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レンタル博士されてみた話 クエスト5

 博士の知識を丸一日独り占めにすることができる「レンタル博士」。クエスト4に続いて連日で、志摩マリンランドに一緒に行って欲しいとレンタルされた。2021年3月31日、51年間運営されてきた志摩マリンランドが再開不明の営業休止になる最終日。マンボウを複数飼育する世界的にも稀有な水族館が、水族館の歴史に終幕を降ろすこの日、マンボウ研究者として見届けたいと考えていた。ここでは志摩マリンランド訪問記の後編としてクエスト5の話をしよう。


【レンタルされた博士の自己紹介】

 無職になったら自由に好きなことができるかなと思ったら何だか妙に忙しい。毎年1本はマンボウ論文を出すことが目標で、今年はまだ全く手を付けられていない・・・そろそろ着手しなければと相変わらず謎の焦燥感に駆られる日々。金も欲しい、精神的余裕も欲しい・・・詳しいプロフィールは以下。


【依頼者の紹介】

 接客業・大阪在住・30代の女性(仮称「フィフスさん」)。水族館が好き、美術館も好き、ライブも好き、最近は鉄道にも興味が出てきたと多趣味なヲタク気質。専門家のコアな話が好き。マンボウは何となく好き。昼夜逆転生活とコロナ疲れで癒しが欲しいと思っていた中、志摩マリンランドの営業休止の話を知り、これは絶対行かねばと今回依頼した。


【レンタルされるまでの経緯】

 twitterユーザーの方で、2021年2月3日にマンボウなんでも博物館問い合わせホームページから、営業休止する前に志摩マリンランドを一緒に回って欲しいと依頼。

 私も行こうと考えていたので、それなら最終日の3月31日に一緒に見届けましょうと提案→ フィフスさん了承。

 しばらく期間が空き、私の引っ越しが完了した3月中旬。そろそろ予定を詰めていこうと知りたいこととレンタル代の相談をする。

【知りたいこと】 マンボウの生態(生活、食事など)、進化(なぜあの形になったのか)、各種の特徴や違い、打ち上げられた等の事件、水族館の方から聞いたエピソード、寄生虫、今まで行ったマンボウのいる水族館の話、おススメスポット。マンボウの干物や標本も見たい。

【値段】 行きの電車代の代わりにホテル代半分+帰り電車代+レンタル料+食事代 →フィフスさん了承

【場所・時間】 電車で来て、賢島駅に9時過ぎに到着とのことで、並ぶのを覚悟で駅の改札集合に決定。

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  当日初対面。

 【レンタル当日の様子】

 運命の2021年3月31日。泣いても笑っても志摩マリンランドに行けるのはこの日が最後。最後という事で、志摩マリンランドにサプライズとして、芸能人を送り込む予定を立てていた。で、一緒に館内を回ってyoutube収録をする計画になっていた。前日もクエスト4の後に連絡のやり取りをして、職員の方にも想い出に残る一日になればいいなと考えていた。

 当日の天気は快晴。桜も満開だ。水族館生の幕引きにはこれ以上ない最高のシチュエーションだ。

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 しかし、運命は時に非情で残酷である。依頼者を待つためにホテルをチェックアウトして駅へと向かうと、サプライズゲストから電話をすぐにしてもいいかとメールが。朝一に並ぶと聞いていたので既に並んでいるのかなと思って駅から水族館の方に歩き出しつつ電話に出る。すると・・・

「三重のホテルに泊まっていたのですが、今朝、スタッフの一人が発熱しまして・・・」

 その一言ですべてを察した。サプライズゲストも今回の来館をすごく楽しみにしていたのだが・・・ここは大人の対応として、コロナ感染の疑いがあるまま水族館に行くわけにはいかないと悲痛な想いで我慢。PCR検査を受けに行くとのことだったので、私は「今回最終日の志摩マリンランドに来られないのは非常に残念だけど、皆さんがコロナでないことを願いつつ、体調に気を付けて帰路について下さい」と返事を返した。志摩マリンランドにも一言連絡を入れておきたいというので連絡先を伝え、私は通常通りのレンタル博士をすることになった。

 

 サプライズゲストとの悲しいやり取りが終わると、フィフスさんが駅に到着する時間。すぐに駅に戻り、フィフスさんと合流した。9時からレンタル開始だ。

 駅前にペンギンのモニュメント。これも4月になればすぐに撤去されるのだろうか。見るものすべてに哀愁が漂っているように感じてしまう。

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 話しながら水族館に向かっていると、フィフスさんは既に先日、志摩マリンランドに来館したとの話だったので、それなら今日はマンボウ重視でいいかなと思った。

