要するに大どんぐりに小どんぐり / 井上剣花坊 【著作権のおわった柳人の句をよもう!】
“要するに”と言ってるくせに、十音で済んでいるはずの諺「どんぐりの背(せい)くらべ」を、むしろ十七音に増やしてしまっているところがまず面白い。
“要するに”を抜いたって十二音だ。
ただ、「どんぐりの背くらべ」という諺は、じつは会話などの中で、それ単体でどーんと現れることはないような気がする。
「結局、あの二人ってどんぐりの背くらべだよね」とか「どうせあいつら、どんぐりの背くらべじゃん」…みたいな感じで言われることが多い印象。
対して、
“要するに大どんぐりに小どんぐり”
は、これをこのままの状態で相手にぶつける(!)ことが可能である。
まあ、「要するにどんぐりの背くらべ」も、言えないことはないが、弱い。それにやっぱりこの場合も、語尾に「じゃん。」とか「だよ」とか「ってことでしょ?」みたいな、断定の助動詞や終助詞が必要になる気がする。(一応、モノローグなら無くても自然だけど)
それにくらべてこの
“要するに大どんぐりに小どんぐり”
のなんと堂々たること!!
現実生活で、仁王立ちしながらこのまま言い捨ててやりたい句、まちがいなく上位入選。
とりあえず相手の言い分(陰口にしろ言い訳にしろ)を聞いた上で、こちらのターンが回ってきた瞬間に、この十七音を言ってしまいたい!
もちろんそんなことをしたら、次に陰口の標的になるのは間違いなく自分であろうが、こんなに気持ちのいい5-7-5を堂々と言い切っていいなら、陰口くらいその後でなんぼでも言わせとけばいい
…なんて、思えないところが小心者の自分なのだが、、、