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日本とドイツの公認会計士(監査人)は何してる?
現在私は公認会計士として監査業務を行っています。みなさんは”会計士”、”監査人”、”監査業務”についてご存知でしょうか。一般的にはあまり馴染みがないかもしれません。実際、数多くの方々から「会計士さんって何をお会計するんですか?」と真面目に聞かれることが多くあります。今回はこれらの業務内容についてできるだけ分かりやすく説明し、会計士の一日、さらに監査法人の職階とそれぞれの年収についても触れていきたいと思います。ちなみに会計監査業務においてドイツでも日本でも業務内容は大きく変わっていません!
会計士、監査人、監査業務とは
まず、公認会計士に対してどんなイメージをお持ちでしょうか?「会計士」という名前から、数字に強いイメージを持つ方が多いかもしれません。公認会計士法には以下のように規定されています。
公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。
簡単に言うと、公認会計士は企業の財務情報の信頼性を確保することで、投資家や債権者を保護し、国民経済の健全な発展に寄与する役割を担っています。
監査法人(公認会計士)は、上場企業などの監査クライアントに対して監査業務を提供しています。上場企業は株式市場で資金調達を行うために、定期的に決算書などを開示する必要があります。しかし、企業が自分たちで作った決算書が正しいと主張しても、信頼性に欠けることがあります。
そこで、監査法人の出番です。監査法人は独立した立場で企業の決算書をチェックし、その信頼性を確保します。この会社が作成した財務諸表(決算書のようなもの)には問題がありません!と意見表明をするのです。(正確には問題ありの場合の意見、意見不表明の場合もあります。)このチェックする作業を「監査業務」と呼びます。監査法人がチェックした決算書であれば、投資家は安心して投資判断を行うことができます。
例として、トヨタ自動車は自ら一年間の業務成績を反映した財務諸表を作成します。売上、費用、利益、資産、負債などの情報です。その会社が作成した財務諸表を我々監査人がチェックし、意見を表明する形となります。あくまで作成義務は会社にあるので、我々は会社の数値を作成することはありません。
「意見の表明」公認会計士の独占業務
企業か開示している財務諸表の最後のページに監査法人が意見表明をしているセクションです。我々の業務の最終成果物です。上場企業の財務諸表には常に監査法人の意見がセットで付いていますので、みなさん是非参考に見てみてください!
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公認会計士のやりがい
公認会計士は責任の重い仕事であるため、常に冷静に厳しく財務監査をしなければなりません。以下の4点が公認会計士のやりがいとなるポイントだと思います。
専門知識の活用:企業の経営状態や経営の舞台裏を数字として正確に知ることができる。
難関資格:医師・弁護士と並ぶ難関資格であり、取得すれば仕事に困ることがないこと。
高収入:社会的に必要性が高い仕事であり、高収入も期待できること。
若い内からの活躍:経営の中枢部分に関わるため、若い内から社会の最前線で活躍すること(結構重要!)
また、公認会計士は監査業務以外にも、税務業務や会計知識を生かしたコンサルティング業務、組織内会計士など、幅広いキャリアを選択できる魅力的な資格・職業だと思っています。
監査法人に勤める公認会計士の1日
9:30:クライアント先訪問
10:00:クライアント先の経理担当と打ち合わせ
10:30:書類チェック・書類作成
12:00:昼休憩
13:00:追加書類の依頼/チェック等
15:00:監査チームで打ち合わせ
16:00:クライアント先の経理と打ち合わせ/フィードバック
17:30:監査法人に報告
18:00:帰社・帰宅(繁忙期の場合は終電近くまで事務所に残り働く場合もある)
監査法人における職階・年収(日本)
監査法人にも一般企業と同様に職階があり、社歴と対応する職位、年収は以下のとおりです。
1~3年目:スタッフ、500~800万円
4~7年目:シニア、800~1,100万円
8~12年目:マネジャー、1,100~1,200万円
13~15年目:シニアマネジャー、1,300~1,400万円
アソシエイトパートナー、1,500万円~
パートナー、2,000万円~
特にマネジャー昇格あたりから個人差が生じるため、あくまで参考情報としてご覧ください。また、年収は残業代の多寡によって大きく左右されるため、こちらも参考情報としてご理解ください。
ドイツの監査法人に監査法人における職階・年収は以下の記事をご参照ください。
公認会計士と税理士の違い
公認会計士と税理士は、認められている独占業務が異なります。公認会計士は「監査」、税理士は「税務」が独占業務です。税理士資格だけでは公認会計士の業務は行えませんが、逆は可能です。基本的には、税理士試験よりも公認会計士試験の方が難しいとされています。
面白いエピソード
公認会計士として働いていると、時にはユニークなエピソードもあります。例えば、あるクライアント先でのこと。経理担当者が「この数字、どうしても合わないんです」と困り果てていたので、一緒に調べてみると、実はその原因が数年前の小さなミスに遡ることが判明しました。そのミスを修正することで、全ての数字がピタリと合い、担当者と一緒に大喜びしたことがあります。こうした瞬間は、まさに公認会計士としてのやりがいを感じるひとときです。
今回の記事は以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
参考
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