 2016年の伊勢志摩サミットに合わせて設置されたマンボウのモニュメント。設置された時から気になっていたが、結局足を運んだのは今回の営業休止の話を知ってからだった。

 このモニュメントは全長3.3m、全高3.3mとのことだが、実際のマンボウはもっと横長で背鰭・臀鰭は太短く、体はもっと凸凹している。なので、このモニュメントはもっと小さい個体をモチーフにデフォルメされている。しかし、造形物だからそんな細かい話はいいのだ。このモニュメントがいつまであるのかわからない。昨日の夜にいろんなアングルから撮影したように、この日もいろんなアングルから写真を撮った。

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  最終日は30分繰り上げた8時半から開館していたようで、入館待機の列はなく、検温、消毒して、スムーズに入館できた。

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 終わりとわかっていると、日付を見ただけで切なさが込み上げる。大学院時代にマンボウを研究するには・・・この場所は遠過ぎた。一度は来館したように思っていたが、実際にこの3月に3回やって来て、以前来た記憶が全くないことから、もしかしたら人生初だったのかもしれない。

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 入館してすぐ横にある干潟エリア。暖かいとムツゴロウなどが出ているとのことだが、フィフスさんと軽く歩き回って探したものの、結局このエリアのメインの生物を見付けることはできなかった。

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 最終日のウェルカムボード。来館の証拠に一枚撮ってもらう。「水族館の楽しみ方は人それぞれ」とは良いことが書いているではないか。我々の最終日はマンボウ尽くしで決定だ!

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 入口のパネルも最終日は特別仕様に変わっていた。最後だから直接メッセージがパネルに書かれている。

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 3月17日に撮った時はこちら。

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 缶バッチはもうないけれど、せっかくなので、スタンプラリーをやりましょうと、フィフスさんにおススメした。最初の設置場所。

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 しかし、まず先に行くべきところがある。そう、それはタオルガチャだ! 昨日は遠慮したが、最終日は遠慮などいらない。最後の志摩マリンランドオリジナルグッズであるタオルを記念にゲットしなければ! ということで、2つ目のスタンプを押してもらった後、すぐにタオルガチャに向かった。

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 タッチングプール前のガチャエリアに着く。すると、既に行列ができていた。皆考えることは同じである。列ができていたのでどうしようか悩んだが、もし売切れたらフィフスさんが記念品を入手できないことになるので、ここは並びましょうと列に並んだ。

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 お金を交換する機械がないので、水族館従業員が直接お札と小銭を交換するシステム。並んでいるうちに上の段のガチャは売り切れたので焦った。幸いにも私もフィフスさんもガチャを回すことができた。この日は私はマンボウのタオルを引けなかった。私の後ろにも人は並んでいたので、早々に退散。フィフスさんと出てきたタオルを見ているとガチャは売り切れてしまった・・・が、後ですぐ補充されたようだった。

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 先に記念品をゲットしたので、これで改めて館内をじっくり回ることができる。タオルガチャの横にある特別展の来館者メッセージはおそらく想定されていたより多く、タッチングプール側へと進出していた。

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 まだメッセージカードが余っていたので、フィフスさんに書かないのかと聞いたところ、前回来た時にたくさん書いたのでもう十分とのこと。前回初めて来たのにアツいメッセージを書いたそうだ。私もノートにはメッセージを書いたが、メッセージカードには書いていなかったので、せっかくだからとマンボウのメッセージカードにメッセージを書いた。

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 ここに書かれたメッセージは来館者による志摩マリンランドでの想い出だ。消えてしまうことが分かっていてもその想いを残そうととどめた残留思念のようなものだ。眺めているだけでも目頭が熱くなる。こういう手書きのメッセージにはめっぽう弱い。昔から何度も来るリピーターも、今回の営業休止を知って初めて来た人も、この水族館で感じ取った人それぞれの想いがこの小さなメッセージカードに刻まれている。

 志摩マリンランドは派手な演出や装飾がなく、インスタ映えしない昭和後期~平成初期の雰囲気を残したままの地方水族館だった。都心からは遠いという立地的な条件もあり、来館者は年々減少。収入増加の見込みがなければリニューアルされないのも仕方がないのかもしれない。地方ではあるものの、JAZAに加盟する正統派水族館であった。様々な想いが刻まれたメッセージカードを全部写真に撮りたかったが難しかった。メッセージカードの中でも特に印象的だったのがこちら。

