{小説案}「忘霊駅の傍観者(仮題)」
不思議な力を持った、不思議な主人公が、廃駅を巡る話
あらすじ
物語の主役はあくまで廃駅の方
・主人公は忘れられてしまった廃駅に行ける謎の力を持った男
・主人公のことは多くは語られず、あくまで主人公は傍観者
・主人公が訪れた駅、廃駅を舞台におくる人間ドラマの話
・1つ1つ、一話一話で完結するような短編集
・1つのエピソードで1つの駅の話
エピソード例1
夜、人々が帰宅の途についているころ。
主人公はこの電車に乗る。電車はまた走り出す。
そうして主人公が乗ってからも、駅に着いてはドアを開け、人を降ろし、また走り出しては駅に着いてを繰り返す。
そして人がほとんどいなくなった頃。辺りは暗い中、静かに灯りの点いた駅に着く。
「終点、○○駅。終点・・・」
車内アナウンスが聞こえる。残った人達が降りていく。
主人公もまた降りていく。
すると外で、車掌に話しかけている初老の男性。
「ここが終点か?まだ、この先にまだ、駅があったはずなのだが」
「?いえ、この路線はここまでですよ」
「いや、確かにまだ駅があったはずだ」
繰り返される問答、困ったような顔の車掌。
そこに、ふと主人公が話しかける。
「もし?よろしいですか」
「な、なんだい急に」
話しかけられて驚く初老の男。
「この先の駅を、ご存知なのですか?」
「あ、あぁ。確かにこの先にも駅があったはずなんだが」
「そうですか。少し、付いてきてくださいませんか?」
主人公はそう言うと初老の男性の手を優しくとる。
その手に引かれて初老の男性は主人公と共に歩き出す。
「確かに、この先にはまだ駅があります」
「そうだろう。あの車掌は無いとばかり言って」
「えぇ。駅はありますが、もう電車は通っておりませんからね」
ホームの先まで歩いてきた二人。
ふと立ち止まり、初老の男性の方を振り返る主人公。
「行きますか?その駅へ」
「行けるのかい?」
「えぇ。あなたが望むなら」
「・・・。私は、あの駅へ行きたい」
「そうですか。それなら行きましょうか」
主人公はホームから線路へ階段を降りる。
そして二人はゆっくりと線路の上を先へと進む。
最初は真っ暗。街灯も無く、月明かりだけの下を歩いていく二人。
しかし次第に、遠くに小さな灯りが見える。
それは近づくにつれて、駅舎だと分かる。
「なんだ、まだやっているじゃないか」
灯りを見た初老の男性は嬉しそうにそう呟く。
そして駅舎の前まで来た時、主人公の脳裏にその駅が見てきたその場所の過去の記憶が蘇る。
* * *
この駅は活気のある駅だった。
近くで大きな開拓工事があり、それに伴って人が集まってきていたのだ。
その日も工事現場では、わいわいと作業者たちが昼の休憩を楽しんでいた。
他愛のない話をしていた。
そんな時、一人の作業員が咳き込みだした。
大丈夫か、と周りに人が集まってきた中、その人は咳き込み、血を吐いて倒れた。
辺りは騒然となった。
「誰か救急車を!」そんな声が聞こえる。
しかし今度は別の人が一人、また一人と咳き込み始め、皆、血を吐いて倒れた。
残る皆はパニック状態になり、皆その場から逃げ始めた。
しかしそんな人達も皆、結局は同じように血を吐いて倒れた。
結局その現場で助かったのは、まだ休憩に入っていなかった現場監督の男だけだった。
工事現場の作業員を狙った毒殺事件だった。
この事件がきっかけで、街の開拓は滞り、人は離れ始め、結局駅も廃れていった。
そうしてこの駅は使われなくなり、廃駅となったのだ。