕事は夜だったりするのかなと思って聞いたらそうでもないらしい。最近の天文学的イベントと言えば、はやぶさ2、ふたご座流星群、木星と土星の超接近。はやぶさ2のことについてはやはりよく聞かれるそうだ。しかし、お仕事は星の観測ではなく、サードさん夫は機器の開発、サードさん妻は衛星データを使う仕事だという。私の知る分野と全く違うので、聞く話がいろいろ新鮮だった。マンボウについても質問をいろいろしてくれたので、それに答える形で会話が弾んだ。景色を見ながらの世間話もあり、楽しいドライブ時間だった。

 10時過ぎ、大洗水族館に到着。大洗水族館は12月18日にちょうどリニューアルオープン(12月7~11日は休館だった!)で新エリアが解放されたばかりだった。駐車場から左に見える旗は鯉のぼりならぬ、マンボウのぼりが泳いでいた時もあったのだと話すと、サードさん夫妻は楽しそうに笑っていた。

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 去年はマンボウ24時間観察をさせて頂くために大洗水族館に何度か訪れたが、今年はコロナ禍で観察はできななくなってしまったため、初めての来館になった。1年以上ぶりだ。入り口には今までになかった感染症対策コーナーが設置されていた。

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 飼育員さんとも少し話がしたかったので、事前に連絡を取っていた。ちょうどこの時、ウシマンボウの剥製前にあるパネルをリニューアルするとのことで、飼育員さんからパネル内容の監修依頼が来ていたのだ。専用口から呼び出してもらい、少しの間待機。その間に、サードさん夫妻に持ってきていたマンボウ属の脊椎骨を見てもらうことに。脊椎骨を見せた時、サードさん夫妻はどこの部分の骨かパッと見ではわからないようだった。やはり自分の知識は魚類に特化しているのだなと改めて感じた。マンボウ属は水分が多いので、乾燥させるとかなりスカスカで軽くなる。サメの脊椎骨よりマンボウ属の脊椎骨の方が柔らかいことを実際に触って体感して頂いた。

 脊椎骨の話をしていると、飼育員さんが登場。ここ1年の最新情報を交換する。茨城近海では最近マンボウ類が漁獲されていること、監修したパネルの修正点の説明、私の身の上話などなど。やはりコロナが終息するまではマンボウ24時間観察はできないとのことだった。飼育員さんと話をしながらサードさん夫妻と一緒に館内に入る。館内に入って早々、ウシマンボウの剥製がウバザメの剥製の後ろに移動されていたことに驚いた。

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 今までは順路としてマンボウ水槽より奥に位置していたので、マンボウの解説をしてからウシマンボウの剥製を見に行く予定を立てていたのだが、先にウシマンボウの説明をすることになった。空中に吊り下げられたウシマンボウはさらに迫力が増したような気がした。しかし、朝は日差しが強いため、逆光になってウシマンボウの剥製をイイ感じに写真に撮ることが難しかった。

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 サードさん夫妻には少しの間、ウシマンボウの剥製を見て頂き、その間、私は飼育員さんと話し込む。私が監修していたパネルが仮状態で張り出されていた。昨日のリニューアルオープンに合わせて急いで刷ったとのこと。いくつか修正の必要な個所があったので、再度説明し、後日、修正版がちゃんとした位置に設置されるとのことだった。大洗水族館を訪れた際に、この写真とどこがどう修正されたのか、間違い探しをしても楽しいかもしれない。飼育員さんはこの後、仕事に戻られた。

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 レンタル博士に戻り、サードさん夫妻にウシマンボウのことを話し始める。このウシマンボウの全身を側面から撮ろうとすれば、右向きになってしまう。反対側に行き、魚図鑑のように左向きに撮ろうとしたが、通路の幅的に不可能だった。このくだりで、サードさん夫妻に、日本では一般的に魚類は左向きに写真を撮る暗黙のルールがあることをお話しする。「料理で焼き魚とか左向きに盛り付けるのと同じですね」というサードさん夫妻に頷いた。


