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蝶ゆらぐボリユームのない美しさ / 大山竹ニ 【著作権のおわった柳人の句をよもう!】

蝶ゆらぐボリユームのない美しさ

大山竹ニ(1908-1962)

単に時代が違うだけなのだとは思うが、それでも「ボリューム」じゃなくて“ボリユーム”なのがちょっとおもしろい。

字体そのものにボリュームがあるじゃないか。
…と思いきや“ボリユームのない美しさ”なんかい。

いや、これにそんなツッコミを入れるのは大変理不尽なことだと、もちろん評者自身も分かっているのだが……。でもやっぱ、なんか面白いのよ、これ。

“蝶ゆらぐ”という、いかにも雅(みやび)な上五から、突然濁点から始まる外来語がデプっと出てくる…という構成自体も意外性があってよい。

だってこれ、

「蝶ゆらぐ細々とした美しさ」

とかだったら、もう台無しでしょ。毒にも薬にもならない。
ってことは、この“ボリユーム”がやっぱり効いてるのよ。

しかも結局、“ボリユームのない”っていう否定形。もうそれなら始めから言わなくてもいいじゃん!
…っていう、〈ツッコミ待ち〉があるような気がして。

読み手として、そこにまんまと釣られてツッコんでしまう(ツッコまざるを得なくなる)ような快感がある。

この句が持つ機知は、きっと、そんな〈ツッコミ待ちの機知〉なんだろう…と、そんなことを思った。

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