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2025年、インターネットビジネスに起きている3つの「地殻変動」について
2025年はどんな年になるでしょうか?
世界に目を向けると、アメリカではトランプ氏が大統領に再就任し、依然としてウクライナやイスラエルなどの懸念も続いています。あらゆる意味でのカントリーリスクも含め、世の中のボラティリティは高まってきています。
一方で経済的にはインフレにもなり、昨年のトレンドを引き続き維持しながら少し伸びていく傾向にあると考えています。
そんな中、我々のインターネットビジネスの世界では「3つの地殻変動」が起きつつあると考えています。
ひとつめはインターネットで完結するビジネスの「ホワイトスペース」がなくなってきていること。
ふたつめは産業と産業の壁が曖昧になってきていること。
3つめはクライアントから求められる価値の変化です。
すでに自明のことかもしれませんが、2025年のビジネスを占う上でも、この3つの地殻変動について改めてまとめておきたいと思います。
「ホワイトスペース」がなくなってきた
当初、インターネットは巨大なフロンティアでした。
ルールも何もないなかでチャンスだけがある。そんな状況でまずは「BtoC」の領域中心にさまざまなサービスが勃興し、拡大していきました。
生活者のライフスタイルが変わり、世の中が効率的で便利になっていくにつれて、インターネットのBtoCのサービスには「ホワイトスペース」がなくなっていきました。
それに遅れて「BtoB」の世界にもインターネットは徐々に浸透していき、企業向けの「SaaS」へ主戦場が移っていきました。
C向けに始まったインターネット市場がB向けにも浸透していき、結果として「インターネットの中で完結するサービス」のホワイトスペースがなくなっていった。これが大きな流れだと考えています。
インターネットとリアルな世界をつなげる
一方で、1990年代から「インターネットとリアルな世界をつなげよう」という動きがありました。その時代時代において「クリックアンドモルタル」「オムニチャネル」「OMO(Online Merges with Offline)」といったバズワードが生まれては消えていきました。
ただこうした動きはスマホの普及とともに当たり前のものとなり、今はあらためて「インターネットとリアルの世界をどうつなげて価値を出していくか?」が問われている時代になっています。
タクシーアプリのGOだったり、タイミーだったり、Uberのようなサービス、昨今の「DXコンサルティング」のようなB向けソリューションなどを見てもわかるように、ネットだけで完結せず「リアルの世界とデジタルをつなげてどう価値を生み出していくか?」「そこでどう競争力を高めていくか?」に価値の源泉が移ってきています。
産業と産業の壁が曖昧になってきた
その延長線上にある2つめの地殻変動は「あらゆる産業と産業の間の壁が曖昧になってきた」ということです。
従来、産業と産業の間には明確な「壁」がありました。規制緩和などがない限り、こうした壁が崩れることはありませんでした。
しかしインターネットという新たな技術革新は、生活者のライフスタイルを大きく変え、企業の成長戦略にも大きな影響を与えていきました。
その結果、従来交わることのなかった市場と市場が重なったり、融合していく現象がそこかしこで見られるようになってきたのです。
自動車業界ではトヨタのような従来の自動車メーカーがひしめく中でテスラのようなEVメーカーが台頭し始めていますし、タクシー業界にもUberのような配車サービスだけではなく、Waymo(Google)のような自動運転サービス事業者が入ってきています。
我々に近い業界だと、テレビ局や新聞社のようなマスメディアに対してGoogleやMetaのようなプラットフォーマー、最近ではAmazonやNetflixのようなプレイヤーも「メディア」としてのポジションを強めてきています。広告代理店とコンサルティング会社が競合するようなことも起き始めている。
ある意味、これまで「別々の山」だと思っていたものが「実はひとつの大きな山だった」ということが起きてきているのだと言えます。
クライアントから求められる価値の変化
そして、3つめの地殻変動がBtoBの領域における「クライアントから求められる価値の変化」です。
我々の現状の主力事業はデジタルマーケティングですが、メインで見ている広告市場においては、すでに2021年度においてテレビ・新聞・雑誌・ラジオの旧来の「4マス」よりも「インターネット広告」の比率のほうが大きくなっています。
そういった中で、メディアをバラバラに考えるのではなく、つまり旧来の4マスとインターネットもすべて含めて「統合的に」戦略を策定することが求められるようになってきています。
世の中が変わっていく中で、クライアントが求めるものも当然変化していきます。そういう中で、これまでと同じサービスを提供しているだけでは存在価値を発揮できない。
新たなトレンドのなかで「我々はどういう付加価値を提供できるのか?」といったプロダクトアウト的な視点ではなく「どのような課題を解決できるのか?」というマーケットイン的な視点に発想を変えなければいけないと考えています。
デジタルマーケティングの世界で何が起きているか?