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 ウシマンボウの形態的特徴として、頭部と下顎下が隆起すること、舵鰭が波打たず半円形であること、舵鰭の鰭条数や骨板数がマンボウより多いこと、鱗は長方形で上から見ると線状であることなど、実物を見ながら分類学的に重要なポイントを説明した。デジカメのズーム機能を使って、ウシマンボウの剥製の鱗を撮影し、線状に見えることを実際に見てもらう。解像度は悪いが、ギリギリ線状に見えた。

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 舵鰭縁辺の骨板(写真ではかまぼこ状の黄土色に見える)もサードさん夫妻と一緒に実際に数えてみる。実際に触れないので正確に数えることは難しいが、魚類研究の雰囲気は感じて頂けた。ちなみにこの大洗水族館のマンボウ属大型剥製がウシマンボウであることの証明は、私が論文に出している。論文を出すまではこの剥製もマンボウと思われていた。

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 ウシマンボウの剥製が目の前にあるなら、ここでマンボウの形態的特徴の話もした方が印象に残るだろうと思い、いつものマンボウの干物を取り出す。ウシマンボウの剥製は手が届かないので触れないが、こちらは思う存分触ってもらえる。日本に出現するウシマンボウとマンボウが同時に写るある意味貴重な写真となった。マンボウの干物は触ってザラザラすること、この干物はまだ小型なので骨板の形成が未発達であること、舵鰭は背鰭と臀鰭の一部が変形してできており、尾鰭はないことなどを解説した。この干物を作るのに1週間ほど扇風機に当てて乾燥させた話をするとサードさん夫妻は大変そうだと笑っていた。

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 干物の話を終えた後は、私が実際にデータを取っている調査シートを見てもらう。60カ所ほどある計測項目にサードさん夫妻は興味津々。大型個体になれば一人で計測できない苦労に共感してもらった。

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 11時過ぎまで1時間ほどウシマンボウの剥製の前でいろいろ話をして、いよいよご待望のマンボウ水槽へと足を運ぶ。マンボウ水槽はウシマンボウの剥製があるところから進んですぐ左に入った先にある。

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 マンボウ水槽に到着すると、ラッキーなことに、ちょうど餌やりタイムだった! 飼育員さんの手が水面からにょきっと生えているのが写真でわかるだろう。コロナ禍になる前は餌やりの放送が入ったが、人が集まって密になるため、現在は餌やりタイムは告知されない。

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 餌やりタイムの動画も見て欲しい。この時、1個体のマンボウが餌欲しさに勢い余って他の個体にぶつかっているシーンが撮れた。通常ならお互いにぶつからないように避けるのに。マンボウ同士がぶつかる場面は初めて見たかもしれない。

 飼育員さんはそれぞれ餌をあげる個体の担当があるため、担当していない個体が餌を食べに来ると手を引っ込める。マンボウと飼育員さんの密かなバトルが水槽の中で繰り広げられていた。

 いきなりの餌やりタイムだったので、サードさん夫妻をほっぽり出して、私も動画を撮るに夢中になってしまった。しかし、サードさん夫妻も餌やりを楽しく見て頂けたようだ。改めて水槽の正面に移動する。

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 ウシマンボウの剥製で話した流れから、この水槽にいる種は形態的に見ておそらくマンボウであることを解説する。ここでマンボウ24時間観察をやっていたことを話すと、「3時間くらいなら見ていられるけど、24時間はつらいですね」とサードさん夫妻は笑っていた。私もなかなかつらかったことを思い出す。しかし、誰もができそうでやらないことをやるのもまた研究なのだ。24時間観察に来た全員が寝てしまい、データが取れなかった空白の1時間は今考えても悔しい。

 サードさん夫妻に泳いでいるマンボウを見ながら、マンボウの体と動きの特徴を解説する。マンボウが透明のビニールシートにぶつかった時、眼を閉じる光景も一緒に観察することができた。マンボウが近付いてきた時に体をよく見ると、ノルドマンウオジラミの仲間が寄生していることに気が付いた。寄生虫が付いているのは珍しい。水族館は寄生虫を取るために淡水浴をする話もした。

 大洗水族館はマンボウがたくさんいるので、運が良ければジャンプが見られるかもしれない。そう期待して、マンボウを観察していると、マンボウが突然ダッシュし始めた!

