ライオンズのドラフトをレビューしてみる

 ライオンズのドラフト会議についての感想を書きます。一位隅田(西日本工業大)、二位佐藤(筑波大)と大学トップクラスのサウスポーを取れただけでも、大勝利ドラフトなのですが、「面白いな」と思ったのは、三位古賀(中央大)の指名でした。

 古賀は大学トップクラスの捕手と聞きます。ツイッターでは、「FA流出を予想される森の備え」という意見も見ましたが、考えていただきたい。もし森が残留して、ライオンズと長期契約を結んだら古賀はどうなるのでしょうか?古賀の指名はそんなに軽いものではないと思うのです。

 むしろ、森に対して「もし残留したら10年は安泰だと思っているだろうが、それは甘い。ボサッとしていたら古賀を使う」というメッセージでしょう。森がライオンズに入団したとき、正捕手だった炭谷は今の森と同じ26歳でした。森もプレッシャーを与えられる歳になったかと思うと、感慨深いですね。

 今は正捕手を固定する時代ではないので、森が休む日に古賀を使うという使い分けもできますし、古賀の打力がよく、たまにしか使わないのはもったいないと判断されたなら、いっそのことコンバートもあるでしょう。古賀は森へのかませ犬として指名したわけではなく、古賀の活かし方まで踏まえた指名だと思うんですよね。

 同時に、古賀が入ることで控え捕手を務める岡田、柘植へプレッシャーを与えるという意味もあります。強いチームを作るには、チーム内の競争を激化しないといけないことをわかっているのは、さすが黄金時代を経験した渡辺GMといったところです。

 伊東勤が1984年に113試合出場した22歳の頃、ライオンズのドライチは大久保でした。このときも、「伊東に恐怖心を与えることで、伊東をレベルアップさせたい。もちろん大久保をかませ犬にするつもりはない、伊東を越えたら正捕手にすればいいし、越えられなかったらコンバートすればいい」という考えが根本にはあったと察せられます。渡辺GMも当然このことは知っているので、同じことをやったと思うのです。

 当時の伊東には恐怖心は感じたはずです。伊東の凄いところは、大久保から和田に到るまであらゆる選手を控え、コンバート、移籍に追いやって、正捕手の座を明け渡すことはなかったところだと思うのです。伊東も「これだけのライバルを倒してきたから、球史に残るレジェンドになれた」と思っているはずでしょう。

 森は古賀を退けることで、球史に残るレジェンドになって欲しいのです。矛盾していますが、古賀が正捕手を掴んで、森がコンバートされるところも見てみたいという気持ちもあります。来季は、両選手とも頑張って欲しいですね。

追記

 伊東は若手に教えたという話は聞いたことがありません。中島聡に教えたという話は聞いたことがありますが、それは98年日本シリーズに勝つためだったし。おそらく伊東は若手に聞かれても、「それはバッテリーコーチに聞いて」とかわしていたと思われます。こういう、「教えることで若手のレベルを上げて、自分のクビを締めることはしない。見て盗め」という話はプロの厳しさを感じさせるので、好きです。

 炭谷が森に教えていたという話を聞いて、「彼は伊東勤の域には達さないだろうな」と残念に思いましたね。もし炭谷が森の質問をかわしていたら、ライオンズで正捕手を務めて、森はコンバートされていたかもしれないですね。


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