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 そこには私の生まれる前の志摩マリンランドを知る人の記憶と想い出が刻まれていた。もしかしたら遠くに住んでいるのかもしれない。しかし、40年ぶりに志摩マリンランドに行こうと人の気持ちを動かしたのだ。40年前の記憶と40年後の再訪でこの方は何を感じ取ったのだろうか。それを考えるだけでもとてもエモい・・・。

 フィフスさんはこの手の手書きメッセージやパネルは濃度が濃くじっくり読んでいると時間が足りないので、前回来た時は後で家で見られるように写真を撮ることに集中したと言っていた。人の記憶は薄れていくもの、その行動は正解だ。フィフスさんは前回来た時に館内を回って他の展示は満足したようだったので、今日はマンボウ水槽前でひたすらマンボウを見続ける形になった。

 マンボウ館前の背比べコーナーもイラストが減って少し寂しい感じになっていた。

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 3月17日は以下のにぎやかな感じだった。

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 10時過ぎ。入館して1時間も経たないうちにメインイベントの開始になった。これが2021年3月31日に飼育されていた志摩マリンランドのマンボウたちだ。

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 同水槽には、マンボウ4個体のほかに、ナースシャーク、

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カゴカキダイ、

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イセゴイ、

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 イヌザメも同居しているが、これらはあまり注目されることはない。マンボウとナースシャークはたまにぶつかることがあったが、他の小さな生物はマンボウとは干渉していなかった。

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 マンボウを一緒に見ながら、鰭の動かし方、呼吸方法、眼を閉じるとどうなるか、24時間観察していた時の話などをフィフスさんにお話しする。マンボウは何となく好きというフィフスさんだが、このままぼんやりとマンボウを眺めていられると話をしていた。水族館で見られるマンボウの面白い行動をできる限り見て欲しいと4個体をまんべんなく注意深く観察する。

 すると、マンボウが舵鰭を尾鰭のように小刻みにブルブルっと震わせる行動を見ることができた。これはなかなか運が良い。24時間観察をやっていてもなかなか見ることができないレア行動だ。舵鰭をそんな風に動かせられるなら、普段からそうやって泳げばいいのにとふと思う。

 マンボウは時々上を向く行動をするのだが、志摩マリンランドではめったにこの行動をしない。見ることができたのは2,3回だ。前回、飼育員の方に話を聞いても上を向いているマンボウはほとんど見たことがないとのことだったので、上向き行動はしないのだろう。マンボウ同士が頻繁にぶつかろうとするので、個々のマンボウが好むプライベート空間的に考えると、この水槽は狭く、あまりリラックスできないのかもしれない。撮影できた貴重な瞬間。

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 マンボウを眺めていると、職員の方がせっせと椅子を消毒して回っていた。こういう地味な作業も重要な仕事だと私は感じている。感染予防に努めてくれて感謝だ。

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 最終日だから混雑しているのかと思いきや、年度末で平日であるためか、あまり混んでいなかった。その方がコロナ予防のためにはいいが、ちょっと寂しい気もする。人混みが苦手というフィフスさんにとっても、多過ぎず、少なすぎずで、ちょうどいい込み具合だったのかもしれない。

 マンボウの複数展示で注目してもらいたいのは個体間の干渉だ。詳しい研究はされていないのだが、どうも水槽に入れらたマンボウは上下関係が存在するようで、立場が強い個体と弱い個体がいる。この水槽では、一番大きな個体が一番強そうだった。不思議なのは、ナースシャークが近付いてきてもあんまり嫌がらないのに、同種のマンボウ同士が一定の距離に近付くと結構嫌がるようなそぶりを見せる。何かこういうデータを取る方法はあるはずなので、マンボウの社会性に関する研究もしてみたいなと思う。

 最後の記念にマンボウと写真も撮ってもらった。

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 隠れ撮影スポット逆さマンボウだ。

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 10時頃から12時前まで2時間ほど撮影した午前のタイムラプス動画が以下になる。午前中の餌やりは観察を始めた時点で既に終わっていたようで、見ることはできなかった。


 12時前になってそのピークが過ぎると、前回来た時に買っておいた記念メダル刻印機で日付と名前を打ち込む。メダル販売機は前日よりガチガチに封印されていた。

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 フィフスさんが前回来た時にやったというので、うまく刻印できるようにアドバイスをもらう。ガチンガチン結構大きな音が出るこの音ももう聞くことはできない。なんとかイイ感じに刻印できた。