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 その時の貴重な動画がこちらである。マンボウがめっちゃ頑張って泳いでいるが、途中からもうダメだと息が切れたかのように動きがゆっくりになる。これを見てサードさん夫妻はとても楽しそうだった。

 普段はパッと見て通り過ぎるであろうマンボウ水槽をじっくり見て頂き、マンボウが水槽の中で意外に多彩な動きをすることに気付いて頂けたと思う。「じっと見てると面白いですね」との感想を頂き、私は嬉しかった。マンボウがこちらに近付いてきた時、サードさん夫妻とマンボウを一緒に映してあげようと私は奮闘する。

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 マンボウは行動も豊かだが、表情も豊かである。正面に近付いてきた時、口をパクパクさせている光景を見ると、何かこちらに話し掛けられているような錯覚に陥り、少し情緒が不安になる。ちょっと怖い。

 1時間ほどマンボウ水槽でマンボウを観察していた。楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。そろそろ昼を食べようと、一旦マンボウ水槽を離れることにした。マンボウはゆっくりしていてあまり動いていないように思われがちだが、長期的な視野で見ると、結構動き回っている。以下のタイムラプスの動画でそれを追体験して頂けることだろう。

 

 12時過ぎ。マンボウ水槽より奥に進み、カフェに足を運ぶ。エリアがリニューアルでお洒落な空間になっていて驚いた。剥製や骨格標本が多数あり、土産売り場もあり、まるで海外の博物館みたいだ。以前はこのエリアにウシマンボウの剥製が設置されていた。

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 このエリアを少し探索すると、マンボウの剥製を発見! 以前はウシマンボウと一緒に展示されていたが、別々に展示されることになった模様。

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  ん? マンボウの剥製の支柱が刺さっている部位はちょうど肛門・・・ちょうどいい孔だったのだろうか。ちょっと痛そうだった。

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 カフェもお洒落にリニューアル。飼育員さんおススメの鮫カレーをそのままサードさん夫妻におススメする。私はペンギン串なるものと、包み焼ピザをご馳走になった。

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 晴れているので外のテーブルで昼食タイム。ペンギン串はペンギンの肉が入っているのではなく、ペンギン型のさつま揚げだった。しかし、鮫カレーには鮫の肉がちゃんと入っている。鮫カレーを食べたサードさん夫妻の感想は「サバっぽい」とのこと。

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 いろいろだべりながら昼食が終わると、テーブルで持ってきた同人グッズや著書を展開する。

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 著書2冊を購入して頂けるとのことになったので、同人誌を見て頂いている間にサインを描く。今回はサインをうまく書けただろうか。

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 同人誌を堪能して頂いた後は、サードさん夫妻のリクエストの内容だったマンボウの骨格や生態に関する話を12月11日に発売したばかりのマンボウ専門書の図を見ながら解説していく。ちなみにこの専門書は私も参加しており、第2章の分類について分担執筆した。

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 クサビフグはマンボウぽくないが尾鰭が無いこと、マンボウ類は肋骨がなく厚い皮下ゼラチン層が外骨格の役割を果たしていることなどを解説。300ページ以上ある専門書をかいつまんでお話ししていく。サードさん夫妻も興味津々。「マンボウの今後の進化予想は?」との問いに答えを返すのは難しかった。正直これからどう進化するのかよくわからないが、現状で外洋に適応して巨大化したので、このままさらに巨大化していくのかも・・・? マンボウについては太平洋と大西洋で少し集団の遺伝子や形態が違うことがわかってきたので、おそらく種分化の途中ではないかと考えている。

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 マンボウについて議論できる時間は楽しい。分野外の方ならではの新鮮な見方もある。今回は遠征なのでパソコンは持って来なかったが、このマンボウの専門書は幅広いトピックを扱っているので一緒に楽しめる。まだ全然読めていないので、頑張って読まなければ!

