技術もマネジメントも「伝える」「伝わる」エンジニア
組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。ベテランエンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今の若手エンジニアへのメッセージをお届けします。
東京本社での組み込み開発部署を任されている部長、長島のインタビューをお届けします。
長島建治
USE歴24年
エンジニア歴24年
経験ゼロ・文系出身でエンジニアリング会社へ就職
―長島さん、本日はよろしくお願いいたします。
「よろしくお願いいたします。インタビューされることなんてないので、照れますね……。」
―そうですよね、皆さんそうおっしゃいます。まず、USE歴とエンジニア歴を教えていただけますか?
「USE歴、エンジニア歴共に24年ですね。中途でエンジニア初心者でUSEに入社しました。」
―初心者入社だったのですね。てっきり理系大学の出身なのだと思っていました。
「いえいえ、もともと文系出身で全くの初心者です。大学卒業後、半年ほど海外に語学留学をしていました。帰国して就職する際に『営業気質ではないし、何かに打ち込めるような職人っぽい仕事をしたい』と思っていたところ、USE Inc.に縁があって入社することになりました。」
―そうだったのですね。長島さんは今国内オーディオメーカーの開発を担当されていますよね、これまでにどんな開発を行ってきましたか?
「今関わっている国内オーディオメーカーは、入社当初から開発に携わっていました。車載オーディオやラジオ、別メーカーですが地上波/衛星対応デジタルTV、一時的に開発する製品の仕様書作成をしていたこともあります。ここ5~6年はまた国内オーディオメーカーのBluetoothスピーカー、BLEでスマホアプリと連携するイヤホンなどのオーディオ関係の開発をしています。」
―ゼロからエンジニアになって、いろいろご苦労もあったと思うのですが……。
「そうですね、USE Inc.は、様々なメーカー製品を請け負いで開発するバリバリのエンジニアリング会社ですからね(※1)。先輩エンジニアの背中を見ながら仕事を覚えていき、ソフトで書いたとおりに動くおもしろさは割とすぐに感じていて、『開発に打ち込む』のは向いているなと感じていました。
それでも続けていく中では壁はいくつもありましたね。市場に出てから不具合が出てしまったとか、取引先からクレームが来るとか、忙しすぎるとか……。エンジニアを辞めようかなと思ったことだって何度もあります。
技術に関しても、常に新しい技術が出てきますし、新しい開発になるとわからないこともたくさんあります。同期や年齢の近いメンバーが今もたくさんいるので、人に聞いたり、助けてもらいながら開発することも多かったです。最終的には自分で選んだ道ですし、気が付けば24年続いていますね。」
※1 現在は請負開発に加えて、OEMやデバイス・モジュール販売も行っている。
口下手なエンジニアが意識する「伝わる作法」
―長島さんは部長職にもなり、社員の前で発表する機会も多くなりましたよね。方針説明会などを見ていると、長島さんの発表は所属部署に関わらず皆よく聞いている印象があります。
「そうですか? 自分としては、口下手だし、人前で話すのは苦手に感じているんです。それでも、年を重ねるごとに社内で話す機会も増えますし、取引先に対しても見積りや設計、不具合説明など、人に話したり説明する機会が多くなってきているのは事実ですね。」
―そういう場面で、なにか心がけていることはありますか?
「そうですね……、強いて言えば2つあります。
『ストーリーを作って話す』という事と、『伝わる資料を作る』事ですね。資料の作り方に関しては若手にも、資料の目的をはっきりさせる事と、図を使ってわかりやすくする事を意識するよう指導しています。この2点があると、多少口下手でも意図したことを伝えることができるんですよね。
取引先への説明は、エンジニアではない(技術に関する知識が少ない)方に説明することもありますし、よりわかりやすい資料を作ろうと気を遣っています。どう話すかも大事ですが、どう伝わっているかが重要だと思いますし。」
―確かに「伝える」と「伝わる」はイコールではないですものね。
「ソフトを書く時にも『伝わる』っていうのは大事にしてほしい要素です。
不具合なく動くことをゴールにしてただ書いてしまうのはダメで、後から他の人が見ても理解しやすいようにコメントを入れておくとか、保守性を考えて役割分割しておくとかが大事です。私自身もUSE Inc.の社長(現会長)はじめ先輩エンジニアから学んだことですが、『キレイなソフト』と言われるものは、『伝わる』を意識して作られていると思っています。」
管理職として、エンジニアとして今後やりたいこと
―なるほど。今までいろいろなエンジニアさんのお話を聞いていて、『キレイなソフト』という言葉は幾度となく出てきたのですが、「キレイなソフト=伝わるソフト」と考えるととてもわかりやすいですね。
管理職として、エンジニアとして今後やっていきたいことはありますか?
「そうですね……、管理職よりもエンジニアでいたいという気持ちは正直ありますが、新入社員も入ってきましたし、部署の若手には自分の知っていることはどんどん伝えていきたいと思っています。ソフトの書き方や資料の作り方、仕事への責任感など仕事に直結するものだけでなく、開発の面白さや品質を追求する姿勢も伝えていきたいですね。やっぱり開発は楽しいですし、自分が作った製品が市場に出回るのって誇らしいですからね。
あとは、部下への伝え方ももっとブラッシュアップしていきたいと思っています。部下がだいぶ育ってきていて、今年からは自分自身がソフトを書くことはほとんどなくなりました。仕事の指示をして出来上がったものを確認する中で、自分では伝えたつもりの内容が、あまり伝わっていなかったなと反省することも多いんです。部下もそれぞれ良く頑張っているなと感じるので、自分としても少しずつ変わっていきたいですね。
エンジニアとしては、まだ世にない面白いものを開発したいです。『役に立つ』よりも『楽しむこと』をメインで考えられた製品を作るのはやっぱり楽しいです。」
―今までにもそういう開発があったのですか?
「今も南米で売られているパーティー仕様のアンプ内蔵大型スピーカーですね。1年くらいかけて開発したのですが、パーティー仕様なので(理論上は)100台数珠繋ぎにネットワーク接続して連動させることができたり、音に同期して光るとか、アプリからの操作で合いの手のような音声を再生することができるとか面白い機能がたくさんついていました。最初は手探りで開発をしていましたが、それが意図したように動くのは嬉しいものです。
年齢や社歴で管理職になりましたが、やっぱり根はエンジニアなので、開発に誇りを持ちつつ、楽しんで開発をする姿勢はずっと持っていたいですね。」
―長島さん、お忙しい中ありがとうございました。
編集後記
管理職として様々なタイプがいる中で、長島さんは『人』を良く見ているタイプに見えていました。インタビューの中で「話すのが苦手」と言っていたのは驚きましたが、お話を聞いているうちに『苦手だと思っているから、振り返るし、反省もするし、伝わることを意識している』という姿勢をお持ちという事が見えてきました。他部署メンバーが技術について質問に来る、発表の場でみんながよく話を聞いているという若手から慕われている背景はこういった姿勢なのかもしれません。
USE Inc. お問合せ先
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\未経験からエンジニアを目指したい人 チャンスあります/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/
インタビュー実施:2024年1月
Interview & Text 渡部美里
vol.1 歴37年のエンジニアが若手に求める3つのスキル
vol.2 子どもの頃からの夢を叶えた生粋のエンジニアが薦める”興味を広げる”勉強法
vol.3 日本のモノづくりを支えてきたエンジニアが語る35年のエンジニア人生
vol.4 技術が代名詞になるほど専門性の高いエンジニアになる方法とは?
Vol.5 エンジニアとしての『プロフェッショナル』を極める
vol.6 エンジニアとして覚悟を決めた時