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 12時をまわり、少しお腹が空いてきたが、食べ物屋は混雑していると予想して、時間をずらすために、先に展望台に行って、マンボウについてあれこれ解説することにした。このアングルから見える景色も見納めだ。

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 本格的にマンボウの解説に入る。同人誌を展開して、マンボウ類の種判別の方法、生態、都市伝説、食べ方、寄生虫、人を助けた話などを話す。

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 話の流れで骨格の話になったので、実物を取り出して乾燥したマンボウの骨を体感してもらった。フィフスさんは興味深そうにいろんな方向から標本を覗いていた。ついでに年齢査定の話もする。

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 マンボウの利用の話の中で、マンボウ肝油が出てきたので、実際のニオイを体感してもらう。魚のニオイがするが、そんなに悪いニオイではないと思う。

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 探偵ナイトスクープに出演した時のマンボウの軟骨から作ったボールを見てもらう。水分が抜けてしまったため、白濁してしわしわになってしまっている。

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 成長の話の中で、稚魚が出てきたので、マンボウ類の稚魚を見てもらう。小さな標本をいろんな角度から見て楽しそうだった。

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 そして、毎度名物のマンボウの干物を触ってもらう。マンボウに触ることなんてめったにできないので、これはレンタル博士ならではの特権だ。干物はよく縮んだのかと聞かれるが、それほど縮んでいない。

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 1時間ほどあれこれマンボウについて解説し、13時を回ったところで、食堂に向かった。このアングルからマンボウのモニュメントを見ることも永遠にないだろう。外ではテレビがカメラを回していた。モニュメントは人気で、来館する人々が記念撮影をしているのが見えた。

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 ランチはてごね寿司をありがたくご馳走して頂いた。フィフスさんは前回、この食堂に来る時間がなかったと聞いていたので入ることができて良かった。受付に飾られているマンボウのイラストと、マンボウのペーパークラフトを写真に撮っていた。

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 ランチを終えてちょっと休憩。この時、twitterを見てみたら、大阪で「まん延防止等重点措置」が全国で初めて適用される見込みとのニュースが話題になっていた。「まん防」と略されることと、志摩マリンランドの閉業が相乗効果をなして、マンボウがトレンドインするカオスな事態に。あまり喜べないが、マンボウが久々にトレンドインしたと開き直るべきだろうか・・・このまん延防止等重点措置初適用に大阪に住むフィフスさんは飽きれていた。

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 同人誌を使ったマンボウ解説を再開。その間、持って来て頂いた著書にサインを書くのと交換でマンボウの絵を描いて頂く。趣味でイラストを描いていたというフィフスさんは一筆書きは難しいと言いながらも可愛らしいマンボウの絵を描いて下さった。これは私の記念品だ。

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 食べ物屋を出て再び入館。事前に職員の方に聞き、午後からの最後になるマンボウの餌やりは15時~16時の間と聞いたので、その時間までマンボウ以外のエリアをうろつくことに。適当に水槽を見ていくと、ヨウジウオが合体してヒドラみたいになっていた。

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 さっきはスルーしたタッチングプールに赴く。ヒトデを触るのが好きだというフィフスさん。楽しそうにタッチングプールで生き物と触れ合っていた。土産物屋のタコノマクラが欲しかったが、前回行った時はもらえなかったらしい。私は前回の時にもらったが、やはり需要はあったようだ。よく考えたらこの水族館のタッチングプールエリアは他の水族館と比べて異様に多いような気がする。

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 15時を回り、餌やりが始まるかもしれないと急いでマンボウ館へ。すると、ラッキーなことに、マンボウ館にやって来てすぐにマンボウの餌やりが始まった!! 志摩マリンランドのマンボウの餌やり方法は、給餌棒にエサを刺して、マンボウの口の前まで持っていき、吸い込んでもらう方法だ。普段は他のマンボウと触れ合うことを嫌うマンボウだが、この時は餌がものすごく欲しいので、他の個体とぶつかり合っても全く気にしない。餌をもらうことに意識が全集中している。餌やりはパフォーマンスではないので、仕事的に淡々と進められ3分で終わった。あっけらかんとしつつも、これが志摩マリンランド最後の餌やりである。餌やりが終わると早々に散っていくマンボウだが、1個体だけ名残惜しそうにしばらく餌がもらえる場所にとどまっていた。