 一通りマンボウについて解説した後は、恒例のお絵描きタイム。

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 サードさん夫妻にマンボウの絵を描いて頂いた。まずはサードさん夫の絵。

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 続いて、サードさん妻の絵。正面から見た感じがハクション大魔王ぽいとコメントしたら盛り上がった。

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 皆同じマンボウを見ていても、描かれるマンボウはそれぞれ違う。私のコレクションがまた一つ増えた。

 もう一つ持ってきていたアイテムを披露する。マンボウの肝油だ。マンボウの肝油は漁師の間で塗り薬や飲み薬として使われてきた。作り方を聞かれたが、作り方はすごく簡単。熱すれば自然と肝油は溢れ出てくる。蓋を開けてサードさん夫妻にニオイを嗅いで頂いたが、それほど魚臭さは感じなかったみたい。作ってから1ヶ月以上経ったが、腐ってはいないようだ。肝臓と言えば私は黄色・オレンジ色のイメージが強かったのだが、サードさん夫妻はピンときていなかったようなので、このイメージは魚類学者特有なのかもしれない。

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 もう一つ。毎回レンタル博士では話をしているが、マンボウが人を助けたという逸話は、壮絶な遭難体験だったと当時の資料を見てもらう。記事の絵がすごく昭和感があって、笑ってはいけないのだが、思わず笑ってしまう。

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 14時過ぎまで、昼食からマンボウトークで盛り上がった。せっかく水族館に来たので、マンボウ水槽以外のエリアも一通り見ましょうと館内に入る。他のエリアに行く前に、もう一度マンボウ水槽を見に行く。餌やりのタイミングかなと思ったが、始まる気配がなかったので、名残惜しくもここでマンボウとはさよならをした。

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 カフェ近くの新たにできた売店に行くと・・・ビックリ! 私の著書が目立つように売られていた! これは嬉しい。他にもいくつかマンボウグッズが売られていた。

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 サメ・・・チンアナゴ・・・気になる生き物の前で止まって館内を探索する。マンボウ24時間観察に来た時はほとんどマンボウ水槽の周りしか行かなかったので、大洗水族館がこんなにも広かったことを今更ながら知った。サードさん夫妻も水族館は久しぶりということで、目に入る様々な生き物や展示を見て楽しんでいた。

 水槽を見ていて驚いたのが、学名が決まっていないタコが展示されていたこと。学名もOctopus sp.だった。これは属名まではわかっているけど、種名がわかっていない状態であるとサードさん夫妻に解説する。マンボウ属も2009年~2017年までは分類の世界では種名が特定されていなかったのだ。

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 手の垢を食べてくれることで有名な魚ガラ・ルファ(ドクターフィッシュ)も展示されていたので気になって立ち寄る。サードさん夫妻が手を見せると、魚は手の方に集まってきた。コロナ対策で手を突っ込んで魚に手を掃除してもらうことはできないが、水槽の外からでも反応があるのは面白い。近くにいた職員さん曰く、皆が手を入れられなくなって、魚は空腹状態とのことらしい(餌はあげているので問題ないが、コロナ前はみんなが手を入れるので常に満腹状態だったらしい)。

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 「フグとマンボウを見比べたい!」との希望があったので、フグが泳いでいる水槽を探す。見つけたのはミドリフグの水槽だ。泳ぎ方を観察すると、マンボウの泳ぎ方とよく似ている。ミドリフグには尾鰭はあるが、あまり使わず、背鰭(+臀鰭)で主な推進力を得ているようだった。

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 展示水槽を見て回っていると、青いアユなる色彩変異のアユが展示されていた。そう言えば、先日、ピンク色のカツオが話題になったばかりだった。マンボウの色彩変異は文献では見たことがないが、世界のどこかにはアルビノやピンクのマンボウがいるのかもしれない。

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 館内を一通り回って、最後にリニューアルオープンでできた新たなクラゲのエリアへ。このエリアはマンボウ水槽の下の階だった。

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 インスタ映えしそうなクラゲの新エリア。ミズクラゲがたくさん漂っている。結構広いのかなと思っていたら、鏡があって奥行きが広いように見える細工がなされていた。サードさん夫妻に、ミズクラゲの生殖腺は通常4つあってクローバー状に見えるが、中には3つや5つの個体もいると教える。3人で変異個体を探したが、結局見付けられなかった。

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 すべてのエリアを回ったらもう16時半。17時閉館なので、最後の時間は土産物コーナーへ。ショップの名前は「Mola Mola」。マンボウの学名と同じだ。

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 ショップを見て回って気付く。あれ? この店、マンボウグッズ多くない? 20商品以上あった。最初はサードさん夫妻と一緒に回っていたが、気が付くと途中から一人で夢中になってマンボウグッズを探し回ってしまっていた! ビックリしたのがこのコーナー。一棚ほぼすべてマンボウグッズという驚きの品揃えであった。大洗水族館はマンボウグッズ推しで推せるぞ!!

