ワーママ 『華金』に消えるOL
週末にオシャレをしている女子が嫌いだ。
『これからどこにいくの?私も連れて行ってよ。』
言えもしない言葉が浮かぶ。
昨日の対象は社長だった。
花柄の派手なワンピースをヒラヒラと揺らし、慣れないピンヒールを平坦な床に突き刺していた。
「じゃ、先に出るから」
お高くとまった雰囲気が、やけに鼻についた。
私は社長の右腕だと自負している。
そんな社長は片付けが苦手で、大事な書類を平気で失くしてしまうよう。いい加減さが目に余る性格だ。
(どうにかなっても知らないからね)
私に出来るカバーはしてきた。
私に出来ないことは出来ない。
そしてとうとう事件が起きて、監査が会社に乗り込んできた。数日、社長の姿が見えなくなった。
「急にコロナが出たから、保健所の人が来た」
5類なのに??
経営陣の下手な嘘には呆れてしまった。
「この前、何があったんですか?」
いつも一緒に昼食を食べている。
笑い話に誤魔化して、さらっと聞いてしまおうと思った。
「やだなぁ。私たちの仲じゃないですか」
言えなかった。
【あなたには関係ないですよね?】
社長の冷たい言葉が想像できた。
彼女にはある。そういう所が。
それに傷つけられてしまうのは、絶対に嫌だと思った。
『今日はどこかにお出掛けですか?』
聞かない。聞きたくもない。
「お疲れ様です。」
私は社長に期待しない。
闇落ちか?いや、諦めだ。
会社のコマとしてあと数ヶ月、最低限の仕事をしていこうと思った。
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