 これは読者に覚えておいて欲しいのだが、マンボウは餌を食べた後に糞をすることが多い。水族館でマンボウの餌やりをする場面に遭遇したら10分ほどそのまま肛門に注目して観察すると、白濁した粉状のものが噴出される場面を見ることができる。フィフスさんはマンボウの糞を生で見ることができてラッキーだ。

 この写真の真ん中の白く輝いているのがマンボウの糞である。

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 マンボウ同士が接近して微妙な雰囲気になる光景を何度か見ていると、マンボウがこちらに接近して、眼を閉じる光景も見ることができた。これもなかなか見ることができないのでラッキーだ。

 と、マンボウを観察していると、急に声を掛けられる。知らない人だと思ったらなんとフォロワーさんだった。確かに今日、志摩マリンランドに行くことは呟きまくっていたが、まさか初対面で特定されるとは! 世の中ネット情報も馬鹿にできない。恐ろしいことだ。ビックリしたのが家が近所だったことだ。生活圏のどこかでまた会うことがあるかもしれない。


 マンボウの餌やりを早々に見ることができたので、もう少し資料をいろいろ見てもらいたいと、再び展望台へ・・・行こうとした矢先、ミラクルが起きた。16時過ぎに、マンボウが暴れ始めて2回連続ジャンプしたのだ。1回目は撮影できなかったが、2回目のジャンプはしっかり撮影することができた。すごく貴重な動画なので転載防止にコピーライトを強めに入れているが気にせず見て欲しい。ジャンプ前に加速した個体が他のマンボウに激突してビックリして加速するという珍しい光景も収めることができた。私もマンボウのジャンプは数回しか見たことがない。もしかしたらフィフスさんは強いマンボウ運をもっているのかもしれない。


 ちなみに、午後のマンボウの餌やりと糞を含む午後のタイムラプス動画は以下で見られる。

 

 ジャンプを見られてほくほくした気持ちのまま、展望台の椅子に座り、持ってきた残りの資料を解説する。マンボウが人を助けた話、マンボウの乾燥させた目に蛍を入れる話。また、去年12月に発売されたマンボウ研究者の叡智が詰められた専門書「The Ocean Sunfishes: Evolution, Biology and Conservation」についても図を見ながら解説する。英語で値段も高いので見てくれる人は少ないだろう。しかし、資料としてはとても良い。

 一通り話し終えたら、17時。いよいよ志摩マリンランドの営業時間も残すところあと1時間だ。フィフスさんがまだスタンプラリーを完成させていないとのことで、館内を巡ることにした。

 歩いていると、土産物屋前にカメラを持った人が多く、何だか物々しい雰囲気だ。グランドフィナーレを撮るために集まっているのだろう。入り口が出口に切り替わっていた。もうここを出たら・・・二度と・・・志摩マリンランドに入ることは・・・できない。

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 人が少なくなった館内に戻ると、バケツと立ち入り禁止のコーンが並んでいる。どうも水漏れがあった?ようで、建物の老朽化はかなり深刻だと実感した。来観客に被害が出る前に営業休止をしたのは英断だったかもしれない。

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スタンプラリーを回収しながら館内を回る。

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 終わりの時間は刻一刻と迫る。皆の想い出が残されていく。

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 最後はマンボウ水槽の前で過ごしましょうと再びタイムラプスを設置して、観察を始める。このマンボウたちは海へ帰されるのか、他の水族館に譲渡されるのか、詳細は不明なままだ。人が少なくなったので手書きパネルと設置パネルを撮って回る。

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 17時半をまわると、最後の館内放送が入る。

 よし、最後までマンボウ水槽の前にいるぞと思ったその矢先、黒いスーツを着たエージェント風のお姉さんが現れ、「これから館長の挨拶があるので早めに入口の方に移動されませんか? 今ならいい位置を取ることができますよ」と促される。このままマンボウを見たままタイムリミットを待ちたいが、館長の最後の挨拶も見ておきたい・・・とのことで、お姉さんの言葉に促され、外に出ることに。さらば、すべての志摩マリンランドのマンボウ! 元気でな!!

