見出し画像

アゝといふ詩人の口へ星隕ちて / 竹林奈良武 【著作権のおわった柳人の句をよもう!】

アゝといふ詩人の口へ星隕ちて

竹林奈良武(1880-1910)

これは、“詩人”の詠嘆に対する、皮肉まじりの応答なのだろうか。

そうだとしてもこの句には、ただ単に“詩人”を小馬鹿にしている…とか、茶化している…と評するだけでは言い尽くせないような、スケールの大きさがある。

なんてったってその“詩人の口”に、星がおちてきやがるのだ!!

むしろこれは、皮肉をこえた詩人の“アゝ”に対するリスペクトなのかもしれない。
川柳人として、詩人の詠嘆を上回るような言葉をぶつけるには、“星”をもって制圧するくらいの覚悟でないと…というような。

いや。まあ、それは流石にこじつけだとしても、とにかくこの“星”、巨大な隕石が、小さな詩人の口の中へと吸い込まれていってしまうような、ある種の超現実的な像を、5-7-5の十七音に凝縮させたのは見事である。

下五も、「星隕ちる」ではなく、“星隕ちて”とすることによって、この一句のストーリーにどこか続きがあるようにも思わせる。
“詩人の口”は必ずしも星に押しつぶされて終わるとは限らない。
隕ちてくる星の重みを、終わり一文字によってするりとかわす。
そんな川柳らしい軽みによって、さらなる予感を掻き立てられるところも素敵。

いいなと思ったら応援しよう!