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添い寝の母の夢きれぎれ / 竹林奈良武 【著作権のおわった柳人の句をよもう!】
添い寝の母の夢きれぎれ
7-6で、十三音の川柳。よい破調。まさにきれぎれとしている感がある。
この下六を、「夢〈は〉きれぎれ」とか「夢きれぎれ〈に〉」などと、安易(=無難)に七音で詠んでしまうと、句全体が七七句の定型に綺麗におさまりすぎてしまう。そうなると、この途切れ途切れに夢の続いていくような読み味は生まれないはずだ。絶妙な字足らず。
また、夢から覚める〈瞬間だけ〉を切り取っているのではなく、コクン…コクン…となったり、子にふっと起こされたり、また眠りについていく…というような、“母”における〈時間の流れ〉を、この十三音の中によみこめているところが美しいと思う。縦書きならではの、「く」を長くしたような繰り返し記号も、そんな時間の持続や経過を視覚的に訴えてかけてくる。(もっと言うと、「く」というより「ぐ」なのが、夢の「ぶつぎれ感」まで補強してくれているような気もする。けど、流石にそれは評者のこじつけですかね。)
物騒な世の中ではあるが、やはりお母さん(や、お父さん)ばかりに子育ての負担がいってしまうのは大変だ。たまにはぐっすり眠れるように、周囲や共同体全体で支えていかなくてはならない。……って、なんか、作品評っぽくないけれど(笑)。おわり。
竹林奈良武の句は、以前も一句評したことがあるので、よければそちらもご笑覧ください。↓