 外に出ると、既に従業員が一列に並んでいて、あ、これミスったかなと思ったらお見送りの列だった。いそいそと出口から外に出る。これでもう二度と志摩マリンランドに足を踏み入れることはできない。先に出た来館者が前の方を陣取っていたのでもう前で見ることはできないかなと思ったが、まだ端っこの方が開いていた。フィフスさんとともに、最後の挨拶を待機する。そして、最後の来館客が外に出て、18時を迎えると、館長による最後の挨拶が始まった。


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 館長の挨拶が終わり、従業員が館内に戻っていく前に、館長を中心とした記念撮影が行われていた。

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 写真撮影が終わり、あとは報道関係者と従業員だけが館内に入っていく。終わって・・・しまった・・・。閉ざされた入場券売り場。もう二度と開かれることはない。

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 まだまだ余韻を感じたいとぶらぶらしていると、土産物屋にまだ人がいることに気付き、中に入る。

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 まだまだ商品はあるものの、かなり品薄になっている。何かマンボウグッズは残っていないかなとぐるっと一周回ってみたが・・・ない。他の水族館で売っているようなマンボウグッズもない。巨大マンボウぬいぐるみもない。マンボウグッズだけ1個も残っていなかった。これには結構衝撃を受けた。

 謎のマンボウファン募集中のポスター。かつてはそんなファンクラブもあったのだろうか。

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 手作りPOPがいちいちエモくて泣けてくる。

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 土産物屋を出て、本格的なサヨナラを。

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 夕暮れでライトアップされたマンボウのモニュメントをフィフスさんと写真に収める。

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 51年間ありがとう志摩マリンランド! さようなら!

 感傷に浸りつつ、駅へと向かう。一人で来ていたら最後の館長の挨拶に泣いていたとフィフスさん。駅前のコンビニも閉まり、あとはただ電車の出発時間を待つだけ・・・だが、いろいろ調べた結果、帰る方向は同じで、私が先に電車を降りることになっていたので、そのまま一緒に電車に乗って帰ることに。

 しかし、乗るべき電車までまだ一時間くらいある。せっかくなので橋の方までブラブラと話しながら散策した。その途中、完全に暗くなった夜景の中で浮かび上がるマンボウのモニュメント前で、最後の最後に記念写真を撮って頂いた。

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 これでもう思い残すことはない。今まで全く行かなかったけれど、最後はちゃんと見届けることができた。フィフスさんも思い出に残る一日になりましたと満足そうで良かった。歩き回った疲れで電車はかなり眠かったが、今日の想い出を語り合いながら帰路に着く。研究これからも応援していますとエールを頂き、私が先に電車を降りた。

 9時から電車を降りる22時まで13時間。前日も合わせて非常に濃い二日間だった。想い出をありがとう、志摩マリンランド! 受け継いだ資料やデータは今後のマンボウ研究に役立てます!

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【感想】

 今回、志摩マリンランドの最終日にレンタルされ、最後を見届けることができたのは本当に胸いっぱいであった。マンボウを飼育していなっかたら遠いので行くこともなかったかもしれないが、めちゃくちゃ飼育に歴史があったので、是が非でも行かないといけないと使命感を感じた。ただ一人で見て回るよりも、専門家に話を聞きながら回る方が楽しかったという言葉を頂けて私はとても嬉しい。関西でマンボウを飼育しているのは海遊館しかないが・・・依頼があればどこでもマンボウについてレンタルされに行く所存だ。4月以降は無職になって収入が激減するため、レンタル料を2万円に引き上げることにしたが、今後もレンタル博士が続けられればいいなと考えている。


 この活動をより多くの人に知ってもらいたいので、面白いと思った方は広めてくれると私は嬉しい。私を個人レンタルしてみたいという方がいれば、twitterか下記ホームページからご依頼お待ちしています!


過去のレンタル博士



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 【追憶の志摩マリンランドニュース】

最終営業日 3月31日


4月1日


4月2日


4月4日

4月10日

4月16日




【備考】 マンボウのモニュメントは2021年4月1日の朝に撤去されたが行先は決まっていないとのことです(4月10日時点)。




2016年の序幕時の様子

【朗報】モニュメントは年内に道の駅マンボウに寄贈されることに決定!(2021年9月15日時点)

2021年9月22日 マンボウのモニュメントは志摩マリンランド施設内に保管されていることがようやく明かされる。

2022年3月13日に、「道の駅 紀伊長島マンボウ」に移動したマンボウのモニュメントのお披露目がある予定です。


2022年2月17日にお披露目



 

ホームページは潔く4月1日に閉じられた


図1

マンボウ4匹の行方

1。 4月14日に越前松島水族館へ。


2。4月19日以前に海遊館(公式発表ではない)


3。4月19日以前にサンシャイン水族館に(公式発表ではない)


4。八景島or大洗or海遊館(4匹のうち3匹は関東と関西の水族館と記事に書いてあるので)





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