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 ちゃっかり個人的にマンボウグッズも買った。朝話した飼育員さんからコロナで売り上げが大幅減ってしまったということも聞いたので、少しは水族館にお金を落とさなければ!と思ったのだ。この中で時代を象徴する貴重なグッズがマンボウ柄のマスクだ。コロナ前にはなかったように思う。自分が博物館を作った時には絶対に展示しようと思う。ピンクのマンボウのぬいぐるみは私のアイコンに近いので思わず買ってしまった。

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 しかし、これだけマンボウグッズがたくさん売られていても、ウシマンボウのグッズは一つもなかった・・・せっかく大きな剥製があるので、今後はウシマンボウグッズも作って欲しいところだ。

 17時閉館直前まで土産を見て回り、水族館の外に出た。すっかり日は沈み、夜になっていた。

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 しばらく大洗水族館には行けなさそうだが、またマンボウを観察しに来たいと思う。サードさん夫妻も良い休日だったと満足そうで私は嬉しかった。星を見ながら車を走らせる。木星と土星が超接近して、5円玉の輪の中に入ることを確かめたというサードさん夫妻。さすが天文学者の方々だ。マンボウが登場するアニメの話になり、これからやる「ぜつめつきぐしゅんっ。」というアニメでマンボウキャラが登場することを伝えた。

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 渋滞に巻き込まれたり、道を少し間違ったりしつつも、音楽もかけずに帰り道もよく3人で話した。気になることをいろいろ積極的に聞いてもらえるのはありがたい。途中眠くなることもあったが、無事20時前に東京駅に到着した。

 最後の最後に見せ忘れていた秘蔵のマンボウ動画をサードさん夫妻に見てもらい、新幹線の改札へと向かう。「充実した1日になった」という言葉に嬉しさを感じ、「研究頑張って下さい!」という励ましの言葉にこれからも頑張ろうと思った。20時過ぎ、サードさん夫妻と別れ、私は新幹線に乗り込んだ。これにて3件目のレンタル博士は終了である! 

 新幹線→夕食→自転車と移動して、家に着いたのは22時過ぎだった。 6時に家を出発してから帰ってきたのが22時、サードさん夫妻と合流してから別れるまでは8時~20時で12時間。これまでで最長のレンタル時間だった。これでわかったのが、新幹線を使えば意外に出張も日帰りでできるということだ。しかもいろいろ観光もできて楽しい!

【感想】

 今回、初めての出張、初めて複数人、初めての研究者の方からの依頼など初めてづくしだったが非常に楽しかった。コロナの影響とマンボウの生死で直前で予定が二転三転したのは申し訳なかったが、がっつり予定を組むのではなく、自由度の高いスケジュールで行動できたのは大きな魅力だと感じた。最悪マンボウがいなくても、私がいればマンボウの知見はいろいろ知ることができる。サードさん夫妻とは初対面であったものの、一緒にドライブしてあちこち歩き回って話をして・・・まるで大学生に戻って友達と観光に出かけているような気分だった。がっつりと講演依頼をするのではなく、ざっくばらんに気楽な感じに遊び回れるのがレンタル博士の魅力かなと今回感じた。


 この活動をより多くの人に知ってもらいたいので、面白いと思った方は是非広めてくれると私は嬉しい。

 こんな感じで、私を個人レンタルしてみたいという方がいれば、twitterかホームページからご依頼お待ちしていまーす! 


 支援サイト「ウシマンボウ博士の秘密基地」やyoutubeチャンネル「ウボンマシウ博士の小さな発見チャンネル」の登録もよろしくー!








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