具体的に求められる価値がどのように変わってきているのか?
デジタルマーケティングの領域の話にはなりますが、少しその背景をお伝えしたいと思います。
これまでクライアントは代理店にすべてお任せしていればうまくいっていました。一定の予算を渡して「この中からテレビにいくら、雑誌にいくら」という具合に代理店が提案し、差配をしていました。
しかし、デジタル広告が増えてきたこと、またSNSの発展に伴って個人がメディア化していくなかで、クライアント側に「ここまでは社内でやろう」と「インハウス化」の流れが生まれてきました。
「代理店を通さなくても、自分たちでGoogleやInstagramに広告出せばいいじゃん」「SNSは若手が詳しいし、内部でやろうか」と考えるのは当然でしょう。「なんで代理店にお願いしなきゃいけないの?」と。
お金をかけるべきは、広告か、顧客情報の管理か
また、クライアントがお金をかける領域も変わってきています。
デジタルの比率がどんどん大きくなってくると、あらゆるものがトラッキングしやすくなります。分析しやすくなる。すると、広告の話にとどまらず「これまで以上に顧客情報をきちんと管理しよう」という動きになっていきます。
「この商品を誰が使っているのか?」「自分たちのお客さんって、どんな人なのだろう?」 ここを把握することの価値は大きいのです。
そうなるとクライアントのなかで「広告にお金を使うのか、お客さんの情報を管理するためのシステムを作ることのどちらに予算を使いますか?」という問いが生まれるわけです。「広告宣伝費に年間5億使うよりも、広告宣伝費を4億にして、CRMやCDP等の顧客情報システムを作るのに1億使った方がよくない?」という議論になっていく。
結果として、従来は広告会社が担当していた領域にもアクセンチュアなどのコンサルティング会社が入ってきており、今まさに広告会社とコンサルティング会社がバッティングし始めているのです。
マーケットイン発想の徹底
以上、私が考える「3つの地殻変動」をざっと見てきました。
こういった変化がある中で、我々CARTA HOLDINGSとしても「どういった課題を解決できるか?」というマーケットイン視点を徹底していきたいと考えています。
広告会社に対して、クライアントに対して、パブリッシャーに対して、そして、世の中の課題に対して、徹底して向き合っていく。
これは単に「意識を変える」という話ではありません。意識を変えても、日々の動きが変わらなければ意味がありません。
そのために「CCI」と「CARTA MARKETING FIRM」と「Barriz」の3社の統合を発表しました。これによりグループ会社内で重複する機能を統合し、効率化と生産性の向上を図るとともに、クライアントサービスの拡充と質の向上を図っていきます。
また、これは単に会社を統合するというだけではなく、中長期的には3社のシステムを「マーケットイン」に基づくシステムに組み直していくことを意図しています。予算の作り方やKPIの設定の仕方を含め、マーケットイン発想で設計し直す。あらゆるオペレーションを組み直す。ここには時間がかかるかもしれませんが、非常に重要な動きだと考えています。
AIについても非常に大きな転換点になると思っています。
AIによって業務効率を上げるだけではなくAIを活用してクライアントの課題やニーズにどう応えていくのか? AIをマーケットインのビジネスにどう活用していくのか? ここにいち早く取り組んで、実現していきます。
次のトレンドを見極めつつ、いかに早く、適切に投資するか? つねにアンテナを張りながら、取り組んでいきます。
世の中を「進化」させていく存在に
我々は経営統合して今年で7年目に入ります。
当初の想定よりは順調に進んではいますが、それでも「まだここまでしかやりきれていない」と不甲斐なさを感じたり「もっとやらなきゃ」という思いがあります。
私の原点の想いは「世界を変えるようなスゴいことをやりたい」ということです。そのために最初は「メディア」から始まり、紆余曲折を経て「アドテク」にたどり着き、「デジタルマーケティング」へと発展してきました。
CARTA HOLDINGSは、自らを「進化推進業」であると定義しています。
激変する世の中においてきちんと「適応」するだけではなく「進化」していきたい。「進化」することによって、クライアントや消費者の課題・ニーズにきちんと応えていく。
我々自身が進化することで、社会の進化を推し進めるような存在になりたいと思っています。